復旧作業
ドンチャン騒ぎが過ぎて、エルフの人達も本格的に里の復興をする事になりました。
「エルフの里はほぼ半壊状態か」
流石に覚悟していたとはいえ、ボロボロの生まれ故郷を目にして胸にくるものがあった。
「ねぇ、エルフの里の建物は基本的に『木』でできていたんだよね?」
「ああ、この辺りの木材を利用して作っていた。魔力濃度が高いため、頑丈で火にも強かったんだ」
またシオンが1人で奇行を始めた。
(失敬な!)
「誰か建物の精巧な絵を描ける人っている?」
そう尋ねるシオンに何人かのエルフが手を挙げて、自分の家を描いた。
「ふむふむ、なるほど・・・」
絵をじっと見つめていたシオンは立ち上がると、空いている場所に移動して、『ユグドラシルの杖』を構えた。
「その杖、あの爆発で紛失したんじゃなかったの?」
「ああ、なんか念じたら戻ってきたの。多分、ジーク達の聖剣も手元に戻ってくると思うよ?」
契約者というか、使用者の元へ戻ってくる能力があるようだ。
と、話が逸れたが、シオンはブツブツと呪文を唱え始めた。
すると、地面から木の蔓のようなものが出てきて、あっという間に、描いた絵のような家が誕生した。
!?
「し、シオン!何をやったの?」
レオナもこれには驚き、口をあんぐりとさせた。
「この杖の能力だよ。植物を操れるって聞いていたから、木の家なら作れるかなって?流石に窓ガラスは後からはめないといけないけどね~」
周囲が驚き、呆然としている中で、シオンはどこにどんな建物があったかのか聞きながら、同じ手順であっという間にエルフの建物を復元していった。
「復興には数年単位を考えていたのだが、本当に規格外な少女じゃな」
そう呟く族長にレオナも同意した。
「ええ、まったくです。付き合いは短いですが、いつも驚きっぱなしですよ」
族長は何か御礼をせねばなと思い、直接シオンに尋ねた。
「御礼ですか?別にいらないですよ。逆にこれは10年もの間、大悪魔を命をかけて封じてくれていた、人間側の御礼なんですから」
そう言ってニッコリと笑うシオンに族長は逆に頭を抱えた。
「あはははっ、流石はシオンだよ。人が良いというか無欲というかね~」
側で見ていたレオナは笑った。
しかしなぁ~と、こんな短時間で建物を用意してもらって、何も返さないというのもエルフのプライドが許さなかった。
「何かないと言われても・・・お金は持ってるしなぁ~?」
う~んとシオンも考え込んでしまったのでレオナが助け船を出した。
「なら、2人とも、私がシオンの旅にこれからも同行することで、お礼にならないかな?」
「え、レオナさんが付いてきてくれるなら嬉しいよ!」
「レオナはそれで良いのか?」
「うん、エルフの里に帰ること。それが約束で、その約束が叶った今、まだまだシオンと旅がしたいと思ったんだ。そのきっかけを探していたし丁度よかったよ」
「シオン殿、まだまだ未熟ではあるがレオナをお願い致します」
「こちらこそ、改めてよろしくね」
こうしてシオンとレオナは硬く握手をしてこれからも同行する事になった。
「それとシオン殿、あのマジック・ボートと呼ばれる物は量産できるのかな?」
族長が移動の時にシオンの仲間達が乗っていたマジック・ボートに興味を持っていた。
「うん、あれは作りが単純だからすぐに作れるけど購入するの?」
「うむ、馬と違いこの森でも使える便利なものだ。できればまとまった数を購入したい」
キュピーーーン!!!!!
ほほう?これは商機とみたよ!
「それでどれくらい欲しいの?価格は勉強させてもらいまっせ♪」
急に商人になるシオンに苦笑いしながら取り敢えず急がないから50個欲しいと伝えた。
「50個!?ありがとうございます!」
ボードの部分は良いとして、そこに魔石と魔法陣を書き込むのに・・・げっ、時間かかりそう!?
旅を続けるシオンには思わぬ道草になってしまう。
「価格はかなり安くするので、魔法陣を書き込むのをエルフの方で手伝って貰えますか?」
「それは構わないが、秘匿するべき物ではないのか?」
「それは信用しているって事で♪それにこれからはエルフさんに製造をお願いしようと思って。そうすれば商品を通じで聖王国と繋がりもできるから、今後何かあっても異変に気づけるでしょ?」
「なんと!そこまで考えておるとは!?」
「ただの思いつきだよ。それにマジック・ボートが流行れば、今後、レースとか開催して国を挙げてのイベントも開催できるかも♪夢が広がるねぇ~」
シオンはのほほーんと語ったが、一緒に施設にきていた教皇が大きく目を開けて驚いていた。
『これは新たな収入源になるのでは?』
お布施を良心的な価格に戻したことで、教会に入ってくる収入は減ったのだ。組織の運用にはお金が掛かる。もし、賭け事で儲けたお金を教会の資金運用に使えれば、信者も納得するだろう。賭け事で使ったお金は、巡り巡って、炊き出しなどの経費として正しく使われるのだから。
「し、シオン君。それは教会が運営しても良いのじゃな?」
「君?まぁ、この国は教皇様の国だし、変わった娯楽があっても良いんじゃない?レース会場なら私が、この杖で建てることもできるしね」
競馬みたいに、有馬記念みたいな特別なレースや通常レースに、月に一回の大きいレースなど開催すれば面白い事になるかも。
シオンは教皇に思いつくアイデアを語るのだが、それは後に大陸が熱狂するスポーツになるのはもう少し後になってからである。




