第75話(涙の撤退)
今回の話は、最後に人が死んでしまいます。
人が死ぬのが嫌な方は注意してください。
では、異世界トラブルの続きをどうぞ!
イルマ達の目の前に現れた大量のスライム。
イルマ達にスライムからの攻撃が放たれる!
「ッ固有技能、【不浄聖鈴】発動!!」
ブーーン、ブーーン、ブーーン!!
ドン!、ドン!、ドン!、ドン!
シーラは、スライムからの攻撃を防ぐ為と目眩ましの意味で【不浄聖鈴】を発動し、【不浄聖鈴】で何重にも結界を自分達の目の前に張り巡らして、スライム達の攻撃を防ぎ、結界の光でスライムから自分達の姿を誤魔化してから近くの建物を使って気配を消してから隠れる。
スライム達は、結界の光でイルマ達の姿を見失い、イルマ達を探すように辺りをウロウロと見渡す。
そしてスライムから隠れたイルマ達は、気付かれないように小声で話し合いを行う。
「(イルマ!コイツらむちゃくちゃな数だぞ!)」
「(数だけじゃないわ!普通のスライムもいるけど、色んなスライムがいるわ!)」
「(……色々なスライムが集まって……色取り取りな状態。)」
『(確かに色々な色が広がって目がカチカチします~。)』
イルマ達の目の前に現れた大量のスライム達。そのスライムが多いのは数だけではなく、その種類も多くいた。
「(上手く言わなくてもいいよシーラ!しっかりミルン!ーー(スライムの数はともかく、先ずはスライムの種類を確かめないと)……【開示2】発動!!)」
ーブーーンーー!
イルマはシーラの言葉にツッコミを入れ、それからミルンにしっかりするよう声を掛けた後に、スライム達の情報を知る為に自分の固有技能【開示2】を発動させる。
(不味いぞ……この大量のスライムの中には色んな亜種のスライムがいるぞ!)
イルマの視界には【開示2】で視たスライム達の情報には、色々なスライムの亜種の情報が映し出されていた。
そのイルマの視界に映し出されていたスライムの亜種とは、
・普通のスライムに牙が生えた亜種のスライムキバ。
・身体の体液に毒を含み、紫色をしたポイズンスライム。
・金属の硬い身体を持ち、スチール色のメタルスライム。
・酸性の身体を持ち、茶色のアシッドスライム。
・魔力が高く初級の魔法を使え、水晶を着けたスライムメイジ。
・大きい身体を持ち、水色のビッグスライム。
等色々なスライムがいて、その中には身体に触れたり体液を飛ばすことで相手を溶かすことが出来るアシッドスライムという危険なスライムもいた。
(どうする?酸性の身体を持つアシッドスライムなんて危険なスライムがいてこの数のスライムと正面から戦闘を行うか?ーーーー嘘……え、あれって……まさかあの身体の色はっ!?ーースライムの上位種のジェネラルスライムっ!?)
固有技能【開示2】でスライムの情報を視たイルマは、アシッドスライムという危険なスライムもいる中どう戦うかと悩んでいた。そんな悩んでいたイルマの視界に、普通のスライムよりも色が濃いスライム……スライムの上位種、ジェネラルスライムの姿が映り驚くイルマ。
イルマは、驚きで声を漏らしそうになるのを必死に抑えながらも、そのジェネラルスライムのステータスを【開示2】で視る。そして、ジェネラルスライムのステータスを視たイルマは、この場での戦闘を避けて撤退することを決めた。
メラ達は、何時までしてもスライム達について何も言わないそんなイルマの様子にどうかしたのかと思い、イルマの傍にいたダンが小声のまま声を掛ける。
「(おい、どうしたイルマ?スライムのステータスが何か変だったか?)」
「(ダン………この場での戦闘を避けて、一旦撤退するよ。)」
「(?何を視たのイルマ。)」
「(……危険なスライムの亜種でもいた?)」
『(確かにこれだけのスライムの亜種がいたら、その中に危険なスライムの亜種が何種かいてもおかしくはないですね。それに、他のスライムの数も多いですし戦闘を避けて撤退を選ぶイルマさんの判断は正しいです。)』
ダンが心配してイルマに声を掛けたら、イルマから返ってきた答えが戦闘を避けて撤退することに、メラ達は危険なスライムの亜種がいたと勘違いをする。
