第八話 迷子との記憶
『こうえんで、あそんでくるね!』
良く晴れた日だった。私は元気良く、家を飛び出す。今日は日曜日だから幼稚園も休みである。友達と公園で遊ぶ約束が楽しみで仕方がない。逸る気持ちのまま、公園へと駆けた。
○
『あれ? まだ、みんなきてない?』
公園に到着するが、友達の姿はない。設置されている時計を確認すると、約束の時間よりも少し早く着いてしまったことが分かる。
『なにをしていようかな……』
友達を待つまで何をしようかと辺りを見回す。この公園には沢山の遊具が設置されている。一人遊びをするのにも困らない。
『ふぇ……ぐすっ……』
不意に、すすり泣く声が鼓膜を揺らした。
『? だれか、ないている?』
音のした方向をみると公園の中央で、金色の髪をした子がしゃがんでいた。声の主は彼のようだ。
『どうしたの? どこかいたいの?』
『……うぅ……まいごに。なっちゃって……』
私はその子に近付くと声をかける。すると顔を上げたその子は迷子だと言う。金色の瞳からは、ぼろぼろと涙を流す男の子。そんなに泣いたら目が痛くなってしまいそうだ。
『いっしょにさがしてあげる。ほら、ないてないでいこう?』
彼の家族を探していれば、友達と遊ぶ約束は果たせないだろう。だが今は、困っている彼を無視することも放置するとも出来ない。私は男の子に手を差し出した。
『……ほんとう?』
男の子は顔を上げると、金色の瞳を見開いた。如何やら私の提案に驚いているようだ。私が困っている人を放置するような、薄情な人間に見えたのだろうか?疑問が浮かぶが、今は驚きにより彼の涙が止まった事をよしとするべきだろう。
『ありがとう』
遠慮がちに男の子が微笑むと、私の手を掴んだ。
その瞬間、目の前が真っ白になった。