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ベタベタ勇者と非ベタの暗殺者  作者: 新元英太
プロローグ
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プロローグ

いつもの道を俺は気怠そうに歩いていた。


みなさんもお分かり頂けるであろうか?

高校最後の夏休みが終わった最初の登校日。

もうちょっと休みたかったと思う人が大多数だと思う今日この頃。


皆、友達と喋りながらや音楽を聴きながら登校している。

俺は1人だ。


「おーい。龍矢ー。」


俺の名前を呼ぶ声が聞こえて振り向くと、イケメン、秀才、スポーツ万能。そしてモテモテ…であり俺の親友。天武獅子(てんぶれお)だ。


ショートの茶髪に180㎝強の身長で手を振っていたらそりゃ目立つ。

その後ろには獅子目的の女の子集団……。


はい。イライラします。


そんなこいつには面白い特徴がある。

それは…



獅子と合流し、高校への一本道に入る。


何気ない事をだべりながら歩いていると、脇道から見知らぬ女の子が飛び出して来た。

当然のように獅子にぶつかり、バランスを崩す女の子。


はだけるスカート。見えるパンツ…


突然の出来事に凝視してしまう2人。



「あ、ごめん。大丈夫?」


獅子は我にかえり手を差し伸べた。



「うん。ごめんなさい///」


女の子は恥ずかしそうに頷き、手を取って立ち上がっりさって行った。


落ちたな……


それにしても見かけない子だった。


転校生かな?



多分転校生である。高3のこの時期に転校して来た理由は知らない。しかし謎の確信があった。


そしておそらく同じクラスである。



なぜならこの男…天武獅子はベタすぎるやつだからだ‼︎



なぜか分からないが起こる事がベタすぎる。

中学からの付き合いだが、昔からそうだった。 



今のように道でぶつかり、ラッキースケベをもらい、相手が落ちるのは日常的。


公園で荷物が入れ替わり、事件に巻き込まれた事などもある。



対称的に俺、火辺田龍矢(ひべたりゅうや)は非ベタだ。

今のようなパターンでも目立つ獅子がおり、モブ的なポジションになる時も多い。


「パンツ見たでしょ!」


「み…見ました…」


「変態‼︎」


パチーン‼︎


「……なんで俺だけ…」


みたいなパターンがベタだろうが俺はない。

完全に空気にされる。



けして存在感が薄い訳ではない。……と思う。

獅子の存在感が圧倒的なのだ。



まぁ容姿も黒髪ショートで身長も165㎝のちょっと小さいかもだが普通くらい。

顔も自分で言うのはあれだが、ブサイクではないと思う。


だが彼女はいない。つまり童貞…キスもない……

それが普通であると信じたい。




「……行こうか」



現実逃避をしている俺の横から獅子が気まずそうにこえをかけてくる。



「そうだな。」



俺は短く返事をして、学校へ歩き出した。



「「…………」」




無言で歩く2人。


おそらく同じ事を思っているのだろう。



「……なぁ?」


「ん?」


無言に耐えきれず、俺から声をかけてしまう。



「ちょうど今ぐらいだったよな……。

そしてさっきの場所だったか?」


「……あぁ。」



約2年前。このいつもの登校は2人でじゃなかった。

もちろん後ろの集団うんぬんの話しでもない。


もう1人いた。



|広院流奈(こういんるな)