「(違うよ。確かにアシッドスライムという危険なスライムの亜種がいたし、他にもキバやポイズン、メタルやメイジにビックスライムなんて亜種のスライムもいたけれど………)」
「(オイオイッ!?マジでか?)」
「(どんだけスライムの亜種がいるのよ!)」
『(そうですよね。まるでスライム展示会みたいです。)』
「(うん、そうみたい……。でイルマ、けれど何?)」
「(…………けれど、問題はあの大量のスライム達の中に、まさかのジェネラルスライムがいることだよ。)」
「「「『ッ!?』」」」
イルマからジェネラルスライムの存在を明かされたメラ達は驚く。
「(おまっ!ーーージェネラルスライムってスライムの上位種じゃねぇかッ!?)」
「(ジェネラルスライムってスライムよりもパワーやスピード、魔力など全てに置いて比較にならないぐらい上で、身体を変質させて剣や盾にして戦えるだけでなくて魔法も多少使えるスライムの上位種でしょう!?)」
「(…………ジェネラルスライム。魔物ランクに当てると………間違いなく、Bランクになる。)」
『えぇーーーッ!!何でーーそんなスライムがこんな町中に出現しているのですかーー!?』
「(確か、ジェネラルスライムの発生条件がスライムが100体以上や複数のスライムの群れが集まった際に、スライム達の纏め役を決めようとスライム達が争ってる時に進化してなるはずだけど……)」
「(スライムが100体以上……)」
「(………これだけの亜種がいたら、複数のスライムの群れの条件に当てはまるんじゃないの?)」
『(ギャアーーッ!!見事にジェネラルスライムの発生条件が当てはまってるじゃないですかーー!!)』
「(成る程。確かにジェネラルスライムがいてもおかしくない。)」
『(いや、シーラさんは何普通に納得しているのですか!)』
「(どれだッ!?どのスライムがジェネラルスライムだッ!?)」
「(あのスライム。普通のスライムよりも色が濃いよね?あの色の濃いスライムがジェネラルスライムだよ。)」
「(あれね……。)」
「(確かに普通のスライムよりも色が濃いスライムがいる。)」
『(本当です!1体だけ普通のスライムよりも色が濃いスライムがいます!!)』
イルマからジェネラルスライムの発生条件を聞いたメラ達は、目の前に広がっている大量のスライムを見ながら、ジェネラルスライムの発生条件が見事に当てはまっていると呟く。そして、メラ達はイルマからどのスライムがジェネラルスライムか聞くと、イルマは色が濃いスライムに指を差して皆に教える。
「(分かった?だから、幾ら町中にスライムがいて町の人が危ないとはいえ、これだけの亜種のスライムとジェネラルスライムを相手に正面から戦闘は危険過ぎる。しかも、ジェネラルスライムが発生したということは、このスライムの中にはもしかしたらスライムロードが発生している、もしくは今から発生する可能性がある。例えスライムロードが発生したり、いなくても流石にスライムの上位種との戦闘準備はして来てないしね。)」
「「「『えっ、スライム………ロードッ!?』」」」
メラ達は、イルマからスライムロードが出現している、もしくは発生するかもしれないと言われて、本当!?と確認する。
「(あくまでも可能性、可能性の話だよ?ジェネラルスライムが発生しているし、ジェネラルスライムが出現するのはスライムロードが発生する前兆みたいな物みたいだからね。)」
【スライムロード】
スライムの最終進化であり、その力はAランク以上。過去には町1つや2つ、スライムロードの手によって地図から消えたと記録がある程だ。
「(その可能性を考えたら僕達だけじゃあ戦力が足りない。だから1度撤退して、町の冒険者や兵士の力を借りないと………念のために教官達にこのクエストのことを伝えるように手配して良かった。流石にスライムロードを想定してないと思うけど、町中にスライムといえど魔物が出現したと聞けば、万が一に備えて戦力を準備していると思う。)」
