第80話(スライム討伐作戦・前編)
今回は討伐作戦の前編になります。
討伐作戦は、中編と後編の三部構成の予定です。
では、異世界トラブルの続きをどうぞ!
ブゥーーーーン………ブゥーーーーン
………ブゥーーン、ブ、ブッ………パリン!!
シーラとミルンがスライムが町中に出てこない様に張っていた結界が展開時間が限界にきて自然と消えた。
ポヨン・ポヨン・ポヨン・・・
ポヨン………「「「ピギ?……ピギィッ!?ピギィ!ピギィッ!!」」」
スライム達は結界が消えた理由までは分からないようだが、結界が消えたことで今まで行けなかった所に行けるようになったことは理解し、興奮した様子で結界があった方向に向かって行った。
イルマ達が町の安全を守る為に張った結界は、結果的に壁側には結界を張っていなかったが、それでも結界内に魔素を集中する結果になり、スライムの増殖を招いてしまうことになって、町の安全を守る結界が皮肉にも町の脅威を高めることになってしまった。
そして、
結界が消えたことで更に増殖した大量のスライム達が町中を進んで行く。
そんな増殖した大量のスライムが町中を進み出した時…………まだ避難がしていない町の住民の様子は、
「避難しろって言うから何だと思えばスライムだと?スライム何か最弱の魔物じゃねぇか………な、何だ、すっスライムの数があまりにも多すぎじゃねえのかッ!?」
「うあぁぁぁぁぁぁんっ!?魔物だッ!?大量の魔物だッ!!こっ怖いよぉぉーー!!!」
「まっまってくれッ!?こ、腰が、儂は腰が痛くて動けないのじゃよッ!?誰かーー助けておくれーー!」
「こ、子供がいないッ!?私の子供がいないのよっ!!誰か私の子供を探してぇー!!!」
今まで結界が有ったこともあり、魔物の姿を見てないことでそこまで慌てて避難をしていなかった町の住民は、町中を進んでいく大量の魔物の姿を見ては悲鳴を上げながら避難を急ぐ。
「ほら早く避難しますよッ!!スライムとはいえあんな数が襲って来たら一溜りもないでしょ!!」
「……あ、ああ。そ、……その通りだッ!すっスライムでも、あれだけ数で襲われたら死んでしまうッ!?」
スライム相手に粋がっていた男の人にあれだけの数を相手してたら死んでしまうことを伝えることで素直に避難をするように説得したり、
「俺達が来たからスライム何か怖くないよ。さぁ、坊やも俺達と一緒に皆の所へ行こう」
「本当に!!?お兄ちゃん達が僕を守ってくれる?」
「ああ!大丈夫だ!お兄ちゃん達が坊やを守って安全な所まで避難してあげるよ」
とスライムに怖がる幼い子供を安心させたり、
「お爺さん俺が背負いますから大丈夫です!さぁ俺の背中に乗って避難しますよ!」
「お、おおっ!助かったわい!こ、腰が痛くて動けないところじゃったのよ……」
「ヨイショッ!!っと、お爺さん避難しますよ」
「っう、……本当に助かったわい。すまないが避難先まで頼むわい」「ええ!」
と動けないお爺さんを背負って避難先まで運んだり、
「お母さんどんなお子さんですか?私達がお子さんを探しますから特徴を教えてください。ちゃんと私達がお子さんを探して見つけて安全な所まで避難させますからお母さんは先に避難をしていてください!」
「で、でも、あの子を置いて先に避難なんて……「お母さん!!」ッ!?」
「必ず私達がお子さんを探して見つけます!そしてお子さんをお母さんの元に届けますからお願いだから避難をしてください!!」
「……………っ」
「お願いします!!」
「…………私の子供の特徴は、4歳で黄色の服を着た女の子です。…………お願いします。あの子を!あの子を見つけて助けてください。お願いしますッ!!」
「必ず。必ずお子さんをお母さんの元に届けますから。………皆ー!!聞いたわねッ!!探知系の技能を全力で使って直ぐにも女の子を見つけて助けるわよ!!」
「「了解!」」
とはぐれた子供を見つけては助ける為に、お母さんからお子さんの特徴を聞いては先にお母さんを説得して避難をさせ、探知系の技能を全力で使っては聞いた特徴の女の子を探したりして避難活動を行ったりと避難が遅れた町の住民に対して、スライム討伐作戦を開始した避難活動やその護衛に当たっている養成所の生徒や冒険者達が、数人の兵士の指示で的確に町の住民の避難誘導や護衛に務めていた。
「(多すぎる!!思ったよりも避難がしていない住民もだが、スライムの数が、報告で聞いたスライムの数が多すぎるッ!?私から見える範囲にいるスライムだけでも300体はいるぞッ!?クソッ!結界内に閉じ込めている間に増殖して数を増やしたっていうのか!!!)」
町の住民の避難活動の指揮を取っていた兵士は、避難がしていない町の住民の数と自分が見えている範囲だけでのスライムの数が、報告にあった数よりも数倍にも増えている事実に舌打ちしながら指揮を続けていく。
そんな避難活動をしている生徒や冒険者達以外のチユルの町を守る他の戦力とはいうと、
「結界が消えたぞ!!?」
「まだ町の住民の避難が完了していないんだぞ!?これ以上町中にスライム達を進めさせるなッ!!」
「オラッ!俺達が相手だスライム!!」
「主力部隊にスライムの相手をさせるなよ?主力部隊にはもっと危険なスライムやジェネラルスライムの相手をしてもらうんだからなッ!!」
「確かにそうだが無理はするな!危ないと思えば後方に控えている主力部隊に助けてもらえ!只でさえ戦力が限られているのだから、無理して負傷したら他の所にツケが回ってくるんだからな」
