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影札商売  作者: To-Marigi
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久遠

地下神殿に渦巻く霊気は再び激しさを増し、押さえ込まれていた狂乱が牙を剥くように暴れ出していた。穏やかな調和の時は短く、まるでそれが幻であったかのように、辺りは再び異様な緊迫感に包まれている。


装置の中心では、覚醒した久遠が青白い霊気に身を包み、不吉な微笑を浮かべて立ち尽くしていた。その冷たい瞳には、符術に対する狂気的な執着と、深い悲しみが複雑に入り混じっていた。


「……すべてを浄化する時が来た」


久遠が低く囁くように言葉を紡ぐと、地下神殿全体が再び軋みを上げ、壁に刻まれた古代の符文が赤く禍々しく輝き始める。その霊気は神殿の壁や床を駆け巡り、地下空間を震撼させた。


春風は激しい苦痛と戦いながらも瑠宇に支えられ、必死でその異様な光景を見つめていた。呼吸は乱れ、体中が悲鳴を上げているが、それでも彼は目の前の惨劇から視線を逸らさなかった。


企業の探索隊員たちは恐怖に震えつつも身構え、神谷や佐久間は再び符を握り締めていた。誰もが理解していた――久遠の目覚めはまだ始まりに過ぎず、本当の危機はこれから訪れるのだと。


地下神殿の中心で放たれ始めた霊気は次第に巨大な波となり、制御不能なほどに増大していった。久遠の抱える符術への狂気が、今まさに江戸全体を飲み込むほどの災厄として形になろうとしていた。


久遠を中心に霊気が激しく渦巻き、地下神殿は再び混乱の渦中に叩き込まれた。青白い霊気を全身にまとった久遠は、冷たく微笑んで探索隊の全員を見渡した。


「お前たちは真の符術を理解しないまま、力に溺れただけだ。すべてを無に帰し、世界を原初の姿へ戻す……!」


久遠が掌を高く掲げると、青白い強烈な霊気が爆発的に放たれ、地下神殿の壁や柱が軋みながら砕け始めた。隊員たちはその衝撃に次々と吹き飛ばされていく。


「散れ!直接霊気を受けるな!」


蒼龍は即座に指示を飛ばし、久遠の攻撃を避けながら符を構え、力強い霊気で迎え撃つ。その横では瑠宇が符を握りしめ、必死に久遠の隙を狙って攻撃を仕掛けた。


「師匠、私が左から行きます! 合わせてください! 白菊も黄昏も関係ない、全員で久遠を封じろ!」


瑠宇の声に応じるように、佐久間がうなずき、隊員たちに鋭く指示を出す。


「白菊の隊員たち、黄昏と連携を取れ!我々に残された道は久遠を止める以外ない!」


黄昏通信の隊員たちも神谷の指揮の下、統率を取り戻して久遠への攻撃を再開する。


「霊気を集中させろ!防御結界を張りつつ久遠を追い込め!」


隊員たちの符が交錯し、地下神殿に激しい霊気の応酬が巻き起こった。だが久遠は、それらの攻撃を嘲笑うかのように、容易く払い除けていく。


しかし、久遠の霊気はあまりにも強力で、次々と隊員たちの防御結界を引き裂いていった。彼は苛立つように冷笑を漏らす。


「愚かな……。なぜこの世界に未練を持つ。符術に飲み込まれ、利用されるだけの虚しい世界だぞ」


蒼龍は冷静に久遠を睨みつけ、符を構え直した。


「久遠、お前こそ符術に飲まれ、道を誤っただけだ!力は人を守るためにある。その本質を見失ったお前に、この世界を壊させるわけにはいかぬ!」


蒼龍が激しい霊気の攻撃を放つと、瑠宇がそれに合わせて久遠の側面を突く。


「これ以上、春風を傷つけさせはしない!」


しかし、久遠はその攻撃を容易く払い除け、瑠宇を鋭い霊気で弾き飛ばした。


「瑠宇!」


蒼龍が即座に庇いに入り、二人は辛うじて致命傷を免れたが、膝をつき苦痛に呻いた。


久遠は冷たく見下ろし、さらに霊気を放ちながら語る。


「所詮は人間……符術を完全に操ることなど叶わぬ。私が世界を無に帰し、新たな秩序を築くのだ」


---


一方、戦闘の混乱の隙を縫うように、春風の傍らで神谷と佐久間が必死に治療を続けていた。春風がいまだ苦痛と霊気の逆流に苦しんでいた。意識が途切れ途切れになり、呼吸も浅く苦しげだった。


