第72話(冒険者養成所・3年目)
今回から冒険者養成所3年目に突入になりました!
これでイルマ達は、冒険者養成所での生活は残り1年になりました。残り1年でもトラブルの中に入って行きます。
では、異世界トラブルの続きをどうぞ!
イルマ達と勝負したトルクは、今度は別の意味でイルマ達に絡んでいた。
イルマ達と勝負したトルクは、イルマ達の実力と自分のことを想ってくれた言葉に心を打たれ態度を改める。トルクが態度を改めたことには満足していたイルマ達だったが、今度は別の意味でトルクに頭を悩ます。
それは、態度を改めたトルクは度々イルマ達の元に訪れては、自分のこれからについての相談や戦い方の指導をイルマ達にお願いしていた。
イルマ達も最初は、トルクが態度を改めたこともあり少しならっとトルクの頼みを聞いていたが、それが続くので教官や他の人にも相談や指導してもらうようにと伝えるが拒否されるのだ。
トルクの態度を改めてトラブルから立ち去ることに成功し、一安心していたイルマ達だったが、まさか今度はトルクの態度が改めたことによって頭を悩ませるとは思わなかった。
ーいや、良いことだよ?人に素直に助言やお願いを出来るようになったことは。前みたいな横暴な態度に比べたら全然良いことだけど…………多すぎるよ。そりゃ~僕達のことを慕って相談や指導をお願いされるのは嫌な気にならないけれど限度があるよ。ーーたまになら良いけど、こう毎日のように来られたら困るよトルクさん……。
イルマ達は毎日のように来るトルクに困っていた。
何故なら、イルマ達は普段から養成所の授業が終わったら、それ以外の時間は訓練やクエストといった自分達の成長の為に時間を使っており、トルクに割く時間が余り無かったのだ。
勿論、イルマ達も休みの日ぐらいは作っている。そりゃ~イルマ達だって遊びたい時があるし、休みたい時だってある。それに、休みなく訓練して身体を鍛えるよりも適度に身体を休めた方が効率的なことをイルマが前世の知識で知っている為だ。
だからイルマ達は、訓練やクエストの合間に休みの日を作り、休みの日は同じクラスのマルクスやトイっといった仲の良い生徒、魔法やトルクとの勝負の時にお世話になったカガリ先輩との交流をしたり、町に遊びに行ったり、純粋に身体を休めたりしていた。
しかし、基本的に休みの日以外は自分達の成長の為に時間を使っているイルマ達は、毎日のように相談や指導を頼みに来るトルクに割く時間が無い。だが、態度を改めたトルクのお願いはまともなこともあって拒否しにくく、その為今度はそのことでイルマ達は頭を悩ましていた。
そして、そんな態度を急に改めたトルクに、あの勝負の場にいた者以外は、驚いて今度は何かがあるのかと養成所内で騒ぎが起きていた。
横暴な態度を取っていたトルクが急に態度を改めたことには当初、養成所の皆は何があるのかとヒヤヒヤしていたが、少しして何処からかイルマ達との勝負の話が漏れ、トルクの変化の理由を知った皆はそのトルクの変化に納得する。
何故なら幼いイルマ達は、養成所の中でも成績が優秀なこともあって目立っていた。その為、イルマ達が養成所に入学した当初イルマ達に絡む生徒達がいたのだ。しかし、パーティー全員が固有技能保持者といった規格外なパーティーメンバー(+妖精付き)だった為、イルマ達に絡んだ生徒は見事返り討ちにあったのだ。
その事は養成所では知れ渡っていた為、イルマ達と勝負したトルクがイルマ達に負けて態度を改めたことに「ア~~、アイツイルマ達に負けたのか。道理で急に態度を改めた訳だ……納得。」っと言った感じに納得し、トルクの変化に生徒達のヒヤヒヤは解消されるのであった。
そんなトルクのお願いを可能なら何とか時間を作っては対応するイルマ達。
そして、トルクは自分がイルマ達に相談と戦い方の指導されていく内にドンドン成長していることもあって、更にイルマ達に懐いていくトルク。そのことでドンドン自分達の元にやって来るようになるというトルクに、自分達の成長の時間を確保する為に頭を悩ますイルマ達。
