同類
それから皇帝の寝室に結界を張ってから、ルリちゃんがいる『魔術研究棟』ってところに向かった。
城の敷地内にあるけど、連絡通路を使って結構離れているようだった。
「少し遠いでしょう?魔術や魔導具の研究は危険で爆発する場合もありますので離れにあるのです」
「なるほど。でも、それなら城の郊外にでも建ててもよかったのでは?」
「ほほほっ、それもありですが、我が国の最先端の技術が盗まれでもしたら大変です。なので警備の1番高い城の敷地内に作ったという訳ですな」
「おおっ!それなら納得です!」
シオンのテンションが高いことにジークは疑問に思った。
「テンションが高いけど楽しみなのか?」
「それはもちろん、帝国の最先端の技術力が見れるのは好奇心が湧き立つ思いだよ♪」
シオンが楽しそうならいいけどね。
ただトラブルメーカーのシオンが変な物を触って爆発させないか、見張っておこうと思うジークだった。
魔術研究棟に到着するとルリちゃんが入口で出迎えてくれた。
「久しぶりね。もっと早く来てくれると思ったのに!」
プンプン怒るルリちゃんに謝った。
「ごめんね~エルフの里の復興とか色々あってね~。それより、私の作ったマジック・ボードって魔導具なんだけど売れるかな?」
「マジック・ボード?何それ!面白そうじゃない!詳しく教えて」
カクカクさんがシカシカしまして、あーしてこーなったしだいであります。
シオンの説明を聞いたルリちゃんは顔が険しくなった。
「シオンちゃん、なんてヤバいものを作ったのよ!これがあれば馬がいらなくなるじゃない!戦術的にも移動短縮になるし、下手な追ってからも逃げられる。何より、少し改造すれば重たい荷物を浮かせられるから商人達が喉から手が出るほど欲しくなるでしょうね。ちなみに量産はできるのかしら?」
「すでにエルフ達の収入になるかなと思って委託しちゃった。もう量産体制に入っているよ」
「空を飛べるだけでも凄い技術なのよ?術式にセーフティモードを入れてあるのが凄いわね。普通なら落ちた時の術式なんて組み込むことなんてしないもの。安全を1番に考えているシオンちゃんの性格が出ているわね~」
「少し見ただけでそこまでわかるなんて凄いね!流石はルリちゃんだよ♪」
2人して楽しそうに話していると宰相さんが咳払いをして、間を取り持ってくれた。
「コホンッ、すみません。魔導具の講義は今度にして、現状の話をさせて頂きたいのですが?」
「あら?ごめんなさいね~つい楽しくって♪取り敢えず部屋に行きましょうか。着いてきて」
ルリちゃんの後を追うと、ここにも昇降機があり1番上の階まで一気に行きました。
「いらっっしゃい。ここが私の研究室よ」
中はオシャレなカフェ屋さんみたいに明るい感じの部屋で、テーブルの上には色々な部品が散乱していた。
「最近は私も魔導具の開発に忙しくってね。あの魔導砲も、もう少し小型化できないか研究中なのよ」
うまく行ってないんだけどね。ルリは手を広げながら首を振った。
「それならシオン様の小型の結界装置を見てはどうです?」
宰相は余計なことを言ったと後から後悔した。
「何それ?見せてもらえる?」
シオンの取り出した小型の結界装置を見たルリは大興奮してシオンの方を掴んだ。
「シオンちゃん!あなたは天才よ!こんな方法があったなんて信じられない!こんな簡単な方法で小型化に成功していたなんて!?」
大興奮したルリは詳しい構造などシオンを質問攻めにした。
ああ、またか・・・
宰相はしまったと悟ったが後の祭りである。
なんとか、今の状態を話さなければと無理やりルリを引き離してから本題に入った。
「はぁはぁ、全く話が進みませんのでいい加減にしてください!」
「もうっ!せっかくいいところだったのに。すでにこの小型の結界を寝室とかに設置したんでしょ?ならしばらくは大丈夫じゃない?シオンちゃんと早く魔導具について話がしたいわ」
宰相の無言の圧力でルリは黙った。
「さて、今の帝国はかなり危険な状態です。一部の貴族は隠しもせずに軍備の強化をしていたり、王宮内でも皇帝派と貴族派で対立が日々、酷くなってきています」
「先日なんて王宮内で暴力事件も起きているしね」
ルリが追加で話した。
「1番の問題は、主導者はわかっているのに、その後ろにいる黒幕がわかっていないことなのです」
「主導者って誰なの?」
「クラーク公爵ですな。王位継承権もある皇帝の親戚筋であり、帝位を昔から狙っている小物です」
小物なんだ。
「叔父上は政策の難癖を付けるぐらいしか出来ない小物よ。でも、ある時を境に人が変わったようになったの。皇帝の政策に反論しなくなり、領内でも前より領民に寄り添った政策をするようになり、人気が出てきたわね」
「へぇ~それなら問題がないんじゃないの?」
「それが最近、また人が変わったようになって、、帝室批判をするようになったの。怪しい実験をしていると噂も流れて、それから異形の魔物が現れるようになったわ。彼の領内でね」
「う~ん、違和感があるわね。政権交代を狙うならそのまま良い子ちゃんを演じた方が良いだろうに」
「そうでしょ?だからこっちも混乱しているのよ。でも、今や反皇帝の旗頭として多くの貴族をまとめているのも事実なの。明日の朝礼で大悪魔を倒したシオンちゃん達を紹介するわ。もしかしたら動きがあるかも知れないしね」
「動きがなかったら?」
「クラーク公爵の屋敷を強制調査するわ。もう黙って見てられる期間は終わっているの。ただ戦力が足りなくて保留になっていただけなのよ」
「はぁ、その戦力が私達って訳ね。ルリちゃん、危険を冒してまで信用できる大事な宰相さんを使って私達を呼んだことに対して私はあなたを信用はしているわ。・・・・もし、私達の信用を裏切ったら・・・許さないから。よく覚えておいてね?」
ゴクリッ
シオンの殺気に冷や汗が止まらないルリは静かに頷いた。
「わかっているわよ」
深呼吸してから手を差し出した。
「私も帝国をもっと豊かにしたいし、領民を大事にすると誓っているわ。だから協力して欲しいの」
「その言葉、信じるわ。しばらくの間よろしくね!」
2人はガチッリと握手を交わすのだった。




