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異世界貴族アイドル☆プロデューサー! ~地味令嬢の私は、わけあり男子を推して参る~  作者: フセ オオゾラ


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第21話「6枚羽根の精霊」

 屋根のない2階席から、催事場を見下ろす。

 会場のイメージに近いのは野球のスタジアム会場だけど、木と積み上げられた石でできた建築物を見ると、なんとなく前世の教科書なんかで見たローマのコロシアムなんかを彷彿とさせる。

 そのコロシアムみたいな構造物の中央には祭壇が存在し、そこが今回神事を行う舞台となるんだろう。


「ちょうどいいタイミングだったかもな」


 マド君の言葉通り、ほどなくして席は埋まっていき、2階だけでなく1階席も満席になった。

 いよいよ始まるなーとなると、何となくそわそわしてくるのは前世から変わらずだ。

 ライブが始まる前とか、映画の前とか、スポーツが始まる前みたいな期待感に満ちた時間。


「あ、始まるね!」


 建物の一角から、祭壇に向かって、祭事服を着た大勢が進み出た。

 最初に祭事を行うのは学園生であることが通例のため、出てきたのは当然学生ら。

 それに続いて、豪奢な祭事服を着た老人が、しずしずと祭壇に向かい、そのあとをこれまた位の高そうな祭事服の人らが続く。

 一番豪華な服を着たのが王様だ。そして、その後ろを大司教が続いている。

 

 王様が祭壇上でマイクを取った。


「余がこの国の王、インクルである!!!」


 会場に複数設置されていたのであろうスピーカーから、王様の声が爆音で響いた。

 私を含めて何人かがびっくりして耳を抑える。


「王様……少し、少しお声を抑えて……強化されなくても大きな音がでますので……」

「ん? おお、そうであったか」

 

 そうだった、マイクはまだこの世界にできたばかり。王様も魔法で強化して声を大きくするのがこれまでは普通だったのだろう。


 耳を抑えた大司教の声がマイクを通して聞こえ、王様の声もすぐに抑えめで聞きやすい音量になった。


「諸君、すまなかったな。新しい魔道具の性能がこれほどとは。余の声が皆に届きやすくなり、余は嬉しく思う!」


 偉丈夫という言葉が似合う王様は、壇上で手を広げ、宣言した。


「これより例年通り催事を執り行う! 長い話はなしだ! みなも楽しんでくれ!」


 王様の手短すぎる宣言が下され、混乱していた会場から、わっと歓声があがる。

 王様は満足そうに頷くと、マイクを大司教に渡す。

 用は済んだとばかりに王様は壇上を去り、その後はマイクを受け取った大司教の進行で祭事が始まった。


「──では、始めに、学園の生徒による神事から奉納を行います」


 壇上に上がり始める学園の生徒たち。数が多い。

 てっきり数回にかけて行うのかと思ったのだが。


「あれ?」


 そして、その異変にすぐ気づいた。


「なんか、違くねーか?」 


 マド君も気づいたようだ。

 ミラース嬢を中心に、合唱でも行うような配置。


「私たちは皆様に新しい神事をお見せしたいと思います。そして、今日この日の神事を通して、この地に長く封じられた瘴気の元を断ちたいと思います」


 予感が的中してしまった。

 マイクを手にしたミラース嬢がそう宣言した。

 会場がどよめく。そんなことが可能なのか? と懐疑的な空気だ。


「では、始めます。……~~♪」


 先ほどの予感はあたったようで、始まったのはミラース嬢を中心とした歌唱だ。

 マイクから拾われたミラース嬢の歌声が、会場の至る所に設置されているらしいスピーカーから流れ出す。

 また、ミラース嬢を盛り立てるようにアセ様を含む各員がハミングやボイスパーカッションをつけ、オーケストラのような複雑な音楽を奏でる。


 会場の変化はすぐに訪れた。屋根のない会場の上空に精霊たちが集まってくる。


「ライブ形式でも、これくらい集められたろ……」


 マド君がそう不満を口にしていた。私も、恐らくマド君の隣に座っているプル君も聞こえていただろうが、大人しくミラース嬢の神事を見守る。

 不穏な空気で始まった神事であったが、会場のどよめきは神事が始まるとすぐに収まり、今はミラース嬢の歌声に陶酔しているようだ。


「ここまで仕上げてきたのは、純粋にすごいね」


 ちらりと見ると、マド君はむすっとしている様子だったが、プル君は感心したように聞き入っている。

 私は集まってきた精霊の反応はどうなんだろう、とふと気になった。


(ライブで盛り上がった時は、会場が震えるくらい盛り上がったりしたけど……)


 聞き入るほどに大人しいんだろうか、そんな風に見上げてみたが、私は異変を感じた。


「なんか、元気ない……?」


 聞き入っている、とするとリラックスして大人しい感じだが、私が見えている範囲の精霊はなんというか、緊張して、硬直している? ような、不思議な様子だった。


(ミラース嬢を、警戒してる?)


