嫌がらせ
シオンはヒジリちゃんに相談した。
「この屋敷全体に聖女結界を張れる?」
「張れますけど一体どうして?」
「ほら、聖女結界って聖なる魔力が含まれているから、その中に閉じ込められた魔物にも効果があるんじゃないかなって?」
「ああ、あの大悪魔の時に使ったヤツの簡易版ってことですね。隠れていても苦しむはずですからちょうど良いデス!」
「ええ、ここで犠牲になった人達の敵討ちよ!」
シオンはジークとレオナにお願いした。
ルリちゃんはその場で待機してもらった。
「魔物をすぐに倒す効果がないから、足の速いレオナは一階に。ジークは二階で物音など動く気配がないか見張って欲しいの」
「「了解!!!!!」」
ジーク達が廊下に出てからヒジリは集中した。
「聖女結界!」
屋敷を丸ごと結界に包んだ。
2階からはいくつか小さな悲鳴が聞こえた。
「シオン、城にいた目玉のような魔物が何体かいたぞ。すぐに消滅したっぽいが・・・」
「体が小さいからすぐに死んだのね。お城のことを知って監視だけ残して、この屋敷を放棄したのかしら?」
少し考え込んでいると、レオナが大きな声を上げた。
「みんな!来てくれ!大変だ!」
!?
「いくよ!」
あのレオナさんが慌てているなんてよっぽどだよ!?
2階にいたメンバーは階段を降りるとレオナを探した。
「こっちだ!」
レオナは奥の部屋に移動していた。走っていくとそこは調理場だった。
「ここは調理場?」
「ああ、うめき声が聞こえたから来てみたんだが・・・シオンとヒジリは見ない方がいい。中の魔物は首を刎ねておいたから安全ではあるけど」
ジークが先に動いて中に入った。そこは涼しくて食料を保管する地下倉庫だった。
「うっ・・・これは酷いな・・・」
地下倉庫を覗いたジークが顔色を悪くしてすぐに出てきた。
「どうしたの?」
「・・・・屋敷でいなくなった人間が腐らないよう『保存』されていた。少しずつ食べていたみたいだな」
!?
「最初の頃にいなくなった人達は家庭の事情でいなくなった訳じゃなく、すでに殺されていたのね」
「ああ、しかし魔物がこんな知能を持っているなんて、想像以上にヤバいな」
「そうね。下手に知恵のある魔物は怖いわ・・・」
地下倉庫を見たルリちゃんは女言葉を忘れて毒付いた。
「クソがっ!この屋敷だけでも十数人以上は働いていたはずだ。それを・・・許さねぇぞ!!!!」
拳を壁に叩いて吠えた。
「・・・やっぱり女言葉はわざとだったのねルリちゃん」
ハッとシオンを見るルリにシオンは目を見ながら話した。
「そんなことをしているのは皇帝の弟で賢者と呼ばれるほど魔導に精通しているから、ルリちゃんを次期皇帝に推す声もあったからかな?」
「シオンちゃんにはなんでもお見通しなのね。その通りよ。次期皇帝じゃなくて現皇帝を廃して私を皇帝にしたい連中がいてね。変人になれば無理やり皇帝になっても誰も着いてこないから諦めると思ったのよ」
「ルリちゃんは優しいね。お兄さんのことが大事なんだね」
「そうよ。幼い頃はよく遊んでもらったし、偉ぶっているけど、本当は優しい善人のような人なのよ。次の皇帝は兄の子供に継がせる予定なのよ。それなのに・・・脅迫状が届いてね。家族の無事を願うなら言うことを聞けって手紙が何度もきたの。兄上は子供が生まれたばかり。絶対に守らないといけないのよ」
シオンは血の出ていた手に優しく回復魔法を掛けた。
「思い知らせてあげよう。誰に手を出したのかね。ここの人達の仇を討つよ」
シオンの殺気にゾクリとしたが、ルリは力強く頷いた。
外で避難させていた門番さんに手紙を渡して王城に行ってもらった。私達はそのままクラーク公爵の別荘がある地図の場所に向かった。
「あの門番さんは運が良かったね」
「そうだな。一歩間違えれば死んでいただろうに」
運の良かった門番さんを考えながらシオン達は馬車を飛ばした。
そして目的地の場所に着くと、少し離れた場所に馬車を停めた。
「麦畑の広がるのどかな場所だね。逆に、ひと里から離れているから悪いことをしててもバレにくいとも言えるけど」
「どうやって潜入する?」
「すでに目玉の魔物でバレてると思った方がいいでしょう」
ならやることは一つね。
「シオン、変なこと考えてない?正面からカチコミはダメだよ?犯人が逃げてしまうかも知れないから」
「な、なんてことを言うのよ!そんなことは半分しか考えてないから!」
『『半分は考えていたんだ』』
「コホンッ、ここは先手必勝で、また聖女結界を張ってもらうよ」
「なんのためにするのかしら?」
ルリちゃんが聞いてきました。
「今回の強制捜査は証拠がないじゃない?魔物がいれば決定的な証拠になると思わない?」
「なるほど!魔物が入れば間違いなく奴らの拠点とわかるし一石二鳥ね!」
別荘の前に移動するとヒジリは聖女結界を張った。
すると静かだった別荘の屋敷から大きな声があっちこっちから響き渡った。
「ビンゴね!」
「ああ、油断せずに行こう」
閉まっていた門を派手に壊してシオン達は別荘の中へと足を踏み込むのだった。




