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2 変わらない日々


長いように感じていた一週間だったが、気がつけば金曜日になっていた。


いつものように何事もない学校も終わり、僕は1人帰路についた。

少し前までは、友人たちと楽しそうに喋りながら帰っていく人たちを見れば、羨ましくて、寂しくてどうにかなってしまいそうだったが、いつの間にかそういった気持ちも無くなってしまうほどに1人に慣れてしまった。悲しいことだ。

でも、たった1人の帰り道はとても退屈に感じる。

友人がいたらどんな感じなのだろうか。放課後にカラオケへ行ったり、ご飯食べに行ったり、いろんな場所に遊びに行ったりして……。

そうやっていろいろ想像をしてみて改めて思う。羨ましいという感情は、きっといつまで経っても消えてくれないんだろうなと。




そうこう考えながら歩いていると、いつものバス停にたどり着いた。

毎日同じ時間に、いつもと同じ景色のバスに乗り込む。

バスの中は違う学校の制服を着た学生や、外出帰りの人がちらほらみられるだけで時間帯の割にそれほど多くもない。同じ方向に行く人が少ないだけなのかもしれない。

これくらいの人だと、周りを気にしすぎず安心して席に座ることができる。

いつものようにイヤホンを取り出し、絶えず襲ってくる不安を消したくて音楽を再生する。

それ以外でスマホは触らない。連絡を取るような友人もいないし、余計な情報を頭に入れたくもないからだ。

バスの中から、絶えず変わり続ける外の景色をぼーっと眺める。

いつもと変わらないバス、いつもと変わらない行動、いつもと変わらない景色。

くだらない考え事を続ける僕のことを、この景色はひどく安心させてくれる。

今日を終えられたことに、今週を終えられたことに、そして目の前の現実に、感謝しながらバスを降りるのを待った。




バスから降りて、ようやく家に向かって歩きだす。

近所の公園から聞こえてくる元気な子供の声も、少しずつ花びらが散っていく桜の木々も。いつもと変わらない。


長いように思えて、過ぎてしまえば短かった一週間がようやく終わり金曜日、またいつもの土日がやってくる。

学校に行くのが楽しいというわけではないが、僕にとって休みの日の1人になる時間、何もない時間ほど怖いものはない。でも今週は先週のように、ただベットに寝転がっているだけの休みにはしたくない。せめて、勉強、いやそれ以外でもいい。何かしないと。


焦れば焦るほど負のループに取り込まれていることなんて知る由もなく、

そうこう考えているうちに僕の住むマンションの前までたどり着いた。

僕の家は、バス停から10分程歩いた場所にある。大きくも小さくもない普通のマンションの一室だ。

オートロック式のエントランスを通り過ぎて、エレベーターを使って自分の家のある階層まで上がる。学校から家まで約40分。比較的近い方ではあるが、やはり1人だと遠く長く感じる。

家の鍵を開けて、少し重いドアを開く。

いつも通り「おかえり」の声は聞こえない。紛らわしい言い方をしたが、けして家族仲が悪いわけではない。ただ両親が共働きで、早い時で夕方、それか夜遅くに帰ってくることが多いだけだ。去年までは家には兄がいて、帰って来たら声をかけてくれたていたが、そんな兄も今年から大学生となり一人暮らしを始めたことで、夕方家にいるのは僕だけとなった。


たった1人のリビングには、静寂が漂っている。春の空はまだ明るく、窓からは陽の光が差し込んでいた。

少しだけソファで休憩したあと、自分にできる範囲の家事を始める。こうやって何かしないと、どうも気分が落ち着いてくれなかった。そのあとは、気が散りながらも学校の課題などを終わらせるために勉強をする。やるべきことが終わってしばらく1人の時間を過ごした後は、さっきまでとは違いあっという間に時間が過ぎていく。


ご飯を食べて、お風呂に入って、ベットへ横たわる。

横になったことでようやくいつも通りの1日が終わったことを実感し、ほっとして一息つく。

しかしほっとしたのも束の間、寝る前には考え事がつきもので、これもまたいつものように寝転がったまま延々と続く不安に意識が集中する。これのせいでうまく寝付くことができず、寝不足になるのがいつもの流れだ。


色々な不安ごとが頭に浮かんでいくが、最近はそれを紛らわすようにしてあることを考えるようになった。

「漫画やアニメの世界に行くことができるならば、それはどれだけ幸せなことだろう」と、きっとそこにはヒーローがいて、よく分からないすごい力で戦うことができて、正しい心と力を持った偉大な人間がいる。

それがそういった世界があるとわかっているだけで僕の心きっと救われるだろう。


これはあくまで願望であり、一生を賭けたって絶対に叶わない夢だ。

生きる上で困難に直面しない人間なんていない。漫画の中の人物だってけして楽に生きているわけではない。

それはわかっている。でも、叶わないとわかっているからこそ、現実になってほしいと、叶ってほしいと思ってしまう。

でも、漫画の世界だとあまりにも非現実的に感じる。それに、物語としての印象が強くてなんだかピンとこない。

そう思ってもう一度じっくりと考え直す。そして一つの結論に至った。

それなら、もし行けるとするのなら僕は、異世界に行ってみたい。と


最近だってよくある話じゃないか。地球に住む主人公がいきなり異世界へ転生して、強い力を手にして幸せに暮らす。まさに夢のような世界。

叶わないことは十分に分かっている。それでもいい。これはあくまで願望だから。

もし、この世界とは別に、異世界というものが本当に存在しているのならば。

それを想像するだけで、ほんの少しだけ気持ちが軽くなる気がした。

イヤホンから流れてくるゆっくりとした音楽も相まって、珍しくも寝る前に安心感を感じる。

このチャンスを逃すまいと、僕はゆっくり目を瞑る。

どうか今日は、この安心の中、良い気分で眠れますように。

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