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異世界貴族アイドル☆プロデューサー! ~地味令嬢の私は、わけあり男子を推して参る~  作者: フセ オオゾラ


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第6話「アイドル活動部、発足!」

「オースターさん、部活動をしませんか」


 職員室にて。最近恒例となっている、担任の先生への自習室使用申請でのやり取り。

 利用申請を出そうとしていた私に、先生はそう切り出してきた。


「部活……ですか」


 一瞬、前世で縁のなかったバレーやバスケ、新体操といった運動部が頭をよぎる。この世界だと茶道部みたいな社交マナーを学ぶ部活や、ダンス、剣術、槍術、馬術といった生活や、社交に繋がる部活が存在している。

 せっかくなら前世でやらなかったことをしたい、なんて気持ちはある。しかし、時間を取られるのはな……。

 そんなことを考えていると、先生が続けた。


「はい。あなたのアイドル活動。先生も最大限、支援できたらと思いまして」

「あ、アイドル活動の方……」


 部活にする、という発想はなかった。でも、良いかもしれない。


「それに、あなたが正体を隠したい、といった理由がわかりました」

「!」

「現状では精霊からの反響はあるものの、人からの評価が肯定的とは限らない……今は慎重に、大きな流れを作りたい。でしょう?」


 そう、そうなのだ。目立つのがいや、というのはあるが、そっちの方が実は怖いなと思っている。

 伝統的な神事は、宗教観や政治も関わる微妙な存在だ。それを、精霊に人気がないからと言って辞めましょう! と声を出しても無視されるか、封殺されるだけである。

 前世でも会社で、このソフトの使用をやめませんか。って無料オフィスソフトのことを上司に相談したら、面倒くさいやつ扱いされた挙句、微妙に遠巻きにされるようになったことがある。


「はぁ……わたくしもあと10年は若かったら、あなたの活動にぜひ加えていただきたいと申し出たのですが……」


 先生はうっとりと頬を染め、そんなことを呟いていた。聞かなかった方が良いかなと思い、アルカイックスマイルでスルー。


「提案、ありがとうございます。推し活仲間が増えること、嬉しく思います」

「推し活仲間……よい響きですね。ぜひ。わたくしも仲間として、アイドル活動を支えましょう」


 先生も楽しそうだ。

 わかりますよ……! 仕事に忙しいと、中々趣味とかに手を出す時間もありませんし、仲間と一緒に一丸となって何かする! というのもそういうチームの仕事じゃないと機会がありませんもんね……!

 社会人同士の共感から、先生と手を取り合う。

 部活の顧問を先生が担当してくれるとのことで、暫定的に私が部長で部活動の申請を行う。

 男子3人にも確認するため、私は自習室にみんなを集めた。


「この度、アイドル活動部を発足することになりました! いぇーい!」


 さっそく壇上で発表する私。返ってきたのは冷ややかな反応だ。


「君はいつも、突然だな……」

「い、いぇーい……?」

「オレ、なんかわかってきたわ。実は何も考えてねーだろ」


 3者3様の反応。く、ノッてくれる味方はプル君だけか……!


「それで、今度はいったい何を?」

「私が思いついたわけじゃないんですけどね?」


 アセ様にそう断りを入れつつ、担任の先生からそう提案があったことを3人に伝える。

 みんなその内容に納得してくれているようだ。


「なるほど。私はどこの部からも敬遠されているからな……構わない。むしろ、いいのか?」


 これは私じゃなく、プル君とマド君の2人に聞いている。

 アセ様はその髪色から呪われているのでは、なんて噂されている方ではあるが、私はそんなことないって信じているし、実害もくらったことはない。でも、2人もそうとは限らない。


