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「貴方が王様ですか。初めまして、俺の名前は佐藤京太と言います」
「ふむ。貴公の名はサトー・キョータというのか。良い名じゃのう」
王様は好々爺といった表情を浮かべている。
「それで勇者殿。早速、本題に入ろうと思うのだが……よろしいかな?」
「はい。大丈夫です」
「うむ。まずこの国についてだが、この国は大陸の南西部に位置している小さな国じゃ。気候は比較的温暖で過ごしやすい場所だと言われておる」
「そうなんですか。確かに過ごしやすそうですね」
窓から外を見ると、緑の絨毯のような草原が広がっている。
「そしてこの国が建国されたのは約500年前。当時の魔王を倒した初代勇者によって築かれたと言われている」
「へぇ~! 魔王を討伐した勇者ですか。凄い人もいたもんですね」
「ああ。その勇者こそが余の祖先にあたる人物なのだ」
「えっ!? ということは……もしかしてこの国の王家って勇者の子孫ってことですか?」
「そういうことじゃな」
やっぱり勇者ってすげー!俺もハーレム作って子孫を残さないと!
「さて、ここからが問題なのだが――ここ数年、魔物達が急激に増加し、農作物の被害や人への被害が増加し続けていて、このままではいずれ国が滅んでしまうかもしれん……。数年前に新しい魔王が誕生したらしく、そのせいではないかという話もある」
「魔王ですか」
「うむ。そこで勇者殿の力を借りたい。勇者殿の力で魔王を倒して欲しいのじゃ」
王様はそう言って頭を下げてきた。
(魔王討伐か……。やっぱりそういう流れになったな)
勇者として召喚された以上、こういう展開になるとは思っていた。しかし、実際に魔王討伐に向かうとなると、少し尻込みしてしまう自分もいた。
(俺、戦闘経験なんて全くないんだけど)
体育の授業で剣道や柔道をやったくらいの経験しかない。それに相手は魔王なのだ。勝てるかどうか不安になってきた……。
「えっと……その前にいくつか質問しても宜しいでしょうか?」
「構わんよ。何なりと聞くがよい」
「ありがとうございます。ではまず、どうして俺を勇者として召喚したのか教えて頂けませんか?」
これは一番気になっていたことだ。
「それは、勇者殿にしか成し得ないことがあるからじゃ。勇者召喚は神の御業によるもの。故に勇者殿に何かしらの役割があるはずなんじゃ」
「役割ですか……」
「そうじゃ。例えば、勇者殿はどのようなスキルを持っておる?」
「え?俺の持っているスキルですか……?」
突然のことに戸惑ってしまう。
(どういう意味なんだ? もしかして、俺にチート能力があるってことか?)
「えーと……どんな力を持っているのか自分では分からないんですよね」
とりあえず正直に答えてみる。すると―――
「ふむ。では、まずはステータスの確認から始めようかの」
「ステータス? ゲームみたいですね。どうやって確認するんですか?」
「簡単じゃよ。念じながら『ステータスオープン』と言うだけでいいんじゃ」
「そうなんですか。じゃあ、やってみますね。『ステータスオープン』!」
その瞬間、目の前に文字が現れた。俺は期待を込めて自分のステータス画面に目を向ける。
◆名前:佐藤京太
◆性別:男性
◆職業:村人
◆レベル:1
◆HP:100/100
◆MP:50/50
◆筋力:8
◆耐久:9
◆器用:10
◆敏捷:11
◆知力:12
◆魔力:13
◆運勢:8
◆固有スキル:洞窟掘りLv.1
(マジか……)
俺は頭を抱えたくなった。というのも俺のステータス画面にある職業欄は―――『村人』となっていたからだ。
「あの……王様。俺の職業って『村人』になっていますけど、これって何か意味があるんですか?」
「む? ああ、それは恐らく勇者召喚の際に何らかの不具合が生じたのだろう。だが、安心するがいい。勇者殿には勇者たる資質が備わっているはずだ」
「そうなんですか」
「うむ。きっと凄まじい力を秘めているに違いない」
「はぁ……」
俺は曖昧な返事をする。このパターンはアレだな……。つまり、俺はハズレキャラということなんだろうか……。そんなことを考えながら、チラリと王女の方を見る。彼女は申し訳なさそうな顔をしていた。
「王女様?どうかされましたか?」
「えっ!? いえっ!何でもありませんわっ!!」
王女様は慌てた様子で首を横に振った。
「……俺を召喚したのって王女様ですか?」
「そっ、それはっ! その……はい」
↓にコミカライズ版のリンクを貼りました。よろしければご覧ください。