 そんな考えが頭をよぎり、ミラース嬢を見る。歌唱はちょうど、盛り上がりを見せているところだった。

 ミラース嬢の背後から光が伸びる。魔法による演出か? と思ったが、どうやら違うらしい。

 伸びた光が収まると、一体の精霊が姿を現した。


「契約精霊……?」


 プル君の呟きで、なるほどと思う。そういえば、ミラース嬢は精霊と契約を交わしたと言っていた。

 ミラース嬢の契約精霊らしいその精霊は、見慣れた精霊とは逸脱した姿形をしていた。

 デフォルメされた人型であるのは他の精霊と同じなのだが、背中には六枚の羽根が生えており、光を纏っていて一見すると神々しく見える。だけど。


(なんだろ……中身と外見がマッチしない?)


 そんな風に違和感を覚えた直後、頭の中に不快感を感じる声が響いた。


『ご苦労様……ここまで順調にいくとは、思わなかったよ』


 精霊の能面のような顔が横に割れ、にやりと邪悪な笑みに歪んだ。

 その精霊が姿を表した途端、会場に集まっていた精霊たちが、一斉に騒ぎ出した。

 大きく分けて2つ、逃げようとする精霊と、ミラース嬢……正確には、彼女の頭上で輝く6枚羽根の精霊に向かって、攻撃しようとするもの。

 火、水、風、岩など精霊たちが放った魔法が奔流となって学園の生徒らが集まるステージを襲う。


「!」


 私は突然のことに息を飲むが、ステージ上は穏やかなものだった。

 6枚羽根の精霊が精霊たちの魔法を光の壁で防いだ。ドーム状になった壁が魔法を受け止めているが、びくともしない。

 ステージ上の学園生たちは驚いて歌唱を止めて固まっていた。ミラース嬢もだ。


『無駄な抵抗だね』

 

 6枚羽根の精霊は余裕の笑みを浮かべたまま、両手を今なお魔法を放出し続ける精霊たちに向けた。


『君たちには、ボクの支配を受け入れてもらうよ』


 その瞬間、6枚の羽根から、一斉に光る根のようなものが伸びた。

 精霊たちは攻撃を止め、根から逃れようと飛び回るが、根の方が動きが速く、複雑で、あっという間に突き刺されてしまう。刺された精霊は手足が脱力して、動かなくなった。


「な、何をしているんですの?!」


 目の前で起きた現実に呆然としていると、スピーカーからミラース嬢の困惑した声が響く。


『ああ、まだ居たのか。ご苦労だったね。君の役目は終わりだよ』

「な、何を言って……この神事で、瘴気に怯えずに済む世界を作れるんだって……!」

『くくく……そうだよ。君たちはもう、瘴気を気にする必要なんて、ないんだ』


 契約精霊だと聞いていたが、どうもミラース嬢と6枚羽根の精霊の会話が不穏だった。


『あの方が復活すれば、君たちは滅ぶんだから』


 6枚羽根の精霊が片手をあげる。


「あっ……」


 すると、ミラース嬢が握っていたマイクが彼女の手を離れ、宙を浮く。


『始めようか。復活のための第一歩だ』


 精霊がそう宣言すると同時に、根に繋がれたままの精霊たちが身を捩り、身の毛がよだつような絶叫を上げた。


『きぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁ!』


 空気ではなく精神を震えがらせるようなその絶叫に、ここまで呆然として、ただ成り行きを見守っていただけの観客たちが恐慌を起こした。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたらなら、高評価、ブックマークなどお願いいたします。


11月の半ばから風を引いたり、全く別の賞関連の準備など行っていたらこちらの更新が止まってしまいました。

またペースをある程度戻せそうなので、完結までがんばっていければと思っております。

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