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異世界貴族アイドル☆プロデューサー! ~地味令嬢の私は、わけあり男子を推して参る~  作者: フセ オオゾラ


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第10話「お披露目会まで」

 放課後、ラリーダ先生を探していると、学園の廊下の先、遠目にポジック先生と話し込んでいるラリーダ先生を見つけた。


「う~ん、君、音楽準備室のレコード盤を触ったか?」

「いいえ、準備室なんて用事もないから……」

「そうだよなぁ……最新の魔道具で鍵をかけているし、私くらいしか入れないはずなんだが。どうにも物の配置がおかしくなっている気がして……」

「おかしいも何も、そもそもあの部屋はゴミ屋敷みたいになっているじゃない」

「あれは効率的な配置さ。私の手が届きやすい場所に全てのものがある」

「そんな様子だから生徒からも先生らからも苦情がくるんですよ……? いい機会です。片づけましょう」

「やめたまえ! あそこは私にとって、神聖な場所なんだぞ!」

「神聖ならなおのこと、ちゃんと管理なさい!」


 話の内容は聞こえないが、喧嘩している……? でも、仲が良さそうなので、いつもあんな感じなのだろう。


「あ! オースターくん、何か用があるのではないかね?」


 ラリーダ先生にすがっていたポジック先生に見つかり、こちらに声をかけられた。いや、ラリーダ先生に用があるのはそうなんですけど、別に急ぎじゃないんですよね。

 そう思いつつ、2人に近寄る。


「いいんですか? 何か大事な話だったんじゃ」

「いや! 大事な生徒の話を聞くのも、先生の仕事だからね! そうだろう!」

「あなたは片づけを後回しにしたいだけでしょうに……それで、オースターさんはどうかしましたか?」


 特に問題がなければいいか。私はラリーダ先生に、先日男子3人と話した異種対バン……もはやお互いにバンドですらないが……を相談しようと決める。


 部室に移動し、ラリーダ先生にお茶を用意してもらい、ポジック先生と一緒に話を聞いてもらう。


「それはまた、随分と思い切ったことを考えましたね……」

「君は面白いことを考えるねぇ」


 ラリーダ先生の第一声がこれだった。ポジック先生は楽しそうだ。


「しかし、お披露目会であなた方のライブを披露することに、問題はありませんよ」

「え! そうなんですか」

「あの会の主催は学園にあるからね。題目を決めるのも学園側さ」


 ポジック先生がそう補足した。なるほど、生徒の発表会だし、噂の聖女本人か、生徒会が主催しているのかと思っていたが、学園側の催しらしい。


「元々の目的は地方巡礼の慰労と、そこでどういったことをしたか、という、学年別の情報共有会でもありますので」


 研究発表の場、みたいな感じなのだろうか。確かに、場所ごとに問題になる点は違うだろうし、その問題に対してどう取り組んだか? といった情報は色々と参考になりそうではある。

 砂糖をたくさん紅茶のカップにぶち込んでいくポジック先生を睨みつけつつ、ラリーダ先生が話を続ける。


「それがこれまで機能していなかったのは、ただ単にここ数年大きな変化がなかったため、慰労と社交だけで済まされていただけです」

「学園発足当時は、今よりも情報共有する場が少なく、重宝していたそうだが……時代と共に形骸化してね。ここ十数年は、どこも披露する成果もない」


 2人の先生の説明になるほどと納得する。


「今回の件では、村の再建に関して私も色々と理事長や校長から確認が来ておりましたし、説明を省けていいかもしれません」

(学園か聖教が諦めてた場所なら、なんで復活した!? って驚くか……)


 どうやら先生は村の件で詰められていたようで、不満がちらついているようだ。


「これで復活しました、としっかりと見せておきましょう」

「あんまり目立ちたくはなかったですけど、そろそろ難しいですか」

「そうですね。接触しようとしてくる人間を全て遮断するのは難しいでしょうね」


 アイドル衣装を着ている時は変装レベルで化粧をしているので即座に私と結びつける者はまだいないかなと思うが、それでも、アイドルをしている私の身の回りを探ろうとするものはでてしまうか。

 目立ちたくないのも、余計な勧誘や声掛けが面倒、くらいの理由ではあるし……。完全に隠すのはここらが限界なのかもしれない。


「わかりました。実在を疑われたり、嘘つき呼ばわりされるよりはいいので。喧伝はしませんが、隠すのはやめにします」


 私はそう納得することにして、直近の方針を固めた。


「喧伝……しないで済むといいですが」


 ボソッとラリーダ先生が言った。し、しませんよ。少なくとも私は自分で言いふらしたことはないですよ……。

 ポジック先生が紅茶のカップを手にしながら、私に応援の言葉を投げかけた。


「応援しているよ。それと……理事長には注意しておくといい」

「……? 理事長、ですか。わかりました」


 私は首を捻った。理事長、って誰だろうな……見たことないかも。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 生徒会室で、アーティ・ルミナス王子がふと思い出した様子でそう口にした。

