激闘!
仲間達もただ待っていた訳ではない。手に入れた聖剣などの武器に魔力を溜めていた。
そして2人のチャージが完了した。
「全力を解放すると1日しかこの世界に顕現できんのが残念であるな」
「それは良い情報ね。でも、すぐに魔界に帰ることになるかもよ?」
お互いに静かに武器を構えた。
「強者には敬意を払うのが我である。認めよう。小細工なしでここまでの力の波動・・・素晴らしい」
「ありがとう。あなた・・・ヴァプラも今の方がカッコいいよ」
少しの間、静寂が流れた。
2人の間に風で木の葉がゆっくりと地面に落ちると───
ドッッ!と、2人が一斉に飛び出した。
「今こそ、戦さの狂乱に身を投じようぞ!」
「女性をダンスに誘うなら、口説き文句を考えなさい!」
何度か打ち合い、金属音が響き渡る。
シオンは身体強化の指輪の能力とヒジリのバフにより素早い動きで打ち込むがヴァプラも大きな戦斧を目にも止まらぬ速さで振るい、仲間達が援護に入れない状態だった。
そして僅かな隙を見つけ、ヴァプラは戦斧を振り上げてから振り下ろした。
ガギンッとシオンは杖で戦斧を受け止めた。シオンの足が地面にめり込むが、杖は折れなかった。
シオンが貰った杖は、別名『ユグドラシルの杖』これも別世界の神杖であり、魔力を高める効果の他に、植物を操る能力もある。魔力を込めると硬くなる性質を持ち合わせた杖なのだ。
「ワハハハハハッ!!!!!受け止めるか!?いいぞ!いいぞ!」
「くっ、流石に重たい一撃ね」
シオンとヴァプラの攻防の間に、ジーク達も遅れて飛びかかった。
「俺たちも忘れるなよ!」
ジークの持つ聖剣は『天叢雲剣』。言わずと知れた日本の神剣である。別名は草薙剣とも呼ばれる。
ヴァプラは戦斧を持っていない腕でガードしたが、天叢雲剣は豆腐を切るようにヴァプラの腕を切り落とした。
「こっちも忘れないでね!」
レオナの持っている剣は風の魔力を秘めた魔剣『エアリアル』。元々、風魔法が得意なレオナと相性の良い魔剣であった。こちらも切れ味鋭く反対側のヴァプラの腕を切り落とした。
ヴァプラは一瞬、顔を顰めるがすぐに戦斧を切り返して、ジークとレオナを吹き飛ばした。
剣でガードしたが地面に叩きつけれる所を、後方で支援魔法を使っているヒジリがフォローした。
「気をつけてください!バフをかけているとはいえ、直撃したら命はありませんよ!」
「助かったよ」
すぐに起き上がると、注意を分散する為に左右と正面から斬り込む。
ヴァプラは切られた腕に魔力を込めると瞬時に切られた腕を再生させた。
!?
「今度はどうかな!?」
今度は手の爪を伸ばして2人の剣をガードした。今度は切られずに受け止められた。
そして2人を止めると、再度シオンに戦斧を振りかぶった。
「同じ手は喰らわん!『魔撃衝』!!!」
ヴァプラの魔力の乗せた戦斧の一撃がシオンに襲い掛かる!
しかし、シオンは間一髪の所で後方に飛び下がった。だが、衝撃破がシオンを追い掛けるように直線上に走りシオンに直撃した。
「やばっ!??」
ドーーーーン!!!!!
