数年ぶりの帰宅
トリネコさんとの話は夜遅くまで続いた。
「シオン、もう遅いしそろそろ出ないか?」
ジークの言葉にハッとなって時計を見ると確かにもう遅い時間だった。
「ごめんね。夢中になって時間を忘れちゃったよ。でも、どうしようかな。この時間にスカーレット家に行っても、入れてくれないよ」
う~んと考えているシオンにトリネコが言った。
「それならここに泊まっていってください。幸い部屋も空いておりますし、温かい食事も用意致します!」
「本当!助かるよ♪」
「これくらいは何でもありません。すぐに食事の用意をさせますので、少しお待ち下さい」
すぐに使用人を呼ぶと、食事の用意を命じた。
ちょっとお手洗いに行ってきますとシオンがちょうど出ていったのを見計らって、トリネコは仲間達に頭を下げた。
「シオンお嬢様をお守りして頂き、本当にありがとうございました。昔よりも感情も豊かになったように思えます」
「いや、俺たちの方がシオンにお世話になっているよ」
「うんうん、シオンお姉様に色々助けてもらいました」
「シオンちゃんには返せない程の恩があるしね」
「生まれ故郷を救ってもらった恩は必ず返すつもりだ」
仲間達がそれぞれの想いを語りトリネコは満足そうに頷いた。
「この国にいる間はシオンお嬢様を理解される人が少なく孤独でした。利益になる発明品には興味を持っても、シオンお嬢様本人に興味を持つ人が少なく幼少の頃は寂しい思いをされておりました」
「シオンお姉様の家族は?」
「令嬢にあるまじき剣術の修行や魔法の研究に没頭するシオンお嬢様を、腫れ物扱いしておりました。ただ発明品で莫大な利益を生み出しているので追い出すわけもいかず、生活に必要な世話は執事やメイドに丸投げしていたと聞いています」
「何だよ!それは!?」
「それがこの国の貴族なのです。シオンお嬢様の家族といえば、お世話をしてくれた執事やメイドといった使用人達になります。ですから、成長したお嬢様を見て嬉しく思いました。あんなに楽しそうなお顔のシオンお嬢様は見たことがありません。皆様には本当に感謝しています。これからもシオンお嬢様をよろしくお願い致します!」
トリネコは深く頭を下げるのだった。
そしてシオンがやってくると食堂へ場所を移動した。
賑やかな食事時間を過ごして、次の日の早朝に商会を後にしてシオンの生まれた実家、スカーレット公爵家に向かった。
王国でも指折りの名家であり、シオンの資産が流れているため、昔より立派になっていた。
「止まれ!ここはスカーレット公爵家である!約束のない者は通す訳にはいかない!」
はい、門番さんに止められました。
「えっと、約束はないけど、自分の家に戻ってきたんですが・・・」
「ふざけるな!スカーレット公爵家のお子様は2人だけだ!お前など知らん!」
体格の大きい門番は声も大きかった。ただその声を聞いて、中から使用人が様子を見にやってきた。
!?
「ま、まさか!シオンお嬢様ですか!?何をしているのです!早く門を開けなさい!!!!」
ギョッとした顔で屋敷の方を見る門番に使用人は声を大きくして怒鳴った。
「えっ???スカーレット公爵家の子供を名乗る怪しいヤツですよ?」
「ふざけるな!門番に採用するとき伝えたはずだ!スカーレット公爵家には旅に出ている長女シオン様がいらっしゃると!早く開けないとクビにするぞ!」
「は、はい!すぐに!!!」
門番は使用人の気迫に押されて慌てて門を開いた。
「シオンお嬢様!お帰りをお持ちしておりました!」
入口の騒ぎを聞いて他の使用人である執事やメイドが集まってきた。
「みんな~!シオンお嬢様がお戻りになられたぞ~ーー!!!!!」
!?
「「「なんだって!!!!!!」」」
ドドドドドッッッと、屋敷にいた全ての使用人が両サイドに並んで頭を下げた。
「「「お帰りなさいませ!シオンお嬢様!!!!!!」」」
ぴぇっ!?
余りの大きな声にシオンは一歩、後ろに下がってしまった。
「あははは・・・シオンは使用人に人気があるんだな」
他の仲間達も余りの気迫に気圧されてしまった。
「あの~?どうしてそんなに嬉しそうなの?私、長い間を家を空けていたのに」
屋敷の使用人から執事長が前に出て教えてくれた。
「何を仰いますか!我々使用人のために、回復魔法を掛けてくれたり、手荒れを治す薬を作って頂いたり、洗濯のとき、水が冷たいからと温水を出す道具を作ってくれたりと、言い出せばキリがないほど、我々のために尽くしてくれた、心の優しいシオンお嬢様を迎えられて、嬉しくない者などいません!」
他の執事やメイドが一斉にうんうんと頷いた。
おおぅ!
あの時は、回復魔法の練習やアレルギーなどの確認のためにモニタリングしてもらっていただけなんだけどなぁ~
仲間達も心優しいシオンを見直して、羨望の眼差しを向けていたので、シオンはあはは・・・と苦笑いしかできないのでした。
まさかここまで感謝されていたなんて知らなかったよ。あの頃は毎日が楽しくて、自分の事に夢中だったからなぁ~
みんなごめんよ~~!!!!
そんな、優しい気持ちだけで商品をあげていた訳じゃないんだよ~~~(泣)
シオンは罪悪感に精神ダメージを9999受けた。
「それにあのバカ兄妹のやりたい放題で、何人もの新人のメイドや執事が辞めていきました。しかし、いつかシオンお嬢様が戻られると信じて、古参の我々は今日まで我慢してきました。本当にお戻りになられて嬉しく思います!」
うん?
確かに弟と妹がいたけどグレてんの?
「あ、そうだ。その私の『家族』は家にいる?」
シオンは少し遠い目をして現実逃避していると、執事さんが教えてくれた。
ただピキッと空気が凍りついたような雰囲気になりました。
「ご安心下さい。本日は学園での卒業パーティーがあり、皆様不在でございます」
「あれま。そんな時期だったんだねぇ~」
「ええ、そのため旦那様や奥様も王城の方に出かけられております」
ああ、それでガランとしていたのか。
「シオンお嬢様も飛び級されたとはいえ、同年代なのですから、パーティーに参加されてはいかがでしょうか?」
ええ!?面倒くさいからいいよと言ったが、仲間のヒジリが目を輝かせて行きましょう!と言った。
「久しぶりにシオンお姉様を着飾れますわ♪」
「あら~いいわね♪久しぶりに気合いを入れちゃうわよ♪」
ヒジリとルリがシオンを引っ張っていき、メイド達がキャピキャピしながらメイク道具を用意して、一緒にシオンを着せ替え人形にして盛り上がるのでした。
誰か!助けてーーーーー!!!!!!!




