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Jet Black Witches ー 萌芽 ー  作者: AZO
2.芽吹き。2.親友の家族編
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イルママ救出

「失礼しまーす。こちらの娘さんの関係者なんですが、何事でしょうか?」


「あなたが何者か知らないが、此方の家族でなけりゃ、部外者だ。出て行ってくれ」


「いやいや、説明くらいはしてもらえないんですか? そんなこともできないあなたたちは強盗と同じことになりますねぇ。知ってますか? 相手が強盗なんかであれば、緊急避難のために、一般市民でも救助活動が行えるんですよ?」


「ちっ、私たちは正当な権利をもって、債権回収に来ただけですよ。お金が用意できないとのことなので、奥さんとお子さんに肩代わりしてもらうことになりましてね」


「じゃあ、その証書を拝見させていただけますか?」


「あなたに見せる必要はないでしょう」


「偽証書だから見せられない、と、そういうことですね」


「そ、そんなことあるか! 証書は本物だぞ。ほら」


「マコト、イルちゃん入っておいで。マコト、これ撮って」

 パシャ。


「ついでに皆さんも撮って」

 パシャ。


「なに勝手に撮ってるんだ。テメエ」


「イル!」

「お母さん」


「撮られてはマズいということはやはり偽物ですか」


 親玉の顔色がやや険しくなる。


 そこへイルを確認した子分が報告を入れる。

「ア、アニキ、例の上玉の娘ですぜ」

「なに? なるほど、上物だな」


 上物認定したようで、険しさは飛んで、何とも言えないイヤラシい笑みを浮かべる親玉。


 少し余裕を欠いていたが、今の報告でやや気持ちを取り戻したようだ。

「おっと失礼。偽物なわけはないでしょう?」


 パパは例の作戦の発動に踏み切るようだ。

「あぁ、ちなみに、ご存じですか? 昔この建物で、今日と同じように騙されて連れて行かれそうになった娘さんが、激しく抵抗し、刃物を奪って、辱められるよりはと自害したそうです。それ以降、この建物で同じような連れ去りが起こりそうになると、地縛霊となった彼女が暴れ狂う現象が起こるようになったそうですよ」

「な、なにをでまかせを」

 若干だが、怯み狼狽える親玉。


「あぁ、偽造するなら、もっとちゃんとした人を雇った方がいいですよ。フォーマットが微妙に間違ってるし、割り印がない。署名の綴りが間違ってる。その他諸々、お金をケチって、素人の部下にやらせるからこんなにミスが多いんですよ、まったく」


 ふふっ、パパの手のひらの上に乗せられそうだね。


「そ、そんなはずないだろう。いや署名だって複写機使ったはずだから、いや手書きでやらせたのか? ……はっ!」


「ほら、やっぱり偽造なんですね? マコト、写真」

「はいよ」

 パシャ。

 パシャ。


 この親玉チョロすぎる。小物なのかな?