「へっ!これぐらいなら余裕余裕!「バンッ!!」〈キンッ!〉……っとあぶねえなぁーったく」
「馬鹿やろう!!油断するな!!たかがスライムでもこの数だ。油断したら殺られるぞ!?」
「ワリイワリイ。分かってるって……よくもさっきはやってくれたなッ!!お返しだッ!〈スパッ!!〉」
「ピギィィーーッ!?」
スライム討伐部隊は、雑魚払いの先行組とジェネラルスライムや危険度が高い亜種の討伐・スライム発生の原因の排除の主力部隊に別れ、先行組は結界が消える前から結界を覆うように広がり、結界が消えると同時にスライムを町中に出てこないように進み討伐していく。そして同時に先行組の後ろを主力部隊が控えるように進む。
そして、スライムの数が数だけに先行組だけでは取り零しがあるが、主力部隊や避難活動をしている者達などで先行組の取り零しを対処するスタンスだ。
主力部隊の者達も本命の対処と先行組の討伐の取り零し以外に、先行組の支援を行う。
しかし、主力部隊が手を出すのは飽くまで支援レベルである。先行組の役割である主力部隊の力を本命の敵にぶつけれるまで温存させることなので、主力部隊は先行組が劣勢になったり取り零した時以外は大人しく先行組の後方に控えていた。
そして、
結界が消えてから先行組が見える範囲のスライムを大体討伐を終え、町の住民の避難も粗方終了した頃、残りのスライムやまだ出てきていないジェネラルスライムなどの討伐を行う為、討伐部隊はスライムが進んで来た方向に足を進める。
スライムが進んで来た方向を進んでいると、時折隠れていたスライムが討伐部隊に襲い掛かるが、先程まで大量のスライムを討伐してきたこともあって襲い掛かってくるスライムの数はそこまでおらず、討伐部隊は隠れていたスライム達を問題なく処理していく。
そのまま進んで行くと討伐部隊は、イルマ達が最初にスライム達を発見した古びた建物の近くまでやって来た。
「………此処は……」
「………そうよ。私達が最初にスライムを発見した辺りになるわ」
「…………あの人を………私達が、見捨てた場所…………」
「………ッ……………(今度こそあのジェネラルスライム達を倒して、これ以上犠牲者を出さないぞ…………)」
『(イルマさん………皆さんもあの時のことを気にしてる………よし、いざって時は、今度は私が表に出て、これ以上皆さんの心に傷を作らないように私が皆さんを助けるのだからッ!!)』
イルマ達は、人を見捨てた場所に来たことであの時の光景が頭に過り、自分達のしたことやこれ以上スライムの犠牲者を出さないことを自分の胸の中で誓いを立てる。ミルンもそんなイルマ達の姿や想いを感じては、今度はあの時と違って自分が表に出て、皆を助けるのだと取り憑いているイルマの中で決意するのであった。
(………辛いだろ。アイツらは養成所の中でも一番年齢が低いことや優秀なこともあって、今までこんな経験をしたこともなかっただろう………皮肉にもアイツらが優秀だけに、状況から最善の判断をしてしまったことで、アイツらは人を見捨ててしまう行動を取った。………だけど、聞いた状況では見捨てて撤退しなければアイツらの命も無かった筈だ。……結局はどっちを選んでも後悔する結果になったであろうが、それでもお前らは割り切れないよな………悔しいだろうよ………)
イルマ達の様子を横目で見ていたナミノ教官は、事情を知っていることもあり、イルマ達の心情が想像が出来て拳を力一杯握りしめる。
(…………だがイルマ達よ。お前らが冒険者になるならこれは乗り越えないといけない壁だ。俺達も現役の時に何度も通って来た道だ。俺達以外の冒険者達も今お前らが感じている気持ちを経験してきたことがあるだろう。………突然の襲撃、連戦、情報に無い出来事、冒険者を続けていくとそんなことが何度も経験する。その中で、クエストの達成の為やより多くの人を助ける為等で仲間や人を見捨てたりすることが必要な時もある。…………乗り越えろ、乗り越えろお前ら。お前らなら出来ると俺は信じている…………)
ナミノ教官は、今回のイルマ達の出来事が冒険者を続けていくな通る道だと、何かを見捨てる必要が迫られる時が何度もあると、それでも冒険者になるなら乗り越えろ、自分の教え子が今回の出来事を乗り越えれると心の中で信じていた。
(その為にも、イルマ達が今回の出来事を乗り越えていく為やその心の傷を負わせた代償を払ってもらうぞスライムども……お前らは俺の生徒を深く傷つけたんだ………俺は絶対に許さないぞ?もし、逃げることがあれば追いかけても殺してやるからなっ!!)
ナミノ教官は、イルマ達のことを心配する一方で、そのイルマ達の心の傷を作ったスライムがいるであろう方向を見ては絶対に許さないと心に誓い、例え逃げようとしても逃がさないと心を燃やすのであった。
そんな心情を抱いているイルマ達やナミノ教官だが、周りの討伐部隊の者はそんなことを知らず、この先にジェネラルスライムが潜んでいるのかと息を飲み、先程までとは違ってゆっくりとゆっくりと警戒をしながら奥に進む。
そして、
古びた建物の中にスライムが潜んでいないかと討伐隊の中でも探知技能が得意な者が建物の中を覗いた時、
「ッ!?………あれは、ジェネラルスライムッ!?しかし、報告にあった数とは一致しないッ!?」
「おいッ!どうした?中の様子はどうだったんだッ!?ジェネラルスライムの数が何だ!!」
「へ、兵士長ッ!!こ、この建物の中に!じ、ジェネラルスライムが複数体、か、確認出来ますッ!?」
「何だとッ!?」
「「「「ッ!!?」」」」
次回は、明日か明後日の投稿になります。