「(そうだな。ナミノ教官なら動いてくれているだろ。)」
「(そうね。なら、イルマの言う通りに早く撤退しましょう。)」
「(うん………ッ!?ーー待って皆っ!?あそこに人影が!?」
シーラの言葉にイルマ達全員が一斉にシーラが示す方向を見る。そこには、イルマ達の反対側に人がいて、大量のスライムのせいで逃げるのにも逃げられない人がいた。
『ッ!?ーーー本当ですッ!シーラさんの言う通り、スライムの向こう側に人がいますッ!?』
「何だってッ!?」
「まさか逃げ遅れッ!?」
「ッ、助けないとッ!?」
「待ってシーラッ!!」
「何でシーラを止めるのよイルマッ!!」
「そうだぜイルマッ!何で止めるんだよ!早く助けないと危ないだろッ!?」
「ッッ!ーー駄目だ!残念だけど助けにはいけない!!」
「………………ッ」
逃げ遅れた人を思わず助けに行こうとしたシーラを止めるイルマ。シーラを止めたイルマに何故止めると怒って抗議するメラとダン。イルマに助けを止められて何かを察するシーラ。
「何で助けに行くのを止めるイルマッ!?ーーーまさか……まさか逃げ遅れた人を見捨てる訳じゃないよなっ!?」
「ッ!?ーーイルマ、まさか本当に見捨てるつもりなの?」
「ッ!?…………」唇を噛み下を向くシーラ。
「…………そうだよ。あの逃げ遅れた人を助けには行かない。見捨てて撤退するよ。」
「ッ!!?」ポロリと涙を流すメラ
「オイッ!!何を、言っていやがるんだイルマァァア!!」
イルマの発言に憤怒の表情を浮かべてイルマに掴み掛かるダン。
そして、イルマ達が助ける助けないと言い争っている間にもスライム達は、逃げ遅れた人に気付いては逃がさないように包囲していく。
その光景を見ながらイルマは、自分に掴み掛かるダンに逆に胸ぐらを掴み返し、ダンの声よりも大きな声で今の状況を叫ぶ!
「よく見ろダンッ!!この状況であの人を助けるのは無理だッ!!助けに入っても、僕らが助ける前にあの人はスライム殺される!仮に助けが間に合ったとしても、その時は僕らはあの大量のスライムに包囲されて結局僕らも一緒に殺されるだけだ!!」
「ッ!?……っ助けが間に合わない、助けても結局殺されるからって……どうしようもないから、だから!だから見捨てるって言うのかよッ!!」
「そうだよ!!!」
「何でそんな簡単に見捨てることを判断してやが『落ち着いて!!落ち着いて下さいダンさん!ーッイルマさんを、イルマさんをよく見てください………』………ッ!?」
堂々と人が死ぬのを見捨てると言うイルマに、怒りが爆発してイルマを殴ろうとするダンだったが、その前にミルンがダンとイルマの間に入って、イルマをよく見てくださいとダンに伝える。
「ーーアッ。い、イルマ、お、お前………」
ダンは、ミルンの言葉に釣られてイルマの姿をよく見ると、イルマの手が力一杯に握り締められ、イルマは衝動を抑えるよう唇を噛んで血が出ているではないか。
先程まで頭に血が上っていたダンだったが、そんなイルマの姿を見ては頭の血が下がっては落ち着いていく。
『イルマさんは、簡単に人が死ぬのを決めた訳じゃなくて、手が無いから、皆さんを死なす訳には行かない為に!あの逃げ遅れた人を見捨てて撤退することを決めたのです!!』
「ミルン………」
「……分かっている。……イルマの判断が正しい。」
「あ、………イルマ、…………すまん。」
「ッ………いや、皆の気持ちが正しいよ。……でも、本当にこの状況であの人を助ける方法が無いのが現実………ごめん。」
「いや、イルマは間違っていない。イルマの言う通りだ。」と言って、少しの間その場で立ち止まっていたイルマ達だったが、自分達の気持ちを抑えることをしてから、イルマ達は逃げ遅れた人に背を向け、下を向きながら、撤退していくのであった。
そして、
スライム達が逃げ遅れた人に飛びかかり捕食していく。
撤退していくイルマ達は、逃げ遅れた人がスライム達に捕食される際に上げた悲鳴が聞こえて、泣きながらも振り向かずに養成所の方へと撤退するのであった。
次回、今日の夜遅くか、明後日の朝に投稿予定になります。