結界発動!
魔物の大群が迫る中、シオンは必死に魔導砲に魔力を充電していた。
「はぁ~ストレスが溜まるよ~」
すでに魔力で空には結界の魔法陣を描き終わっていた。
まだかな?まだかな?
シオンのイライラがMAXまで溜まっているときだった。
魔物が城壁から見える位置まで迫ってきていた。
そして、それを敵側の2人も見ていた。
「チェリー、流石だな。俺の想像を超える大軍勢だよ」
「ベリーもバカな貴族達のおもり、お疲れ様でした」
「別に大したことはないぜ。いつの世も、権力が欲しい、永遠の命が欲しいってヤツは何処にでもいるからな」
魔物と同化すれば理論上は不死に近い寿命を得る。権力が欲しい奴には、この魔物の軍勢を与えて反乱を起こさせる。チェリーとベリーには国がどうなろうとどうでもいいことなのだ。欲望をもつ人間には嘘は言ってはいない。滅んだ国を欲しがる奴がいるのかや、姿が醜い魔物となって生き続けるなど、2人にはどうでもいいことなのだ。
「しかしクラーク公爵だっけ?あんな無能でも傘下の貴族が多くて驚いたな」
「無能ゆえに、取り入りやすいと思われたのでしょう。まぁ、今となってはどうでもいいですけどね」
すでにクラーク公爵は魔物と入れ替えている。
その傘下のどうでも良い貴族達も合わせてな。少し離れた場所で進軍を見守る2人もシオン達の不安要素に目を厳しくした。
「この魔物の大群はただの大群ではないから。私が改造して合成を重ねた魔物達だから通常の魔物より強くなっているからね。帝国の兵士達なんてあっさり蹂躙されるわ」
「それは楽しみだな」
さて、あの大悪魔を倒した英雄達はどう出てくるか。
城壁に魔物が到着したら街中で人間に化けた魔物達が正体を現して暴れる手筈になっている。
外と中からの二重攻撃にどう対処するつもりだ?
魔物達が帝都にあと、1キロぐらいの距離になろうとした時だった。
帝都の4つに配置された魔導砲のチャージが終わり、空に向けて放たれたのは。
「なんだ!?」
チェリーとベリーは目を開いてその状況を見守るしかできなかった。
そしてすぐに身体を焼くような不快感が襲ってきた。
「グッ、な、何よこれ!?」
「ま、まさか聖女の結界を『帝都の周辺』に張ったのか!?」
空を見上げて言葉に詰まった。
「ち、違う!まさか『帝国中』に結界を張ったとでも言うのか!?」
「そんなことができる訳ない。できたとしても一瞬で切れるわよ!」
チェリーの言うことは正しく、わずか数分で結界は消えたのだった。
「やっぱりね。びっくりしたけど、私達にはそんなにダメージはなかったわね。魔物達も死んだ者はいないわ」
「何が目的だったんだ?ただの足止めか?」
「さてね。あのシオンって少女は油断できない『敵』だったから、何か狙いがあるはず」
チェリーは少し考えてみたけれど、シオンの狙いがわからなかった。
「驚いたが、魔物どもがそろそろ城壁に取り付く頃だ。これからが見ものだな」
速度は落ちたが魔物達はしっかりと進んでおり、城壁にもう少しのところまで迫っていた。
力のある魔物なら城壁すら壊せる力があるとチェリーは薄く笑んだ。
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少し時間を遡る。
シオンがイライラしながら充電していると、ついに充電が溜まった。
ヒジリの充電は少し前に終わっており、ヒジリはシオンに合流していた。
「やった!ようやく溜まったよ!」
「シオンお姉様!もう魔物がすぐそこまで迫っています!」
シオンは「了解!」と言って、魔導砲を遠隔操作で打ち上げた。
すると空に描いていた巨大な魔法陣に魔力が充電され、ついに帝国中に魔物にダメージを与える結界が張られることになった。
「やりましたね!凄いデス!」
「やったねぇ~まさかここまでストレスが溜まるとは思っていなかったけど」
空に浮かんだ綺麗な光を放つ魔法陣を見ながらシオンは呟いた。
そして、それから忙しく動き回る人々がいた。
ボンバーギルド長は結界が展開されたことを支部に連絡し、ダメージを受けて正体を現した魔物の討伐を命じていた。手勢の冒険者パーティに命じて帝都の魔物を探させていた。
「まさか、本当に人間に化けている魔物がいたなんて」
簡易結界のない避難所を見張っていた冒険者パーティは即座に討伐を完了させた。
混乱する市民にも結界のことを話して、他に隠れている魔物はいないと強い口調で言い聞かせた。
『市民が混乱して人間同士で殺し合わせるのが敵の狙いと聞いた時は、胸糞の悪い話だと思ったが、実際に目の当たりにして、他人事じゃなかったと実感したぜ』
Bランクのベテラン冒険者達も額に嫌な汗をかいていた。
そして声を掛けられた。
「失礼する!ここは大丈夫か?」
「ああ、ここの化けていた魔物は討伐完了した!」
「了解!私は次の場所に向かう。市民がパニックにならないよう見張っていてくれ」
「ちょっと待ってくれ。あなたもギルド長に言われた冒険者なのか?」
「いや、私は皇帝陛下から直接、帝都の中を守って欲しいと言われたSランク冒険者のレオナだ。引き続き頼む!」
レオナは風魔法で消えるように立ち去った。
「は、早い・・・あれが最高ランクの冒険者なのか」
こうして冒険者達は協力して街中の魔物を発見次第、素早く狩っていった。




