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第6章 リュミエール・ゲートの誓い


白銀に輝く宇宙の闇を裂いて、《リュミエール・ゲート》が開かれる。

その光輪は、世界の境目をなめらかにゆがめ、まるで星々が誕生したあの“はじめの夜”そのもののようだった。


ルキア・ノクスはサイレント・アーク号の前甲板に立つ。傍らに、トゥーレと、仮面を脱いだ少女アーデル――二人の同志。

彼らの息遣いが、宇宙の無限の静寂にとけていく。


「ルキア、もう恐れることはない。君の“名”は、今の君の光だ。」


トゥーレの声が静かに響く。


アーデルは赤い双眸で彼を見つめ、「この門の先には、私たちすら知らない危険と、運命が待っている。でも、わたしも一緒だよ」とほほえんだ。


― ― ―


《リュミエール・ゲート》はゆらぎながら、銀の霧を辺りに散らしていく。門の中心には、うっすらと新しい銀河、まったく未知なる地平が映し出されていた。


「――行こう。」


銀色の魂の書を胸に抱いて、ルキアは一歩を踏み出した。ゲートの光が彼の身体を包み、世界が澄んだ色に溶けていく。



そこは、見たことも無い星々が渦を巻く新宇宙だった。


鮮やかな青と深い紫の天蓋が広がり、各所に浮かぶ無人の大地、螺旋状に重なり合う島々、流星がまるで呼吸するように空を流れる。音のない風が船をそっと撫で、どこまでも広がる可能性の匂いがしている。


「ここが……誰も名を知らぬ銀河……」


ルキアの声は、自分でも驚くほど強かった。


そのとき、船のマストに奇妙な光が集まり始める。光粒の集まる中から、不可思議な生命体が現れた。透き通った羽を持つ、小さな宇宙蝶。見る者の心を覗くような、無垢な瞳。


「旅人よ、ようこそ。

ここは《名なき宙庭ソラノニワ》。

“星の名”を求めてやってきた者、昔から……待っていた。」


ルキアは、何かが確かに変わり始めていることを感じた。

名を持ち、名を求め、人々の縁が旅を導く。

自分が、自分のままで、未知へと足を踏み入れられること――


アーデルとトゥーレもまた並び立ち、それぞれの輝きを胸に、この新世界を見つめている。


「まずは自分の“名”をここで告げるのです。それが、この世界にあなたの存在を刻む第一歩。」


宇宙蝶の声は、優しく広がった。


ルキア・ノクスは、静かに未来を見すえ、誓いの言葉を口にする。


「僕は、ルキア・ノクス――

闇に生まれ、朝を求める者。

この銀河で、新しい自分の物語を刻む。」


光が穏やかに辺りに満ちていく。

“名”を胸に、仲間と共に歩み出す新たな時間。

夜明けの銀河で、物語がふたたび動き出した。

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