しかし、イルマ達はトルクとの当初とは逆転した関係を作ったこともあり、養成所内で更に目立ち、影響力を持っていくのであった。
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あれからトルクという貴族とのトラブルを解決したこともあり、イルマ達や他の生徒達は何のトラブルに見舞われることもなく、養成所には平和な日常が過ぎていた。
しかし、トラブルが無いとはいえ、生徒達には教官達から授業で難しい課題が出されたり、クエストで苦労したり、自分達の力をもっと高める為に訓練したりと忙しい日々を過ごしていた。
そんな日々を過ごしていると、いつの間にかイルマ達は、養成所の最高学年である3年生になっていた。
イルマ達が養成所の3年生になった頃、イルマ達の元に、手紙と【森の異変】を解決した証拠である装備やアイテムが戻って来た。
手紙には、イルマ達が【森の異変】を解決したという事実が、その証拠として冒険者ギルドに提出した証拠である装備やアイテムを調べて漸く、冒険者ギルドの上層部の人間にその話が事実だと認められたということと、提出した証拠である装備やアイテムは、ポルカ村のギルドマスターとの間に交わした返却証明のこともあり、持ち主であるイルマ達の手元に戻って来た。
イルマ達が【森の異変】を解決した事態の信じるのに時間が掛かっていたことに対してイルマ達は、
「やっとかぁ~」
「随分と時間が掛かったわね……」
「………仕方ないわ。普通、当時の私達子供が大人が苦労している問題を解決したなんてとても信じれる話じゃないもの」
『でも、証拠が有るのに信じれないなんて頭が固いんですね?』
「まぁまぁ。結果的に信じてもらえたんだからいいじゃないか。装備やアイテムも僕達の手元に戻って来たんだから。」
と冒険者ギルドの上層部に対して事実を信じる為に事実確認に時間を掛け過ぎていたことにダンとメラやミルンが不満を漏らしていた。そんな3人にシーラとイルマがとても信じれる話じゃあなかったと諌める。
そして、【森の異変】の解決した証拠である装備やアイテムが手元に戻って来たことでイルマ達の持ち物は、ヒルゼとの魔道具を合わせて更に充実になったことになる。
そのことに喜ぶイルマ達。だが、気づいているだろうか?イルマ達の持ち物は、イルマの固有技能である【ガチャ】で得たアイテム以外でも冒険者になっていない者が持つには分相応の持ち物ばかりだ。
イルマ達の持ち物は、魔道具が多数あり、普通の冒険者では実力や運、金銭的な面で持つことが出来ない程で、もし、イルマ達の持ち物みたいに魔道具を多数持つ冒険者がいるとすれば、貴族や上級冒険者、金持ち等から支援を受けている冒険者位であろう。
しかし、イルマ達は(少なくとも今は)そんなことに気づかなく、実力以外でも装備やアイテム面でも普通の冒険者から離れていっているが、当人達は純粋に自分達の装備や持ち物が戻って来たことを喜んでいた。
そして、【森の異変】の解決した証拠の品が戻って来て喜んでいたイルマ達は3年生になってもクラスはAクラスを維持していた。だが、残念ながら3年生になった時は2年生の時とは違い、Aクラスの生徒全員がAクラスになった訳では無かった。
そう、養成所に入ってクラス分けした当初にナミノ教官が生徒達に言っていたクラスの昇格と降格が今年は有ったのだ。
新しくBクラスからAクラスに昇格したのは男性の狼の獣人であり、名はドーグル。イルマ達の同期の中では唯一の獣人だ。
ドーグルが選んだ職業は、狼獣人が満月の日、満月の光で肉体を強化されるのと同様の効果を魔力は使用するが、職業技能を発動した際に得れる職業である【魔鏡師】である。
ドーグルの肉体的な力は職業と種族的な力が合わさって、冒険者として中級クラス位の力があるAクラスの生徒達の力をを軽く超える。
イルマ達も、ドーグルの肉体的な力には闘気や魔力、技能等を使わないと勝てない程だ。