「シオーーーン!!!!!!」
爆発と共に空中に投げ出されるシオンを見たジークはシオンに駆け寄ろうとするが、ヴァプラがそうはさせなかった。
「どこに行く!」
戦斧で牽制しつつ魔法を放つ。ジークは避けるのでやっとであり、シオンに近づけない。
「私が確認しますから、ジークさんは目の前の敵に集中してください!」
みんなに支援魔法をかけていたヒジリが駆け寄った。
「シオンお姉様、ご無事ですか!?」
ヒジリが助け起こすと、シオンは血を流していた。
「だ、大丈夫よ。ちゃんとガードしたから擦り傷程度よ」
ヒジリは回復魔法を掛けるが、不安になった。
本当に勝てるのかと。
「そんな顔をしないの。さぁ、仕切り直しよ!」
「はいっ!」
レオナはその様子を見ながらホッとしていた。
『大丈夫そうでよかった。こちらも勝負を掛けるか」
レオナは風の魔力を纏って高速で動いた。
「ぬっ?」
ヴァプラは知らない間に身体を傷つけられた事に気付いた。ジークは絶妙なタイミングでヴァプラの気を引いて、レオナの攻撃を付かせない様にしていたのだ。
『死角からの攻撃?いや、この切り口は正面からか?』
ヴァプラは両手で魔法を放った。
「ならば、魔風陣!」
ヴァプラを中心に竜巻が起こり、シオン達は小さな傷を作りながら弾き飛ばされた。
「レオナの高速攻撃に気付いた!?」
レオナは反応できなかったが、シオンとジークは逆にチャンスだと動いた。
「今のうちに大技をぶつけるチャンス!」
竜巻はヴァプラを中心に展開され動いてはいない。
シオンとジークは一斉に放った。
「水の竜よ!行けっ!」
いつものあ~ナムナムと聖水化させた水魔法を放った。
「剣技スキル【悪魔斬り】」
その名の通り、悪魔や魔族に効果のある剣技スキルである。これも剣戟の衝撃波がヴァプラに飛んでいった。
「これはどうだ!」
ヴァプラは魔風陣を前に飛ばした。
!?
ジークの剣戟は竜巻に弾かれてしまった。そしてシオンの水の竜も竜巻に飲み込まれたが───
「なにっ!?ぐわっ!」
水を含んだ竜巻が後ろに戻ってヴァプラに直撃した。竜巻のダメージはなかったが、竜巻に飲み込まれた聖水の水のダメージを受けたのだ。
シオンはわざと竜巻に水を絡ませてコントロールを奪ったのである。
「出遅れたがチャンスだ。神速剣」
風魔法でスピードをアップさせた高速移動でレオナはヴァプラを切り刻んだ。
「くっ、おのれ!!!!」
身体中に無数の剣で斬られた跡が残った。
「ユグドラシルの杖よ!彼の者を束縛せよ!ソーン・バインド!」
地面から薔薇のツルがヴァプラを縛りつけた。
戦斧を振おうにも強力な束縛に動きが止まる。
そしてすぐに魔法攻撃に切り替えた。
「この程度で!」
自分が傷付くのもお構い無しで、爆発系の魔法を手当たり次第に撃ちまくった。
「うわっ」
「きゃっ」
近くにいたジークとレオナが爆発に巻き込まれる。
ヒジリが駆け付けようとしたがシオンが制した。
「2人は軽症だから大丈夫。それより1分でいいから強力なバフを掛けられる?」
ヒジリはシオンの言われた通り、短時間のみだが効果高い身体強化と防御力アップの支援魔法をかけた。
「これで決めるわ!」
そういうとシオンは素早く駆け出した。すでにヴァプラを束縛していたツルはボロボロですぐに千切れそうな状態だった。
「来るかっ!」
自慢の戦斧を無理やり振り被った。
ツルはブチブチッと千切れたが、一瞬だけ振りかぶるのが遅れた。
それが勝敗を分けた。
ヴァプラを渾身の一撃をシオンに叩き込んだが、シオンはスライディングをしてヴァプラの足元を通ると、そのまま背後から飛び跳ねるようにジャンプをして、ユグドラシルの杖の尖った部分をヴァプラの額に突き刺した。
「グワッ!?」
「聖なる雷よ!邪悪な者を消し去る裁きを!」
空から特大の聖属性の雷がユグドラシルの杖に落ちた。
「グガガガガガッッッ!!!!!!」
「シオン!?」
そう、杖を握っているシオンもその身に受けながら。
仲間達は、眩しい光と共に雷が収まるのをただ見守る事しかできなかった。




