第九話 怪奇現象の真相
「……あ! あの時の迷子で泣いていた男の子!?」
小さい頃の記憶を思い出し、私は叫んだ。改めて雷神の顔を確認すると、見覚えのある金色の髪と瞳である。雷神だから金色を主張しているのだろうか。
「うぅ……そうです……」
「ん? 貴方は雷神で神様でしょう? なんで現世の公園に居たの?」
私の発言を聞き彼は肩を落とした。これ以上は虐めているようだ。私は壁から手を離すと、彼の前に座る。そして浮かんだ疑問を口にした。
「人間の生活を勉強する為に、兄上と出掛けたら逸れて迷子に……」
「あれ? ……そういえば、お兄さんに会わせた記憶がないけど?」
視線は合わないが、雷神は私の質問に答えてくれる。
成程、神様は現世と異世界を行き交うことが可能のようだ。兄弟が居るとは初耳だが、私は彼のお兄さんを見付け引き合わせ覚えがない。小さい頃の記憶だから曖昧なのは仕方がないが、雷神の手を掴もうとして視界が白くなったところまでしか記憶がないのだ。不可解である。
「うっ! それは……僕が力の加減を間違えて……君に雷を落としてしまって……」
「嗚呼、だから覚えていないのか……じゃない! え? 危ないじゃない!」
視線を泳がせながらも言葉を紡ぐ雷神。そうかそうかと、納得しそうになったが寸前のところで我に返った。覚えてなくて当たり前だ、雷の電流を浴びたのだ。生きていることが奇跡に近い気がする。思わず叫ぶ。
「……本当に……それはごめんなさい……あと、加護も迷惑になってごめんね……」
「……? 加護?」
雷神は気弱な性格なようだが、神様だからと謝罪が出来ないと主張する可能性も考えられた。しかしその心配は杞憂に終わる。私に雷を落としたことは反省しているようだ。謝罪を受けて、私も心に落ち着きを取り戻す。すると彼の言葉が気になり、首を傾げた。
「その……日常生活で人に接触すると電気が流れて弾くとか……機嫌が悪い時は空気が張り詰めるとか……あったでしょう?」
「わぁぁ……私が見舞われているのは、正にそれだよ! 加護じゃなくて怪奇現象だから!!」
全ての謎が解け、私は再び叫んだ。情緒不安定のように見えるかもしれないが、私は至って正常である。私は身近に起こる怪奇現象のおかげで婚期を逃し、会社でも肩身が狭い思いをしていたのだ。
その原因が判明し、諸悪の根源が目の前に居る。叫ばずにはいられなかった。