対面!
別荘の中に入ると庭を抜け建物のドアを開けた。
すると、玄関である一階の吹き抜けの広間には多くの魔物が苦しみながら転がっていた。
「ヒジリちゃん、結界の効力上げたの?」
「はい!少し気合を入れて張りました」
えっへんと胸を張って答えた。
前の屋敷での惨劇にヒジリちゃんも思う所があったのかも知れない。
「人に害をなす魔物は魔・即・斬よ!片っ端からトドメを刺していくわよ!」
「当然だ!」
ジーク達は転がっている魔物達にトドメを刺していった。
ヒジリちゃんとルリちゃんも魔法で攻撃していたから止めた。
「まだ親玉がいるかも知れないから魔力は温存しておいて」
「わかったわ」
ルリちゃんは少し不満があったようだけど、もしクラーク公爵本人がいた場合はルリちゃんに相手してもらう予定だから。
二手に分かれて一階と二階を見て回りながら魔物にトドメを刺していく。
「この短期間でヒジリちゃんも強くなったねぇ~」
「すべてはシオンお姉様のおかげです♪」
ええ子やのぉ~。お姉さん涙がでちゃう。
と、シオンは思ったが、ヒジリはシオンがいるとトラブルに巻き込まれ、それが鍛錬になっていると言いたかったのは秘密である。
「結構いたね。50匹ぐらい?」
「正確には52匹だったな。これで全部か?」
一通り見て回ったがボスらしきものはいなかった。
「これだけの魔物が喧嘩もせずに人の姿で彷徨いているなんて恐ろしいな・・・」
ジークの感想はもっともである。
「こんなのが人間社会に溶け込んだとすれば大混乱は必至だろうね」
「ええ、だからこそ今回の主犯格を捕まえて、同じことができないようにしないとね」
そんな時、シオンの探査魔法に引っ掛かった反応があった。
「まだどこかにいるわね。多分、地下かしら?」
手を前に出しながら魔物の気配を探る。
するとまた厨房の所にでた。
「また食料保管庫に何かあるのか?」
警戒しながら地下の入口を探すとすぐに見つかった。
「流石にいつも閉じるのは面倒だもんね」
多くの魔物が通ったような地下へ続く大きな階段を慎重に降りていく。
1番下に降りると頑丈そうな扉があった。
「鍵は掛かってないかな?」
ノブを回して押すとすぐに開いた。
元々、灯が付いていたので部屋の中は明るかった。
部屋の中は、少し近未来的な施設だった。液体の入ったガラスの中に様々な魔物が入って眠っていた。
「気持ち悪いね」
「ああ、こんなの神を冒涜している」
中の魔物は色んな魔物の部位の魔物を組み合わされていたのだ。
「ひっ!?」
ヒジリちゃんが悲鳴を上げそうになって無理やり飲み込んだ。
「どうしたの!?」
「あ、あれを・・・」
ヒジリちゃんが指を刺したのは───
「クソがっ!人間まで魔物と混ぜたっていうのかよ!!!!!」
ルリちゃんがブチ切れた。
「ここで研究している人物はイカれているわね」
『勝手に人の研究所に入ってきて、それはひどくない?』
!?
全員が咄嗟に臨戦体制を取った。
「誰かしら?」
コツコツコツッと奥から歩いてきたのは黒いローブを纏った女?っぽい人物だった。
「これでもこの研究には長い年月と莫大な予算を使っているのよ。失礼な侵入者ね」
「それは失礼したわ。でも凶暴な魔物が人間の姿で街や村に自由に侵入したら困るじゃない?だから潰しにきたのよ」
「アハハハッッ、何を言っているの?それが『面白い』じゃない!」
黒いローブの人物は高笑いした。
「少しづつ街の中に人間に化けた魔物を入れていき、多くの人々の前で正体を表すの!そうなるとどうなると思う?」
他のみんなはピンッと来なかったようだが、シオンだけは正確にその意味を正しく理解した。
「狂ってるわ!あんた・・・」
「あら?理解できたのは1人だけ?残念ね」
ルリは他人事ではないのでシオンに意味を尋ねた。
「アイツは何の事を言っているの?」
「・・・目の前で人間が魔物になる瞬間を見た人々は、隣の人間も魔物なんじゃないかと疑心暗鬼になるわ。さらに時間差でまた人間が魔物になる瞬間を見せれば・・・恐慌状態になった人間同士で殺し合いが起きる」
!?
往生で人間が魔物に変わった時、シオンはそのことを危惧していたのだ。そしてそれは敵の狙いそのものであり、予感は最悪の形で当たってしまった。
パチパチッ!拍手をしながら上機嫌に答えた。
「素晴らしい!100点満点の正解よ。ねぇ、あなた、こちら側に来ない?私の思考がわかるなら歓迎するわよ?」
「それならせめて名前ぐらい教えて欲しいわね。私はシオン・スカーレットよ」
仲間達はシオンの考えを察した。
敵から情報を得ようとしているのだと。
「・・・・まぁ、名前ぐらいならいいか。私はチェリーっていうの。家名なんてないわ」
シオンは部屋の中を視線を動かして何か手がかりがないかと必死で頭を回転させた。そして見つけた。
「自己紹介ありがとう。それでもう1人の仲間はどこにいるのかしら?」
!??
初めてチェリーの表情が変わった。
「なんのこと?」
「その後ろにある魔法陣は召喚魔法のものでしょう?エルフの里を攻撃した奴が黒いローブに身を纏った2人組って聞いたからよ」
「それだけで──」
「貴女ほどの召喚士がどれくらいいるのかしらね?最近ではシリウス王国でサラマンダーも召喚したんじゃなの?」
シオンは言葉を被せるように言い切った。
少しの間、沈黙の静けさが漂ったがチェリーが口を開いた。
「シオンね。たいした観察眼だわ。確かにもう1人、ベリーという仲間がいるけど、生憎とここ最近は別行動をしているのよ。私が研究して、ベリーが素材集めと資金調達をやっていたのよ」
なるほど。シリウス王国ではベリーという奴が動いていたので。
「その資金調達もまともなやり方じゃなさそうね」
「あら?裏の仕事はお金がたくさんもらえるのよ?人間の数少ない良いところね」
!?
「人間の・・・ね。自分が人間じゃないみたいな言い方だけど?」
ピクっとまた表情が少し動いた。
「前言撤回、貴女は危険だわ。数少ない情報からそこまで推理するなんて・・・ああっ!貴女がそうなのね?あのソロモン72柱の1柱であった大悪魔ヴァプラを倒したのは。貴女のせいで私達の予定がめちゃくちゃよ。エルフの時を止める秘術は100年ぐらい解けないと思っていたから、別の研究をすることになったのに!?」
「うるさい!貴女の研究なんてどうでもいいのよ!貴女の目的を言いなさい!魔物に知性を与えるのが目的じゃないんでしょ!」
シオンの殺気を涼しげに逸らすとチェリーはニヤリと笑った。
「私達の目的は『神』を復活させること」
「はっ?神様を???」
シオンはヒジリを見たがヒジリは首を振った。
「この世界の神様は教会が崇める1人しかいないはずデス」
確かに他の世界の神様はいるけど、この世界の別の神って誰よ?
シオン達は首を傾げることになるのだった。




