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閑話 裸足で旅はさせたくない

アイリーンさんの準備が終わり、出発しようとしていたところ。ある問題が浮上した。


この世界に来た時の僕の服装は、元の世界で最後に来ていた部屋着ではなく、シンプルなTシャツにズボンに、裸足。

そう裸足だったのだ。

これから長時間歩くというのに、裸足だとかなり不便だし、少し危ない。だが、もう一つ靴があるわけもないので、僕は裸足でも大丈夫だと言ったが、アイリーンさんが危ないからだめだと言ってそれを認めなかった。アイリーンさんの性格上僕を心配する気持ちも分かるし、確かにアイリーンさんのいうことも分かるのだが、こればかりは仕方ないのだ。しかし僕がどれだけ断っても、アイリーンさんは粘り強く案を出し続けていた。


「もし気にしないなら、私の靴を使うのはどう?私は靴の下に一枚履いてるから、遠慮はいらないよ…!」

「それはっ、ちょっと……今まで裸足だったので、履いたらアイリーンさんの靴を汚してしまいます」

「いいよ!全然気にしないから!それよりも、これから長く歩くっていうのに裸足で歩く方が危ないよ!道も安全な訳じゃないし」

それはそう、…なのだが。裸足で、しかも汚れた状態の足で人の靴を履くのは少し気が引ける。それに、僕だけ靴を履いてアイリーンさんは靴下…のようなものだけなんていうのもどこか申し訳ない。それに、足のサイズも違うはずだ。アイリーンさんの靴が合わなかったら、足を痛める可能性もある。だから、この提案もなしだ。

「サイズが合わないかもしれません。歩いて旅をするというのに靴のサイズが合わなければ足を痛めます。そうすれば、本末転倒です。だから、やっぱり僕は裸足で大丈夫です」

「そういうわけにはいかないよ!でも確かに、靴を履いてかえって足を痛めちゃうようじゃ意味もないか。じゃあどうすれば…」


アイリーンさんの靴を借りず、裸足にならなくて良い方法。どうしたものか。

僕がどうにかならないものかと頭を捻っていると、アイリーンさんが何かいい案が思いついたようで、表情をパッと輝かせた。

「そうだ!靴じゃなくてこれを履けばいいんだよ!」

アイリーンさんはそう言って、大きなカバンをあさってあるものを取り出した。

「靴下だよ!知ってる?最近は結構履かれてると思うんだけど、国によって違うからね。これは冒険者用の店で買った他のより丈夫なの。旅の途中の国で見つけたんだ。」

靴下?この世界にもあるのか。でも、どちらかと言うと、靴下よりタイツに見える気がする。

詳しいことを聞いてみると、その名の通り元の世界で言う靴下と同じもののようで、短めのものやアイリーンさんが今持っているタイツのようなものなどその種類も様々なんだそう。元々あまり一般的ではなかったものの、ある冒険者が足の衛生面を気にして履き出したことで他の冒険者の間でも広まっていき、やがて移動の多い冒険者向けのものも売られるようになったらしい。冒険者向けの靴下は少し特殊なため、冒険者向けの店でも大国などの限られた店でしか売られておらず入手が困難らしい。

そういったこともあって、アイリーンさんは予備の分まで買い溜めていたようだ。

「だからこれ履いて!靴には劣るかもしれないけど、裸足よりは良いはず」

そう言って僕に押し付けるようにして黒い靴下を差し出してきた。

勢いに押されて受けとるが、何故だろう。今までこういった靴下を履いたことがなかったからだろうか。少しだけ受け取るのを躊躇ってしまう。

でも、アイリーンさんはまだ使っていないらしいし、靴を貸してもらうよりは良いだろう。それに、解決法が見つかった以上このまま裸足で行かせてくれる訳でもなさそうだ。

「わかりました。じゃあ、これを使わせてもらうことにします」


そうやって僕はアイリーンさんにもらった靴下を履くことにした。僕が今履いているのが長ズボンで良かったと心の底からそう思う。もし短いズボンに、タイツに靴無しだったとしたらなんかこう、どこか恥ずかしい気がしたからだ。


と、まあそんなこんなで、無事裸足での旅は回避できたのだった。のだが、アイリーンさんはどこかまだ不満そうだった。

「ねぇ、やっぱり靴履かなくて大丈夫?」

「大丈夫ですよ。靴下も貸してもらいましたし、それにさっきから言ってますが靴はサイズの問題があります」

異世界だと、衛生面とかは日本より大雑把なもんだろうと思っていたのだが、アイリーンさんは意外とそう言ったことを気にしているようだ。

「まぁしょうがないか。でも、街に着いたら絶対新しい服とか靴買ってあげるからね!」

一旦諦めたかと思えば、いきなりそう言われて驚く。

「いや、それは流石に申し訳ないです!自分でどうにかします」

「でも、街に入ってまでそのままってわけにもいかないでしょ?服はまだ良いとして、せめて靴だけでも買うべきだよ。それに、まだお金を稼ぐ手段も見つかってないんだし、ここは私に甘えて良いから」

…確かに。つい勢いで自分でどうにかするなんて口先だけで言ってみたが、こればっかりはアイリーンさんの言う通りだ。実際それを自分で靴を買う手段を僕は持っていない。

「どうしても気になるなら、お金を稼げるようになってから返してくれたらいいよ。私はあまり気にしないけど、とにかく街に着いたら必要なもの買うからそのつもりでいてね」

「…ありがとうございます」

アイリーンさんは気にしなくてもいいと言ったが、もちろんそういうわけにもいかないので、必ず自分でお金を稼いで恩もお金も返せるようにしようと僕は固く決心した。


街へ出発する前に色々あったが、問題も無事解決しようやく僕たちは目的地へ向かって出発することになったのだった。

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