第1話「転入」
男友高等学校、ここには共学ではない普通の男子校だ。
生徒数は普通の共学と同じくらいの人数。
男子校というものだから、来夢は転入なんてされるはずがないと思っていた。
それが、何故か転入してしまったのだ。
「え」
「うお、女だ」
「我が校に女、くぅ~たまらないね」
「俺、彼女できたことないんだ。あの子といい関係になれるといいな」
何故か来夢は男しかいない、男子校にいる。
何で女である来夢が男子校にいるのか、それは、今年から女も入学できるようになったからであった。
父からのいいつけで、元は父の母校だったらしい。
それで、自分の母校に娘である来夢を入学させたかったらしいのだ。
「あ、あの、これからよろしくお願いします…」
「うおおおお、こちらこそよろしく~」
「ひゅ~ふ~ふふ」
とても臭い。
当然か、男子校だから。
来夢は女である、今いる学校に自分だけしか女はいない。
すごく嫌でたまらない。
来夢は夢があった、父から男子校である男友高等学校に入学するのであれば、女を集めるため、女だけを集めるため百合部を作ると!
そこで、来夢は華を咲かせるのだと。
「じゃあ、来夢さん、星斗くんの隣の席に座って」
先生にそう言われ、来夢は席に座る。
「よろしく、来夢さん」
「よ、よろしく」
ダメだ、顔が引きつってしまう。
男はどうしても苦手だ。
臭いし、獣だし、デリカシーがないし、それに、ここは元男子校だ、当然ホモがいるであろう。
そんなこと考えただけで鬱になっていた。
来夢は授業が終わると、一人、学校の廊下を歩いていた。
どうしてだろう。
何でか、男共に注目されいてるのは。
「可愛いな」
「おい、お前、あの子に話かけてみろって」
「嫌だよ、俺は話かけるよりそっと近くで見守ってるほうが好きなんだ」
嫌な声が聞こえる。
ああ、女の子の声が聞きたい、話したい。
来夢は女子トイレに入った。
「ああ、もう! 何であんな野郎しかいないの。キモイし、臭いし、どうして私だけ入学なのよ」
イライラして落ち着かない。
トイレの中を行ったり来たりする。
「絶対、女の子だけの楽園を作ってやるんだから。そう、百合部を! 男子たちに負けてたまるか」
そういい残し、来夢は女子トイレを出た。
そして、ある教室の前に到着した。
少しだけ教室のドアが開いている。
そっと、隙間から覗いてみた。
するとそこには抱き合ってる男子たちの姿があった。
「俺、お前のこと好きなんだ」
「俺もだよ、星斗のこと愛してる」
「絶対俺のことから離れるなよ」
「ああ、星斗から離れるもんか」
来夢は嫌な夢でも見ているのかと思った。
やはり、あったんだ。
男子同士で付き合ってるのが。
来夢はこっそりその場を離れた。
「何か見てはいけないものを見てしまった。もう帰ろう」
男友高等学校から離れ、来夢はてくてくと歩く。
周りは仕事終わりのサラリーマンや老年夫婦が歩いている。
どうしてこの辺りは女子がいないのか。
来夢は急いで女子がいるところまで歩く。
すると、そこには楽園があった。
そう、女子がいたのだ。
まるで漫画のように、女の子同士が手を繋ぎ歩いている。
もう二組目は、スキンシップを取りながら歩いている。
「そう、これが私の求めていた楽園。キュンキュンするわ」
「あの」
誰かに声をかけられ、もしや、ときめきの展開かと思い振り返る。
すると、そこには、銀髪の同い年くらいの女の子がいた。
「…あ、は、はっい!」
女の子に声をかけられ、来夢は気分が上がって変な声が出てしまった。
「あなた、何か臭うわ」
「えっ」
名前も顔もよく知らない女の子にそう言われ来夢は落ち込む。
何でだろう。
制汗剤もつけてるし毎日お風呂にも入ってるし。
自分の臭いを嗅いでみる。
だが、よく分からない。
「ごめんなさい、ただ、ちょっと私の苦手な臭いがしただけだから」
「…はぁ」
じゃあねと言われ、その子は去っていってしまった。
テクテクとしょんぼりしながら来夢は家へと帰る。
「あぁ! もう最悪! 男子校に入学させられるし知らない子に臭うって言われるし」
ベッドの上でバタバタともがく。
よし、次の日は香水もつけていい香りにして登校しよう。
そう、来夢は誓った。