 決済書類にペンを走らせていたわたくしは筆を止め、王子に向き直る。


「君の父上……理事長からの要望だったか、お披露目の準備は進んでいるのか?」

「ええ。万事滞りなく」

「流石だな、ジェーン。それでこそ、未来の王を支えるにふさわしい」


 彼の婚約者である私こと、イマージェン・ミラースを王子は2人きりの時、そう呼ぶ。

 王子はわたくしに近づき、額にキスを落としてきた。わたくしは少し浮ついた気持ちでそれを受け入れる。

 少しでもこの気持ちをお返ししたくて、わたくしは王子が喜んでくれそうな話題を口にする。


「ちょうど面白いものも手に入りまして。王子も喜んでいただけるかと」

「そうか。楽しみにしていよう」


 王子が笑顔を浮かべる。


「すまない。もっとこうして君と話していたいが、そろそろ王宮に向かわねばならない」

「いえ、わたくしのためにこうして時間を割いていただけること、嬉しく思います」


 王子が生徒会室を出るのを見送り、わたくしは机の中から羊皮紙を一枚取り出す。

 それは、今回の地方巡礼での同期たちの活動報告であった。


「噂の聖女かしら。しかし、本物は一人で充分……お披露目が楽しみね」


 今回の巡礼で、わたくしは聖教の膝元にて、その実績を示した。

 噂にあった神事の内容をわたくしなりに嚙み砕き、それを実践した結果である。これはもう覆しようがない。

 わたくしは約束された未来を思い、笑みを浮かべた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 お披露目まで、私たちは特にアクションを起こさず、部室でダンスや歌の練習をして過ごした。

 推したちが目の前で頑張っているのを間近で見れてとても満足である。合わせて自分も練習しないと、引き込んだ手前、面目が立たないので、私も頑張っている。

 魔力で身体を強化できたり、前世よりも若いのか、スペックがそもそも高いのか、非常に思い通りに動く身体なので、純粋に前世で覚えたオタ芸だとかダンスだとかがやりやすくて楽しい、というのもあった。


「は……! お披露目会って、ドレスコードって何かあるのかな!?」


 お披露目会なんて社交の延長、ドレスが必要なんじゃ!?

 と思い、用意しないと!? 時間がない!? と一瞬焦る私だったが、


「平民もいるからな。社交用のドレスを着て行っても問題はないが、制服か、祭事服の方で大丈夫だ。派手なドレスだと自己顕示欲を疑われるな」


 え……! 貴族なんて自己顕示欲が服を着て歩いているようなものなんじゃ……! と思ったがそういうものなのかと納得しておく。

 自分も一応貴族の端くれではあるが、辺境の木っ端なもので、実家ではそうとわかる生活をした記憶もない。中央貴族への偏見なのかもしれない。


 一人づつダンスの練習をし、プル君のダンスが終わったところで声をかける。


「プル君はお披露目会がちゃんとした初の本番になりそうだね。仕上げはどう?」

「い、今がら緊張してぎだ……」


 かなり仕上がってるとは思うけどね。本番はどれだけ練習しても、ミスするときはするし……10やった練習の1しかでない、なんて言うしね。こればっかりは本人の胆力しだいかも。


「この前だって緊張しつつもできたじゃねーか。そんなに気になるなら、無意識に刷り込むしかねーな」


 マド君がそう言って、ダンスを始める。


「親父がよく言ってた。武術なんかではよ……」


 前回の村での本番を経験したマド君のダンスのキレは一層増しているように見えた。


「頭で考えながらやってるうちは半人前、技の出来は半端、なんだ! 技は出すんじゃなく、思わず出てた、が理想なんだよ!」


 アセ様がマド君の言葉に深く頷いていた。


「達人の言葉には、含蓄があるな」

「おらも、身体さ覚えさせる!」


 2人が堪えきれなくなったか、マド君の横でダンスの練習を始めた。そんな様子を私と先生は見守っていた。


 お披露目まで残り僅か。私たちはできることをして過ごした。


お読みいただきありがとうございます。

お楽しみいただけたでしょうか。

先が気になる! 面白かった! など思っていただけたなら、

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