2年前にあの場所でベタにぶつかり、派手に転び、獅子に一目惚れした人物。


そして獅子の彼女。



仲の良かった俺達の間で一緒に登校したり、放課後遊んだりよくした。


おっちょこちょいだが、優しく、面倒見が良く、誰からも好かれるような女の子で、にっこりしながら振り返る瞬間が眩しかったのが印象的だ。



だが、今はいない。

1年前に突然姿を消し、今でも捜索願いが出ている。



「…………すまん。」


「いや……いい。大丈夫。」



俺もいなくなり、寂しいが、獅子や親子さんの方がもっと辛いだろう。

獅子なんかは暇があれば今も隣町やいろんな所に捜しに行っている。


本当に好きだったのだろう。



暗い雰囲気のまま、俺達は校門を潜った。


――――――― * ―――――――



始業式が終わり、俺は先に校門の前で獅子を待った。


同じクラスだが、一緒に出ない。いや、出れない。

それはあいつがモテ男だからだ。

今日も呼び出されていた。

もう毎度のパターンである。

獅子も大変だ。


するといつも通り数分の後、獅子が歩いてくるのが見えた。



「すまん。待たせた。」



獅子も俺を見つけ、謝ってくる。



「青春ですの〜お兄さんw」


「うるせぇ。茶化すなw」



俺もおじさんのように対応しながら歩き出す。

これもいつもの一幕だ。



「龍矢、今日バイト?」


「おう!でも夕方からだから時間あるな。獅子は暇人?」


「そ!昼飯食べて、どっかで時間潰そうぜ。」


「あり寄りのありw」


「つまりありだなw」



今日は始業式のみ。

午前中だけで終わったので時間がある。

俺は飲食のバイトをしているが、夕方からだ。

獅子はバイトも部活もしていない。


そんななんでもない会話をしながら某ハンバーガー店に入った。



「………相変わらず良く食うな。」



そんな言葉を漏らしたのは獅子。

俺の前には並々とハンバーガーやポテト、チキンナゲットが並んでいる。



「モグモグ……いいだろ。……モグ……ほっとけ。」


「……胸焼けする………。」


すごいスピードで食べる俺を尻目に獅子はちょっと引いている。



「………あっ…あの……」


「ん?」

「モグモグ…モグモグ…」


俺達が食事をしているなかで知らない男の子消え入りそうに喋りかけてきた。



「……天武獅子さんと火辺田龍矢さんですよね?」



なぜ俺達を知っている?

獅子は有名人だが、俺はモブですよ?



その子をよく見ると服は綺麗にしてあるものの、何年も着ているかのようにボロボロだし、何故か長袖。

鞄もちょっと土が付いた後叩いて落としたような汚れ方だ。


多分…いじめられているのだろう。



「そうだけど、どうした?」



俺は食べるのを一旦やめ、なるべく優しく聞こえるように対応する。



「………あの……と…友達が…お2人に用事があるから……連れてこいって……」



言いにくそうに、申し訳無さそうに言ってくる。



この子も分かっているのだろう。

連れて来れなければ何をされるか。


連れて行っても何が起こるか。


「「………。」」


俺達は無言で顔を見合わせた。



「気にするな。」


と、ポンポンと男の子にしながら立ち上がる獅子。


「お得意のベタ展開か……」


俺も渋々立ち上がる。



「バイトまでに、終わらせよう。」



俺達は男の子に付いて行った。

……あ、ちゃんとハンバーガーも持って行きますよ。



――――――― * ――――――――


男の子に案内された先は近くの人気のない河原だった。

河原に降りる階段の両脇に雑草が生い茂っており、いかにも何をしているか分からない。



「ベタか‼︎」


俺は思わず叫んでしまった。



「おう!待ってたぜ!」



広くなっている所に男が1人いた。



「どなたか知りませんが、呼び出しておいて、何用ですか?」


分かっているが一応聞く。



「あ"あ"‼︎お前俺が誰かわからねぇと?」



ええ。知りませんが?


青筋が浮かぶ男を無視し、キョトンとした顔で獅子を見る。


獅子も気まずそうな顔でこっちを見返してくる。


あ、獅子も知らないんだ……



「……誰?」



「ふざけやがって‼︎俺の女を取ったくせに‼︎覚えてもいねぇのか‼︎」



……あぁ…八つ当たりね。そして取ったの僕じゃありません。

隣の色男です。



そうこうしているうちに、ぞろぞろと取り巻きが現れ、すっかり囲まれてしまった。



「君、これ持ってあっち行ってて。」


案内してくれた子に俺の鞄を持たせ離れさせる。


大事な食料が入ってますからね!



そして獅子と自然に背中合わせになった。



「……ふぅ。なぁ獅子。」


「ん?」


「……明日の昼飯、お前の奢りな。」


「……嫌だし!この人達に奢ってもらおうw」


「あり寄りのあり!」


日常的とは言わないが、ちょこちょこあるので余裕がある俺達。

しかし逆にそれが相手をさらに怒らせてしまう。



「ふざけんな‼︎オラァ!」



俺の目の前の男の1人が火蓋を切って落とした。



大きく振りかぶってくるテレフォンパンチにカウンターを仕掛けようとしたとき!



「「!!!」」


「なっ⁉︎」

「うっ‼︎」

「なんだ⁉︎」



2人の足元から眩い光が立ち上り、そこにいた者全員の目を眩ませた。


そして数秒たち、光が収まるともう2人の姿はどこにもなかった。



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