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異世界貴族アイドル☆プロデューサー! ~地味令嬢の私は、わけあり男子を推して参る~  作者: フセ オオゾラ


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第20話「年末催事まで」

「我々の手で、瘴気の元を断ちましょう」


 ミラース嬢の夜会での言葉。この宣言から始まった年末行事へ向けての練習は、非常に緊張感のあるものになっていた。

 契約した精霊をいつでも呼び出し、人間が起こして欲しい内容を伝え、対価をもって精霊の力を行使してもらう。

 人間と違い、断片的にしか聞こえない精霊の意識と交信するのは難しく、さらに何を対価にするかは契約した精霊によるため、扱いが難しい。


「……」


 私も契約した水の精霊と交信するために、何度かチャレンジしていたが、一向に成果があがらずにいた。


 自分が行う予定だった神事の内容も大きく変わっていた。

 当初はそれぞれが選抜試験で行った神事を仕上げ、年末催事にて披露する予定だったが、ミラース嬢が推し進めている形式の神事へと変わり、選抜メンバーは全員、選抜試験での実績がある彼女を中心に据え、神事を万全なものにしよう、という形に変わった。


 当然不満はある……しかし、他国の王族である自分が、この国のやり方に口を出すのは阻まれたため、不満を飲み込み、指示に従うことにする。

 ただ、それはこの国で力を示すことができない、自分への言い訳だという自覚もある。

 もし現状で、シャーディ形式で推し進めたい、という主張をするためには、自分のライブが精霊を動かすものに足るものである、と証明しなければならない。しかし、自分では多少の精霊を喜ばすことはできても、会場全てを震わせるほどに精霊を集めることはできないし、契約した精霊に言うことを聞いてもらうこともできない。


「なんのために、私は……」


 思わず漏れた呟き。その呟きを、自分が契約した精霊が聞いていた。

 年末催事はすぐそこまで迫っていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 


 期末テストも終わり、最近の学園は浮かれている、と私は感じている。

 イベントが始まる前のそわそわしているような感じか。控えているのが年末催事と冬休みでもあるので、そこかしこで今年の冬休みはどうする? という会話が聞こえてくる。

 

 一方で、催事を控えた選抜メンバーはピリピリしていた。

 教師が付きっ切りでマナーを教えたり、本番のリハーサルを行い、神事の内容を磨いたりと忙しいみたいだ。公開して練習していないので、みたい、ではあるのだけど。

 アセ様はそのせいで最近は授業前後に軽く挨拶を交わすくらいで、姿を見かけない。

 

 そんな年末に向かっている学園の様子を見送りながら、私は部室へと向かった。


「テスト、お疲れ様でしたー!」


 私、マド君、プル君は三人でささやかな打ち上げをするため集まっていた。

 乾杯のジュース……は無いので紅茶とちょっとしたお菓子(自作クッキー)を広げている。

 アセ様は変わらず年末に向けての練習などがあるようで、テスト期間中も他の選抜メンバーと一緒にいることが多い。


「いやっと終わったー!」 


 マド君が解放された喜びを両腕をあげて現していた。


「テストは大丈夫そ?」

「手応えはあったと思う……プロデューサーのおかげだな」


 私の返答にも問題なさそうなので、少なくとも、強がりで言ってるわけではなさそうだ。


「プル君の方は? テスト期間中だけ?」

「こっちもひと段落づいで、何どが~。テストのためさ時間貰えだのも助がったぁ」


 プル君の方は一足先に準備が終わったらしい。また、学校の行事であるテストに合わせ、解放してもらえたようだ。残りの対応は担当の大人がするみたい。


「よかったね~じゃ、年末はのんびりできるんだね」


 クッキーをかじりながらそんな風に話していると、マド君もクッキーに手を伸ばしつつ、思い出したように切り出した。


「そういえば、プロデューサーは最近、何してんだ?」

「私? 私は年末の準備!」

「準備たって……」


 マド君が少し言葉を濁す。選抜メンバーでもない限り、年末は暇である。それはそうだし、人も集まってないので、個人での練習は置いとくにしても、全体の練習や、新曲の練習なんかも特にしていない。