そんな驚異の肉体的な強さを持つドーグルだが、養成所入学当初は、獣人の種族的な特性もあって魔法の適正が低く、そのことでAクラスに入るには魔法の成績が足らずBクラスに分けられていた。
しかし、1年生の時と2年生の時に種族的に適正が低かった魔法を訓練で鍛え、見事3年生になった時に教官からその実力を認められ、3年生からはイルマ達と同じAクラスに昇格し、代わりに今までAクラスで伸び悩んでいた短剣使いカリンがBクラスに降格したのであった。
「昇格おめでとうドーグル。」
「おめでとうさん!」
「歓迎するぞ!」
「Bクラスに降格したカリンには悪いが、獣人であるドーグルがAクラスに昇格したのは同じAクラスの俺達には良い刺激になるぜ!」
「これからは競い合う仲だが同じクラスになったんだから、宜しく頼むよ!」
イルマ達、Aクラスの生徒達は、3年生になってから昇格してきたドーグルの力を認め、降格したクラスメイトに少し後ろめたい気持ちを抱きながらもドーグルの昇格を喜び歓迎する。
「お前パーティー決まっているか?決まってなかったら俺達とパーティーを組んでくれないか?」
「いや、アイツらのパーティーよりか俺達のパーティーを組んでくれよ!俺達のパーティーは、後衛や中衛は強いけど、前衛が少し弱いんだよ。だから狼獣人であるお前が俺達のパーティーを組んでくれたら万全なパーティーになる。それに俺達のパーティーは誰も獣人とか気にしないぜ?」
「馬鹿野郎!そんなこと俺達のパーティーも気にしないわっ!」
「ち、ちょっと待ってくれっ!俺はまだ余り皆のことが分からないから、パーティーを組むなんて直ぐには決めれない!」
「何ならお試しでもいいぞ?」
「あっ!狡いぞ!!ーードーグル!俺達も俺達も!一回パーティーを組んでから決めてくれたらいいからさ!」
「オイ!先から何だよお前っ!俺達の方が先にドーグルに声を掛けたんだからなッ!」
「アァッ!?ーーヤンのかコラァッ!!」
ーおぉっ?何だよ?ガイお前ヤるのか?
ーいいぜダブチ?ドーグルのパーティーの勧誘を邪魔をするならヤってやるよ!!
ドーグルを自分達のパーティーにと勧誘していたガイとダブチが熱くなって、ドーグルの目の前で揉め始めた。
「お、おいっ!………アーー、困ったぞこれ………」
(揉め始めたガイとダブチに困り、タジタジになるドーグル。)」
しかし、ドーグルの歓迎の中、Aクラスのガイとダブチが自分達のパーティーで前衛の力に不安を覚えていたこともあり、パーティーの前衛達に予め話をしていたこともあって、狼獣人であるドーグルの力を自分達のパーティーに組み込みたいガイとダブチがドーグルに自分達とパーティーを組んで欲しいと勢いよく勧誘する。
だがパーティーに勧誘されたドーグルは、まだ余り知らないクラスの生徒達とパーティーを組むのに消極的であった。
そんなドーグルにパーティーに勧誘していたガイとダブチは、お試しでもとドーグルを誘う。すると、ガイとダブチは、ドーグルを勧誘している内に熱くなっていき揉め始める。
そんなガイとダブチの様子に困るドーグルだが、ガイとダブチと同じAクラスのソフミが見かねて困っているドーグルに助け船を出す。
「ガイとダブチ!!ーー落ち着きなよ。アンタらのせいでドーグルが困っているじゃない。大体、そんなに勢いよくパーティーを組んで欲しいと言われ、揉め始めたら誰でも困るわよ?ーーそれに、パーティーの参加は本人の意思で決めることだから貴方達が無理に勧誘や揉めるのは冒険者としてマイナスな行動よ?」
「更に言えば、無理にパーティーを組んでも連携等に影響して今よりもパーティーの状態よりも悪くなるかもよ?」とソフミは、ガイとダブチに付け加えてドーグルの勧誘のやり方の注意をする。
ーーうっ!………悪い!ドーグルにパーティーを組んで欲しくて熱くなり過ぎちまった……。
ーーお、俺もだぜ………。
ーー分かればいいのよ。じゃあそれが分かったなら次はどうする?