「呪いってのおもしぇ研究テーマだどは思うども、おっかながるようなもんでねぇなぁ」

「あぁ? 呪い? 今更だろ、信じてたらここにいない」

「っ……そうか。よろしく頼む」


 気にしない、という2人に、心なしか嬉しそうなアセ様。

 どうやら問題なかったみたい。私もほっと胸を撫でおろす。


「それじゃ、正式に部活にしちゃうから、申請書に記載お願いね?」


 それぞれが頷き、申請書に記載する。私はそれを後日、先生に提出した。


 こうして私たちは部活動として動き出し、早速、机と椅子をどけて部室にスペースを作り、アセ様とマド君にはダンスと歌を練習してもらい始める。プル君は部屋の隅でレコードなどの魔道具弄り。先生も監督のため、という名目で、離れたところで私たちを見学している。

 歌もダンスも私が見本を見せる形になるので、私も一緒に練習しているよ。


「よーし、いったん休憩しよっか」


 汗をかき、少し息が上がりつつ、私がそう言うと、アセ様とマド君が動きを止めた。

2人は体力があるようで、汗はかいても息は上がっていないようだ。


「なんかこの歌とダンス、お前がやってたのと違うみたいだけど、いいのかよ?」


 今練習していた、力強いアクションが多めのダンスに、マド君が疑問の声を上げた。


「端的に言うと、前に私がやってたのは、女の子が可愛いアピールするものだけど、そうしたい?」


 細かく言うと勿論色々表現しているものはあるんだが、わかりやすく私はそうマド君に説明した。

 

「いや、わかった……」

「思い返せば、そうか……」


 彼は苦虫を嚙み潰したような顔をした。その横で、同じ曲を練習中のアセ様も難しい顔をした。

 先生が、興味深そうに聞き耳を立ててますよ。


「はっ……黙っていれば、そのまま行けた……?」


 その発想はなかった。いやでも、どうなんだろう。

 ……ありかもしれない。アセ様はちょっと高身長でかっこいい系で、ビジュアル的にはあってない気がするので、あれかもしれないけど、やって貰ったらもしかしたら良い可能性はあるし。

 アイドル曲と言っても、中には男性カバーバージョンがある曲だってあったし……。

 何より推しの可能性はいつだって多くていいのだ。いいぞもっとやれ。

 一瞬でそこまで思考した私は、取り繕って満面の笑みを浮かべて、


「2人とも、持ち歌を増やすために、私が歌ってたやつもやっとく?」

「いや、その流れで無理だろうがよ!?」

「私も遠慮しておこう。今はこの曲に集中したいしな」

「ちぇ、ダメかぁ」


 次は覚えておこう……いつかしれっと入れてやるんだ。

 それにアセ様は言質とられないためにそう言ったのかもだけど、その言い方なら今の曲覚えたらやってもいいとも取れるんだからね……。レコードに録音とかすべきだったか。


「何か不穏なことを考えている気がするな」

「あぁ。だんだんプロデューサーのおかしな思考に慣れてきたぜ」


 ちょっとがっかりしている様子の先生とアイコンタクトして、いつかきっと! と2人で企む。


「そういえば、音楽をつけたい、という話があったが、それはどうするんだ?」

「んー衣装と演奏に関しては、まったく目途が立ってないんですよね。最悪、アセ様とマド君のライブの反応を見て、声をかけようかと……」


 音楽と衣装に関しては、友人もおらず、どうしようかと密かに思っていた。

 私がやったライブは人が少ない中でやっていたし、ライブをしながらそういった反応を見るのは難しいので。それでも、噂になるほど反響はあったので、興味を持ってくれそうな人はいる、と思いたい……。


「……では、同僚に声をかけましょうか?」


 と、先生が私たちに声をかける。この鶴の一声で一気に事態が変化した。


 部室としてしっかりと借り受ける形となった自習室。すっかりイツメンのたまり場となっていた自習室改め部室だが、そこに3人の教師の顔があった。

 男子3人は先生らと話す間、手が空いてしまうのでランニングや筋トレなどの体力トレーニングをお願いしておいた。プル君は今のところ関係ないけど、同じ部活仲間ということで、マド君に連れられていってしまった。


