侵攻!
冒険者ギルドに戻ったボンバーは各支部に連絡を入れていた。
「そっちは大丈夫か?最近、急に態度や雰囲気が変わったやつなどはいなかったか?」
「それはわかりません。この短時間で内部調査をしている時間などありませんよ!それにいまだに信じられません。魔物が人間に化けて生活しているなんて」
「オレもこの目で見るまでは信じられなかったよ」
ボンバーも城の入口に張られた結界に引っ掛かった魔物を見るまでは信じられなかった。
だが、見てしまった。
そして皇帝から敵の目的まで聞いて納得してしまった。
クソッタレが!
街中で人が魔物になる瞬間を見ればパニックになる。さらに疑心暗鬼にさせて同士討ちさせるのが敵の狙いだと!
そんなクズの狙い通りにさせてたまるか!
「とにかく、数時間後には帝国中に結界が張られて人間に化けた魔物を炙り出す。躊躇せずに殺せ!」
ゴクリッ
ボンバーの殺気が通信越しにも伝わってくるかの様だった。
「いいな?これは帝国の存亡がかかっていると思え!もっと危機感を感じろ!!!」
「は、はいっ!」
いまいち緊張感に欠けていた支部にハッパをかけてボンバーも帝都の冒険者ギルドに緊急クエストを発令した。
表向きは魔物の群れが迫ってきていることについて。そして──
「待っていたぞ」
目の前には帝都の冒険者ギルドのBランクパーティの4人がいた。
「ボンバーさん、帝都に魔物の群れが迫っていると聞きましたが、その件でしょうか?」
「ああ、そうだ。特殊な事情があってな。斥候が得意なお前達に来てもらった。まずはこの水晶に触れてみてくれ」
???
よくわからずに水晶に触った4人は特に異常は見られなかった。
「これは?」
「お前達が魔物じゃないか調べるためのものだ」
「「はっ???」」
冒険者達はハモった。
「この帝都・・いや、この帝国を滅ぼそうとしている『敵』が魔物を人間に化けさせて街中に放っているんだ」
!?
「ギルド長!それは本当なんですか!?」
「声が大きい!声を落とせ。だからAランクパーティじゃなく、動きやすいお前達を呼んだんだ」
このBランクパーティは斥候が2人と後方支援2人の軽装のチームパーティーなのだ。機動力に特化して、斥候が敵を発見し弓矢など遠距離で敵を仕留める戦法を得意としている。
「これは極秘事項だ。他言無用で頼む」
ゴクリッと喉を鳴らす。
「詳しい説明はできないが、魔物が到着する頃に帝国中に数分間結界が張られる。人間に化けた魔物が正体を現したら、すぐに殺って欲しい」
!?
「帝都中に結界ですか!?そんなことができるんですか?」
「ああ、数分のみだが可能らしい。お前達なら敵を見つけ次第、どんどん狩れるだろう。街中に入りこんだ魔物を倒して欲しい」
「帝国に向かって来ている魔物の大群は大丈夫なんですか?」
「そっちは総力戦だな。せめてもの救いは、先日、大悪魔を倒した英雄がいることだがな」
「あの大悪魔ヴァプラを倒した英雄が来ているんですか!」
「魔物の大群よりそっちが気になるのかよ」
ボンバーは少し余裕が出たのか自然と笑みが出た。
それから詳しい作戦会議が始まった。
そして────
「魔物が帝都の城壁から見える距離まで迫ったか」
まだ結界は張られていない。
「結界は間に合わなかったのか………」
すでに避難誘導はほぼ終わっている。
それに伴って城に避難しようとした時に数体の魔物が引っ掛かり騒ぎになった。
しかしそれで騎士団や一部の市民は魔物が人間に化けていることを知ることになった。
「パニックは防がれたが、帝都の全ての人々が城に避難できた訳でもないからな」
女子供を優先したとは言え、帝都の市民を全て城に避難させるのは無理だったので、大きな教会や、頑丈な大きな建物に市民を避難させた。しかし、一部の市民は自分の家に閉じ籠り、避難しない者も一定数いた。
街中を兵士で巡回させ、火事場泥棒などの防止に努めている。
「予想以上の魔物の大群だ!?」
城壁の上にいる兵士からも緊張感が伝わってきた。
「本当に大丈夫なのか?」
「賢者のルリ様がいるから大丈夫だよな?」
兵士の不安をよそに、時間だけが過ぎていった。




