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第五話 琥珀色の石と……!?

 

「はぁぁ……楽しい……」


 お茶を飲み、しみじみ呟く。


 異世界に来て一か月ほど経った。私はこの期間、虎くんと共に家電を使いのんびりと異世界生活を過ごしている。家電を使っているため、和風の家と鰻さん達が喋る以外は異世界感があまりしない。

 電子レンジを始め数々の家電は、鰻さん達に好評だ。それは嬉しいことだが、洗濯機の使い方を見せる為に私のスーツを洗った。するとその日から私の服は綺麗な振り袖に変わったのは不思議でしかない。鰻さん達が楽しそうなので、大人しく用意された着物に袖を通している。


「これって……なんだろう?」


 漆塗りの小さな箱を開ける。中には、卵ぐらいの大きさの琥珀色の石が収まっている。これは数日前に雷神から贈られたものだ。彼とは私が目覚めて障子越しに、会話をした以来会っていない。宣言通り、何を強要されることもなく平和に過ごしている。

 正直、関わりがない為に雷神の存在を忘れていた。そんな彼から、鰻さん達を通して贈り物が届いたのだ。何の意図があるのか皆目見当もつかない。


「がぅ」

「ん? 虎くんはこの石が気になるの? 何だか分かる?」


 何時の間にか現れた虎くんが、私が眺めていた箱を除く。動物だからか、光るものに興味を持ったようだ。私にはさっぱり、この石の使用方法が分からない。生憎とこういう物には縁遠い生活をしていたのだ。


「がぁ!」

「……あ! 虎くん!?」


 虎くんは何を思ったのか、琥珀色の石を咥えると電子レンジへと駆け寄った。


「ん、がぅ!」

「え? あれ? 穴がある……」


 電子レンジのコードに石を、可愛らしい前足でぶつける虎くん。単にじゃれついているだけかもしれないが、癒し効果は絶大である。

 すると不意に石の裏側に、二つの溝があることに気が付いた。まるでコードを指す、コンセントのようだ。


「お……おぉ……。凄い! 電気が点いた!」


 まさかと思いつつも、コードを石の溝に差し込むと電子レンジの電源が点いた。雷神からの贈り物は、電気が籠った石だったのだ。


「教えてくれてありがとう」

「……がう」


 そっと、虎くんの頭を撫でる。少し前は私が触れようとすると、距離を置かれていた。しかしその度に私が悔しがる為、最近では少しだけ撫でさせてくれるようになったのだ。賢い虎くんである。


「そうだ! これなら、虎くんも一緒にお風呂入れるよ!」

「……が!? がぅ!?」


 私は閃いた。虎くんは恥ずかしがり屋なのか、日頃のお礼として洗わせてほしいのに拒否されているのだ。

 私が髪を洗った際には、ドライヤーを動かす為に電気を分けてくれる。しかし虎くんを洗った際に、電気を分けてもらうのは感電の恐れがあると鰻さん達に言われ渋々諦めていた。そう私は常々、不公平だと思っていたのだ。それが今日、解消される。


「何時も電気を分けて貰ってばかりだけど、やっと虎くんにも家電の良さを実感してもらえる! やったね!」

「ぐぁ! がぅ!」


 これで日頃のお礼が出来ると、上機嫌な私とは対照的に虎くんは部屋の隅に逃げる。それを私は両手で抱えた。虎はネコ科だからか、水が苦手なのだろうか。落ち着かせる為に、毛並みの良い背中を撫でる。


「はいはい、暴れないの」

「がぅぅぅ!」


 雷神も良いことするものだと、思いながら虎くんを抱えて風呂場へとご機嫌で向かった。



 〇


「ほら……どう? 気持ちいいでしょう?」

「……がぅ」


 ドライヤーのコードを琥珀色の石に差し込み、ドライヤーを使用する。温風に吹かれる虎くんは、不貞腐れた様子だが返事はちゃんとしてくれる。律儀な子だ。


 あの後。虎くんと一緒にお風呂に入ろうしたが、何故だか鰻さん達に必死に止められた。不思議に思いつつも、私は異世界のことはよく知らない。彼女達の指示に従った方が良いと思い、素直に頷いた。

 その為、虎くんだけを先に桶で洗い。もこもこの泡にまみれる虎くんは、可愛らしかった。


「よし、乾いたよ。……? 虎くん?」


 毛が乾いたことを確認すると、ドライヤーの電源を切る。そして虎くんに声をかけるが、反応がない。閉じられた瞼に規則正しく上下する胸を見て、彼が寝てしまったことに気が付いた。初めて見る無防備な姿に感動する。


「何時もありがとう。いい夢を……」


 そっと虎くんを抱き上げ、私の布団に寝かせ私も横になる。明日はどんなことをしようか、楽しみである。


「そういえば……虎くん達には何も起きなくて良かった……」


 不意に今まで身近に起きていた、怪奇現象が最近は起きていないことに気が付いた。異世界だからだろうか。そう考えつつも、重くなる瞼を閉じた。


 〇


「……っ、朝だ……」


 部屋が朝日により、淡く照らされている。


「……え……」


 起きようと寝返りを打つと、金髪の男性が隣で寝ていた。


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