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自信満々な生徒会長の脇役

作者: 春乃和音
掲載日:2021/01/29

「うん。 今日はここまででいいだろう。 あがろうか」

生徒会長が席を立つ。

彼女は珍しい女性の会長だ。

珍しいというのは、単に女性が会長に立候補することがなかったということである。

だから、教師陣も関心して彼女を見ている。

「はい。 お疲れさまでした」

今日は明後日の全校集会で配るプリントを作成していた。

目次や概要、会長のスピーチを補完する情報など。

そういうのをまとめていた。

「荷物は持ったかい? それじゃあ、鍵を閉めるよ」

会長だけが持っている生徒会室の鍵。

彼女はそれを回してドアが開かないことを確認した。




俺と会長は途中まで同じ帰り道だ。

だから、下校中は二人きりになる。

「そろそろ私たちの代になって半年が経つね」

「そうですね。 とはいえ、同じ仕事はありませんから慣れませんけど」

「あはは。 その通りだね。 私もスピーチを考えるのが大変だよ」

「でも、考えるのだけでしょう? 会長は喋るの大好きですもんね」

「よくわかってるね。 そうさ。 私が会長になったのは大勢の前で喋りたいから……だからね」

会長はにやりと笑った。

「と、こ、ろ、で……だ」

笑ったと思えば眉を寄せて、俺を睨む。

「なんで君はずっと丁寧な言葉遣いなんだい」

俺は会長に向かって丁寧語で喋る。

同じ学年なのに、だ。

もちろん理由はある。

馬鹿みたいだけど、個人的には超大事な理由が。

「いや、ほんと大した理由じゃないので」

「いつもそう言うじゃないか。 聞かせてくれよ」

おでこ一つ分だけ下で、会長が頬を膨らます。

この人は駄々をこねているときが一番かわいい。

「ちゃんとその理由が終わったら話しますから」

だから、絶対に理由を言ってあげない。

「本当だね? 本当に本当なんだね?」

「はい、もちろんです。 会長には逆らえません」

「いや、もう逆らってるじゃないか……」




それからは、雑談をして歩いた。

「あの体育の先生、酷いんだよ。 私が身長高いからって、身長の高い女子と組ませるんだ。 身長が高い女子なんてね、みんなスポーツをやってるんだよ。 私を除いてね!」

「いやあ、対格差あってもかわいそうなんで、仕方ないですよ」

「もう、話を聞いてかい!? 私はスポーツ経験者と組ませるなって言ったんだぞ」

実はあまり話を聞いてなかった。

会長がかわいすぎるからだ。

本当にかわいい。

しかも、それだけじゃない。

会長としての仕事はバッチリこなすし、学力も上位の方。

この人はなんでもできる人なのだ。

でも、それはちゃんと努力をしているからだ。

「会長」

「だいたい、いまどき竹刀なんて――なんだい、話の途中だぞ」

「会長はどこの大学を目指してるんですか?」

「えっ、急に真面目だな……」

会長は指を折ってなにかを数え始めた。

「とりあえずまだ考え中なんだが……とりあえず、情報系で一番いい大学に行きたいと思っているよ。 あっ、内緒にしてくれよ。 恥ずかしいから」

「会長も情報系なんですか? 俺もそうしようと思ってたんです!」

まさか、目指す学問が同じだなんて思わなかった。

嬉しい偶然だ。

ただ、そうか。

一番いい大学か。

俺の学力では足元にも及ばないだろう。

「会長、俺も同じ大学を受けます」

それでも、俺は会長と同じ大学を目指したい。

「本当かい?」

「ええ、本当です。 頑張ります」

「君、たまにそういう顔するよね」

そういう顔ってどういう顔なんだろう。

俺は首を傾げた。

「ああ、変な意味じゃないよ。 なんていうか、切羽詰まってる? いや、違うか。 覚悟を決めてるような顔」

「そんなに絶望してるような顔に見えますか?」

「ううん。 どっちかっていうと、やってやるぞ、って感じ」

その言葉を聞いて、なんとなく嬉しくなった。

この人はわかってくれるんだなって。

「ええ、やってやりますよ」

「その意気だ。 私も応援するよ。 まあ、そもそも私も合格できるか怪しいんだけど……」

「じゃあ、一緒に頑張りましょう。 一年後に笑えるように」

「ああ、そうだな。 ……おっと、私はこっちだ。 それじゃあ、また明日!」

会長は俺とは別の道に進んでいった。

自信ありげにピンと張った背中を見送る。

そうだ、同じ大学に合格できたら、俺の理由は達成される。

俺が会長に丁寧な言葉を使う理由。

それは、彼女と俺の格が違いすぎるから。

だから、砕けた言葉を使うのは彼女と同じレベルになったとき。

そう決めている。

俺は新たに決意を固め、自分の道を胸を張って歩き始めた。

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