「どうですか? 噂の神事を聞いた感想は」


 そう切り出したのは担任兼部活の先生、ディザ・ラリーダ先生だ。

 3人の先生は、集めた机の中央に鎮座する、スライムレコードを囲んでいた。

 プル君がちゃんと作ってくれた、魔力で稼働し続ける試作一号である。流している曲は当然、補習の際にアセ様が記録していた私の歌声である。


「あっはははは! いい! 若いな、感性が! 神事は退屈だと思っていたが、後悔しているよ。こんな興味深い対象があったとはね!」


 眼鏡をかけ、長い髪を適当に後ろで束ねた女性が笑っていた。教師っぽくない容姿を気にしない見た目をしているが、彼女は学園の音楽教師。ラリーダ先生の同僚の一人、スピレ・ポジック先生だ。


「まぁ、こんな魔道具ができていたなんて。それに、歌に合わせて踊るのでしょう? とっても楽しそう」


 ゆったりとした口調でそう言ったのは女子にマナーや刺繍を教えている先生。ブローエ・ラブック先生だ。細い目が特徴的で、ウェーブかかった長髪。心なしか、先生の中でも立ち居振る舞いがゆったりして、優雅に見える。

 ラブック先生はスライムレコードの側に置いてあった羊皮紙を手に取る。

 それは前世で見たアイドル衣装、貴族が着ていてもギリギリよさそうなものを選んで描いた3面図のラフスケッチだ。


「男の子の衣装も素敵ですけど……わたくし、シャーディさんの考えるお洋服、もっと見てみたいわ?」


 と言われたので、ライブ曲を聴いて、先生が3人で話している間、私が着るかもしれない女の子アイドル衣装を量産中である。シルエットや細部の状況が簡単にわかればよい、ということなので、ラフスケッチでわかりにくいところは注釈を入れたりする。

 

「ふふふ。どれも素敵。絵もお上手ね」


 出来上がったラフを見ながら、ラブック先生が満足そうに羊皮紙を眺め、時折呟いている。


「この辺りのデザインは、社交では少し、品が問われるかしら?」


 私に聞かれた様子ではなかったので、黙っておく。

 宗教や社交的にNGなデザインがあるらしく、そういった細かい点を加味しつつ、私のデザインと折衷していくようだ。そこは私がやると確実に社交や宗教的に禁忌とかわからず踏み抜きそうな地雷なので、完全丸投げするつもりである。


「シャーディくん。この曲の楽譜は?」

「すみません、作成してません。それに、合う楽器の選定も……」


 もしも出来合いの曲ですと答えると、どこにあるもの? と聞かれて困るので、オリジナル曲としておくことにした。楽譜に関しては前世でも持っていたものの方が少数で、買ったグッズに特典がついてた、とかでなければ追っていなかった。


「ふぅん。なるほど。いや、ならいい」


 ポジック先生は細かいところには興味がなかったらしく、突っ込んではこなかった。


「歌詞はこの歌と、男子の分全部用意したまえ。楽譜と楽器に合わせた曲の調整は私がやる。下手に楽譜があれば、私のひらめきが死ぬ」


 言いつつ、もうすでに予備で置いてあった羊皮紙に筆を走らせ始めたポジック先生。


「いいなぁ、2人はお手伝いできることがあって……」


「何を言ってるんだ、言い出しっぺの一人が。お前はダンスの指導でもすればいいだろう。無駄にいい運動神経を余らせるんじゃない」


 ポジック先生が羊皮紙から顔をあげずにそう言って、ラリーダ先生がはっとした顔をする。


「そっか……! そうね……!」


 そういうことで、我がアイドル活動部は、ダンス、衣装と立ち居振る舞い、音楽全般に先生がつくということになった。ふーん、担当トレーナーさんだね! 心強い!

お読みいただきありがとうございます。

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