「他にもやりたいことを思い出して! いやー、ほんとはね、選抜メンバーの配布イラストとか、ライブTシャツとか、うちわとか色々やりたかったんだけど……!」

「???」


 マド君が困惑したのをみて、ハッとする。

 いけない、この世界にはそんなものはなかった。ちょっと抑えきれないものが漏れてしまったらしい。


「許可が降りるかわからないし、今はいったん新しい魔術を作ろうと思って」

「なんでだよ。今のを何がどうしたら魔術を作ろう、ってことになるんだよ」

「相変わらず突飛だなぁ……魔術なんて、簡単さ作れるもんでもねぇだよ」

「もちろん、というか、魔術って言ってもそんな難しいものじゃないよ。光ったりするだけだし……」


 魔術の開発! というと既存の魔術を最適化したり、新機軸の魔術を作ったりととても難しそう、というか専門の魔術師が年中頭を捻ってようやく出てくるようなものだと思う。

 当然というか、私には無理。

 

「ほーん? どんなもんなんだ」

「二つあってー、一個はすぐ出来そうだし、マストで用意したいんだよね。もう一個は難しいけど、今後のライブにもあったら面白いかなーって」


 私は机に、イラストを用意していたので開発中の魔術について書いた羊皮紙を広げた。

 マド君とプル君がそれをのぞき込む。


「へぇ、そしたらおらも手伝うだよ」

「お。いいな。オレも混ぜろよ」

「ほんと? そしたら手伝ってもらおうかな」


 正直助かる。魔術を作っても広めたりするのに時間がかかったりするしね。


「マストって方は確かにな……既に形になってね?」

「もう一個の方は、何が簡単だぁよ!?」

「えぇ、そうかな……」

「魔道具とかにできねーの?」

「マストってのは簡単、つーが、既存の魔道具のアレンジでもいげる。んでも、もう一個の方がなぁ……」

「わ、私もアイデアもっと出すから!」


 そういって、三人でわいのわいのと年末行事向けの魔術開発に勤しんだ。

 

 すぐに完成した私が優先度をマストとした魔術は、魔道具化する材料がなかったため、マド君とプル君を中心に魔術の概要と使い方を説明し、クラスを中心に広げてもらうことにした。最近はミラース嬢の人気がうなぎ上りになって落ち着いてしまったが、一度は上がった2人の知名度を利用した作戦である。


 年末催事までの期間はあっという間。

 いつも通りに過ごしていると、年末催事の日の朝を迎えた。


 祭事服ではなく、制服を着て、さらに上着を羽織って寮を出て、待ち合わせの学園の入り口に向かう。


「ごめーん。2人とも待たせた?」

「はよー。プロデューサー。オレらも今きたとこ」

「おはようプロデューサー。今日は冷え込むなぁ」


 待ち合わせていたのはマド君にプル君だ。3人揃ってアセ様を応援しようと集まっていたのである。年末催事は一般の生徒的には祝日であり、特に集まって行動などもないので、私たちは会場の込み具合なんかを予想しつつ、早めに行動を始めることにした。


「おはよ! 寒いねー。吐く息も真っ白!」

「歩いてればそのうちあったまるだろ。催事場付近に出店もあるだろうから、そっちで暇つぶそうぜ」

「んだ。そうすっぺ」


 すぐに3人意気投合し、出店に向かう。3人で食べ歩きしたり、遠方の観光客の入りを見込んだ露店のお土産なんかを冷やかしながら暇を潰した。


「そろそろ移動するか? 早めに移動しておかないと、良い場所が埋まっちまう」

「学園生は場所が決まってるとはいえ、早いもの勝ちだもんね」


 催事場の入り口で受付を済ませると、学園で見たことはないが、腕章をつけている教師らしき人物に声をかけられた。


「学生は2階の席にいくように。くれぐれもトラブルは起こすなよ」


 3人であちこち物珍しく見ながら、案内された席に向かう。

 催事場は教会関連の施設のため、中は非常に精巧な壁画やステンドグラスがあり、それらに目を奪われそうになった。

 一際目に付くのは、地面の奥に封じられる女神のような姿をした存在と、封印を成している四体の精霊だ。精霊は頭に王冠のようなものをつけているように見えた。


(なんだろ。神様……に精霊?)

「おーい、そっちじゃないだろ?」

「あ、うん!」


 マド君に声をかけられた私は、見入っていた壁画から目を離して、2人に合流した。


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