「きさまぁ、騙したなぁ?」

「いやいや、騙してるのはそちらでしょう?」


「テメーラ、やるぞ」

 パシャ。


 ジャキン、ジャキン。

 部下がピストルやナイフを取り出し構え始める。

「いただき!」

 パシャ。

 パシャ。


 シャッターチャンス! いただきぃ。


 パパから、背中でパー→グー→ふりふり。これはボルターガイスト開始の合図だ。


「俺たち相手に舐めた真似をしたこと。あの世で後悔するんだな」


「アニキ、銃が勝手に、あわわわ」


「なにが起きてる」


 マコとパパで、銃を動かし、別の銃を叩き落とす。


「イルちゃん、お母さんと物陰に隠れて! 流れ弾が飛んでくるかも?」

「はい」


 落ちた銃を宙に浮かして、グルグル動かす。照準はリーダー格にセット。近くの椅子、テーブルも宙に浮かべる。


「やっぱり地縛霊の噂は本当だったみたいですね」


「そんなバカな」


 パパから親指で弾く、つぶての合図だ。コクリと頷く。他の手に持つ銃やナイフに向けて弾く。手元が見えないように。


 パァァン、パ、パァァン。


「撃ってきやがった。こんなの聞いてないぞ。ちっ、覚えてやがれ。ずらかるぞ」

 パ、パァァン


「へい。ひぇーっ」


 ダダダダダ。

 ……バタン……

 キキキィー

 ガン

 キキィ

 ブゥー


 一斉に帰っていった。


「行ったか?」

「うん」


「じゃあ、録音停止だ。カチャッっと」


 カチャッ、カチャッ。


「2人とも録音停止できたな?」

「「うん」」


「クフフ……」

「アハハハ……もういいよね?」


「ああ、アハハハ」

「あー、楽しかった。聞いた? 「覚えてやがれ」だって? アーハハハ、イーヒヒヒ。やっぱり言うんだね? プププっ」


 イルが不安そうに問いかける。


「あの? 私たちは大丈夫なの? 地縛霊?」


「あー、あれはハッタリよ。信じちゃった?」


「じゃあ、あれはなに?」


 宙に浮いてぐるぐる回っている銃やナイフ、と、椅子とその他の家具たちをイルが指差す。

「あー、忘れてた」


 ゴトン。ゴト。ゴトゴトゴト。ゴトン。


「あれっ? 証書も忘れてったみたい」


「あらら、小物である証だな? 放置すると、そのうち大物も出てくるかもな?」


「え? マコちゃんたちが仕込んだの? いつのまに?」


「イルちゃん、細かい説明は後でするよ。まずはこの状況の撤収と、お母さんへのカンタンな説明。幸か不幸か、こんな状況だから、今日、ここに留まる必要性はないから、うちに避難の一択でいいよね?」


「はい。もうそれしかないですね」


「だから、避難することと、その準備。さっき打ち合わせたことの他に、借用書関係の書類全部と通帳や判子、現金、貴重品は全部持って行った方がいい。他にも大事なものがあれば全部。今夜あたりにまた襲撃される可能性があるからね。奪われたり、壊されたり、燃やされたりする可能性があるから、もう引っ越しするつもりでね」


「了解です」


「あぁ、うちにある生活品や買えば済むものは置いていってね。思い出の品なんかは買えないから、優先順位高めで。でも軽トラ一台に載せられる量までだよ」


「了解です」


「マコト、オレたちは次の対応を考えなきゃだけど、オレは知り合いに連絡することがあるから、その間、イルちゃんの手伝いを頼む」


「りょ」

「お、おう。またその省略形か?」


「トゥルルルーッ、プツ。もしもし、太田か? ああ、一ノ瀬だ。久し振り。ちょっと頼みがあるんだが。あ、ああ、S国のベラドンナ商会の企業情報と背後関係、それから罪状の履歴なんかが欲しいんだが? あぁ、それから警察との癒着がありそうなんだ。その情報があれば嬉しいな。いやぁ、うちの大事な親戚にコナをかけてきたんで、ちょっと懲らしめてやりたくてな。あぁ、情報さえもらえれば、そちらに迷惑はかけないさ。ちょっと悪徳な中小企業が潰滅するくらいだよ。ああ、大丈夫。無茶はしないさ。ああ、ああ、よろしく頼むよ。そうだな、今度時間を作るよ。飲みに行こう。あぁ? 日本でか? ああ、近々戻る予定ができそうだから、ああ、また知らせるよ、じゃあ、連絡よろしく。プーッ」


「パパ殿、なにやら黒っぽい会話に聞こえましたぞ。何かやらかす気?」


 神妙そうなトーンから、一転、ワクワクを隠せないトーンでマコは尋ねた。


「あぁ、今日ので諦めるとは思えないし、イルちゃんの周りは綺麗にしておかなくちゃ、と思ってな。お掃除、マコも手伝ってくれるか?」


「うんうん、やるやる。面白そうだし、何よりイルたちに悪さをするヤツらはコテンパンにしてやらないと気が済まないもの」


「だが、言っとくぞ? 今回は危険の可能性はもちろんあるが、小物相手で叩けばホコリが出そうだから、そこを突いて自滅させるつもりだ。比較的安全にやれそうだから、経験を積む意味でも手伝ってもらいたいが、これから先、巨悪に対峙しなきゃならない場面では、本当に危険な状況が出てくる。そのときは首を突っ込ませないからな?」


「りょ、了解であります」


「今回はどこまでが安全でどこからが危険なのか、争いに勝利しても、身バレしてしまうと、後からやってくる別の危険。いろいろ勉強になると思うから、しっかり見て考える癖をつけること」


「はい、であります」


「マコト、時々なる、その軍隊口調はなに? さては変なアニメでも観たな?」


「パパ殿が、圧倒的な知識や能力を振るうとき、今みたいに悪の側面を垣間見たとき、圧倒されすぎて、軍曹みたいに見えるのであります」


「そうか、ちょっと怖いってことだな? じゃあ、ほら、いつものパパだよ?」


「あー、パパぁ、戻ってきたぁ」


「すまん。怖がらせてたんだな。気を付けるよ。うん」


「ううん、大丈夫。戦いなら、気が緩むと死ぬ可能性があるから、気合いが入っていいんだよ。だから、必要なときは変貌OKだよ?」


「そっかぁ、でもパパ的には、いつも可愛らしいマコトでいいんだけどな?」


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