表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

第4話 叔父!?

 降りて来た階段に続く地下通路は、非常灯の灯りだけが頼りの薄暗い空間。

 彼女は袖を掴んだまま、勝手知ったるかのように地下通路をスタスタと歩いて行く。

 廊下の行き止まりにある扉のドアノブを掴んで勢いよく開けた。

「失礼しまーす、連れてきたよー」


 その部屋の照明は壁際のダウンライトとデスクスタンドだけで、地下通路ほどではないが部屋全体が薄暗い。

 室内を見回すと、デスクの他に応接セット、大きなキャビネットが目に付き、部屋の奥には別の扉がある。


 デスクでMacBookのキーボードを叩いている男性が一瞬顔を上げ

「ああっ、ちょっと待って」

 と言い、またキーボードを叩き続ける。


「入って、入って」

 彼女は自分の家のように中に招き入れ、応接セットのソファに座るように指さす。

 言われるままに応接セットの3人掛けソファに座ると、彼女は自分のバッグを横に置き、部屋の奥にある扉を開けて中に入り、しばらくしてペットボトルのお茶を2本持って戻ってきた。

 1本を応接セットのテーブルに置き、もう1本のキャップを開け、立ったままゴクゴクと飲み始める。


「フーッ、一息つきました。みんなに見つからないようにダッシュで駅に行くの、大変だったんだから」

 なるほど、それで駅に着くまで彼女の姿を見なかったんだ。


 デスクにいた男性がMacBookを閉じて立ち上がり、応接セットの向かいのソファに座る。

 見た感じ、自分の親とさほど歳は変わらないように見えるが、黒いハイネックシャツにオリーブドラブ色のレザージャケット、黒いジーンズにレッドウィングのワークブーツと、この(あたり)ではなかなか見ない大人の格好をしている。

 それよりもスキンヘッド(禿げているの?)に、色の入った茶色のセルフレームを掛け、あごヒゲを生やしている風貌が目立つが、全体として違和感は感じない。


 ソファに座って早々「失礼するよ」と言い、ジャケットのポケットからタバコを取り出して火をつけ、思いっきり吸い込み満足げに煙を噴き出していた。


「叔父さん、私の前ではタバコを吸わないでと言ったでしょう? 目の前で吸われると髪の毛や服に匂いがついて臭くなるんだから」


 叔父さん? 目の前の怪しい格好をした男性は彼女の叔父さんなの?


「ああ、悪い悪い。今までちょっと(こん)を詰めていたから。ちょっと息抜きをしないとな」


「叔父さん、またゴースト?」


「まっ、そんなところ。ところで君が、アレを作った人?」


 アレって何だ? 何も聞いてないぞ。

「えっとー、何でしょう?」


「彼女から聞いていないの? 大学に入ってからのこと」


 彼女から聞いたこと? ってアレのこと?

「『東京で一緒に暮らそう』とは聞きましたが…」


 彼女から『叔父さん』と呼ばれる男性は、吸い掛けたタバコを口から離し『ゴホッ、ゴホッ』と思いっきり咳き込んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