熱くなり揉めていたガイとダブチは、ソフミに注意されて自分達が揉めている姿に困った様子のドーグルを見て、自分達がドーグルに無理を言っているのを自覚する。
「…………そうだな。無理にパーティーを組んでも逆効果だしな。……ドーグル!無理言ってしまったけど俺達はいつでもパーティーを組むのは歓迎だからなぁっ!!」
「………だな。悪いドーグル。熱くなりすぎて迷惑いきなり掛けてしまったけど俺達がパーティーを組んで欲しいのは事実だから、気持ちが決まったら声を掛けてくれ!!」
「あ、ああ……。もし、パーティーを組みたいと思った時、その時は声を掛けさせてもらうよ。」
熱くなっていたガイとダブチは、ドーグルに謝罪し、ドーグルも謝罪されたこともあり、ガイとダブチ達のことを許し、自分がパーティーを組みたいと思ったらその時には声を掛けることをガイとダブチに約束する。
そのドーグルのパーティーを組みたいと思った時に声を掛けてくれるという言葉を聞いたガイとダブチは、ドーグルと今自分達とパーティーを組むのを諦める。
◆◇◆
それを教室内に居て見ていたイルマ達は、そんなドーグルのパーティー争奪戦の様子を教室の隅で見ており、トラブルがソフミのお陰で大きくならない内に収まり、自分達がトラブルに巻き込まれずに済んだことに安心していた。
『……ドーグルさん災難でしたね。Aクラスに昇格して直ぐに凄い勧誘と揉めごとに巻き込まれましたね…………。』
「もう本当よ!あんな相手の気持ちを聞かない勧誘なんて迷惑に決まっているのに、皆人の迷惑考えずに自分達のことだけを考えているんだから!!」
「………ドーグルにとってはいい迷惑だった。」
「そうだな。ドーグルからしたら自分の気持ちを聞かず勧誘してきて、それでいて勝手に熱くなって揉め、勝手に解決しているだからなぁ~~」
「そだね。……でも、ソフミさんのお陰でガイ君とダブチ君は、反省してドーグル君に謝罪して、当事者のドーグル君自身がその事を許しているんだからこれ以上この話は言いっこなしだよ。」
「分かっているわよ。」「俺も分かっているぜ。」「………うん分かってる……。」
ガイとダブチのドーグルの気持ちを無視したパーティー勧誘の仕方に対して腹を立てるイルマ達。
しかし、既にガイとダブチがドーグルに謝罪し、ドーグルが許していることからイルマはメラ達にこの話はおしまいと告げる。
そして、ドーグルパーティー争奪戦が終わった頃、教室にナミノ教官が入って来た。ナミノ教官は授業を始める前に、イルマ達Aクラスの生徒達にBクラスに降格したカリンのことは残念だったなと伝えた後、新しくAクラスに加入したドーグルと共に、イルマ達生徒達は3年生になったんだから残り1年間気合いを入れて励めよと生徒達に告げるのであった。
次回投稿は、明日か明後日予定です。