「春風君、目を開けろ!君が倒れたら全てが終わるぞ! 君の霊気を安定させるには、君自身が意識を保たなければならないんだ!」


神谷は霊気の調整を行いながら焦りを募らせていた。


「幽鏡水晶の調整を早めろ! 春風の霊気が暴走しかけている!」


佐久間も必死に水晶を操作し、春風の体を包む霊気の安定化を試みる。しかし、春風の意識は深い霧の中をさまよっているように見えた。


「春風! お前は僕らを救ったんだ!絶対にここで諦めるな!」


春風は苦痛の中、ぼんやりと瞳を開き、自分を取り巻く人々の真剣な表情を見つめた。


「……僕が、やらなければ……僕が止めないと……」


神谷は春風の手を握り締め、強く声をかけた。


「そうだ、その調子だ春風君。自分を見失うな!」


---



久遠は探索隊の抵抗に苛立ちを露わにし、さらに凄まじい霊気の波動を放つ。隊員たちの防御は再び破られ始めた。


「貴様らに私の悲しみが理解できるか?符術を極めるほど、大切な者を失った私の苦しみを!」


久遠の悲痛な叫びとともに放たれる霊気の力が隊員たちを次々に吹き飛ばし、蒼龍たちを追い詰めていく。

しかし蒼龍は立ち上がり、静かに久遠に語りかけた。


「久遠、その悲しみがお前を歪ませたのだ。大切な者を失った痛みを、他者に与えることで癒せると思うか?」


久遠は動きを止め、激しい怒りと苦しみが入り混じった瞳で蒼龍を睨みつけた。


「黙れ……!お前に私の何が分かる!」


その瞬間、久遠の霊気がさらに激しく爆発的に解き放たれ、地下神殿は崩壊寸前の激しい揺れに見舞われた。

久遠は激しい攻撃の中で、霊気の壁を悠然と作り出しながら、蒼龍たちを嘲笑った。


「見よ、この圧倒的な力を。お前たちがどれだけ束になろうと、私を超えることはできない!」


しかし蒼龍は久遠を真っ直ぐに見つめ返し、毅然と答えた。


「違うな、久遠。お前は符術の力に飲み込まれたに過ぎん。お前の持つ力に人の心はない!」


蒼龍が強烈な符を繰り出すと、それを合図に瑠宇が久遠の背後に回り込んだ。


「久遠、覚悟!」


瑠宇が符を振り下ろす。しかし、久遠は冷笑しつつ振り返り、霊気を放つと瑠宇を容易く弾き飛ばした。


「瑠宇!」


佐久間が思わず叫ぶ。瑠宇は壁に叩きつけられながらも立ち上がり、春風のいる場所に視線を送った。


「春風、お前だけが最後の希望だ……!」


その声を聞き、春風は朦朧とした意識の中で、自分が背負った力の意味を改めて感じていた。胸の奥から湧き上がる使命感が、彼を再び奮い立たせようとしていた。


「僕が……僕が……」

「そうだ、春風君。君が倒れてはならない。君の符術が我々を救う唯一の道だ!」


久遠の攻撃がさらに激しさを増し、蒼龍を中心にした隊員たちは後退を余儀なくされる。霊気の嵐が吹き荒れ、久遠の冷たい笑い声が響き渡った。


「全てを無に帰すする。愚かな人間たちが二度と符術に手を出せぬように!」


地下神殿は再び激しい霊気に覆われ、白菊と黄昏の隊員たちの符が弾き飛ばされる。

蒼龍は苦しみつつも再び立ち上がり、静かに久遠を睨みつけた。


「諦めるな!久遠の符術は霊気の集中で抑え込めるはずだ!」


瑠宇も蒼龍の傍らで立ち上がり、再び符を構える。


「久遠、お前の符術は間違っている!今ここで止めてみせる!」


その言葉に、地下神殿の探索隊員全員が再び符を握り締め、改めて久遠に立ち向かう覚悟を固めた。

一方で春風はまだ苦痛の中で横たわっていたが、その瞳には再び微かな決意が灯り始めていた。


「僕が……何とかしなきゃ……」


久遠との激しい戦いの真っただ中、春風の内に再び力強い霊気が芽生えようとしていた。

春風は朦朧とした意識の中で瑠宇の叫びを聞き、その呼び声に応えるように、ゆっくりと自らの霊気を制御し始めた。


「僕は……負けない……!」


神谷がそれを察知し、隊員たちに強く叫ぶ。


「皆、春風君に霊気を集中させろ!群耀の力を取り戻すのだ!」


探索隊の隊員たちは神谷の言葉に即座に反応し、符を構えて春風を支えるように霊気を送り込んだ。


佐久間もまた決意の表情で幽鏡水晶を操り、春風の体内の霊気を徐々に整え始める。


「春風君、立ち上がれ。君なら必ず制御できる!」


久遠はその状況を冷たく眺め、嘲笑するように告げた。


「無駄だ。この符術はお前たちの力では制御できぬ!」


だが春風はその言葉に怯まず、薄れゆく意識の中で強く自らを奮い立たせた。


「違う……あなたが言う通り符術は怖いかもしれない……でも、それを使う僕らの心次第で……人を救う力にもなれるんだ!」


春風の言葉は地下神殿に静かに響き渡り、その場にいた全員の心を揺さぶった。霊気の波動が再び春風を中心に広がり始め、群耀が再び輝きを取り戻そうとしていた。


蒼龍はその光景を見つめ、静かに弟子に語りかけた。


「よく言った、春風。それが符術を学ぶ者の正しい道だ」


久遠は冷笑を浮かべつつも、その眼差しには明らかな焦りが浮かんでいた。地下神殿の中、符術の真理を巡る最後の攻防が激しく展開されようとしていた。

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