第十四話 距離感
「むむぅ……」
店長と琥珀との三人での食事を終え、縁側で青空を見上げる。私が悩んでいるのは、琥珀との距離感だ。店長からの指摘もあったが、私は琥珀と結婚する。今の状態はとても結婚を控えた関係とは言い難い状態だ。
愛し合う結果により結婚をするのではなく、生贄としての結婚である故に仕方がないかもしれない。だが、お互い嫌うかと言えばそうではないのだ。怪奇現象という加護を与えて守ろうとしてくれるぐらいは、心を砕いてくれている。虎の姿も可愛らしく、家電製品も使い放題であり好条件だ。
つまり私は何が言いたいかと言えば、琥珀との結婚を前向きに考えた結果。彼との関係を改善したいと思っている。いきなり、恋人になろうとは考えていない。ただ、夫婦として生活をするのに困らないぐらいの関係にはなりたいのだ。
「何か方法がないかな……」
琥珀との距離感を縮めたいが、彼は私に雷を落とした過去の所為で私に近付こうとしない。彼の正体が虎であると気が付くまでは、触らせてくれていたが正体を知ってからは避けられている。彼と距離を縮める方法を模索しているのだ。
「う~ん。そうだ! こういう時にこそアプリだわ!」
スマホを取り出しアプリをタップする。このアプリは先程、店長から教えてもらったアプリである。此処は異世界である為、普通のネット回線は使用出来ない。
しかしこのアプリは不思議なことに、ネットショッピングが出来るというのだ。但し、家電製品のみに限る。一体如何いう仕組みなのかは分からないが、相手は神様だ。深く考えずに有難く使わせてもらう。
「えっと……何か良いのがあるかな?」
スマホの画面をスクロールすると、様々な家電の画像が流れていく。彼の苦手意識を払拭することが目的である。ドライヤーや電子レンジなど、彼の電気が傷付けるものだけでないことは証明してきた。だが便利なことだけではなく、彼が安心出来るような物が必要である。
「何か楽しそうなのがいいなぁ……」
私は彼のことをよく知らない。知っていることといえば、名前と昔の記憶だけだ。あとは本当の姿が虎であることぐらいである。何が好きか、何が嫌いか知らない。彼のことを考えながら、スマホをスクロールする。
「あ! これがいいわ!」
ある商品が表示され、私は購入ボタンをタップした。