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異世界トラブル  作者: 海路希望
4章~冒険者養成所編~
80/146

第71話(トルク(貴族)との勝負の決着)

お待たせしました。


はやり目が漸く治り、投稿を出来るようになりました。今回にて、トルク(貴族)とのトラブルにケリがついて、2年生編は終わりになります。

(キリが良いところまで書いていたら過去最高に長くなりましたが…。)


では、異世界トラブルの続きをどうぞ!




トルク達が人工ダンジョンを先に潜っていった。

イルマ達は、そのトルク達の姿を見た後、自分達が人工ダンジョンを潜るまでの待っている時間で先程までについての話をしていた。



「やっとアイツら、ダンジョンに潜ったわね。…………これで()()()()にいったわね。。」


メラの言葉にイルマ達は頷く。


「そうだね。作戦の第ニ段階が無事に進んでよかったよ。」


「だな。作戦の一段階が作戦実行に移す為の許可や人工ダンジョンの実験が上手く行くかだったからな。」


「作戦二段階目………トルクが勝負に乗って先にダンジョンに潜ること。」


『そして作戦三段階目は、勿論イルマさん達があの貴族達よりもダンジョン攻略とレポートも記録を上回ることでしたね?』


「うん。自分の意思で先にダンジョンを潜ってもらうことで、ダンジョン内の仕掛けについて言い訳をさせず、僕らはトルクさん達の記録を見てからそれを上回るだけ。仮に先にダンジョン内に潜られることで、ダンジョン内に罠を仕掛けられてもね。」



そう、イルマ達がトルク達に先にダンジョンを潜らしたのは作戦だったのだ。イルマ達が損得気にせずにダンジョン攻略の順番をトルク達に譲ったのは、例え先にダンジョン内に入れるメリットを捨てても、トルクが自分の意思で先にダンジョン内に入ることで、ダンジョン内に新しく追加された罠や魔物の強化について等を後になってから言い訳の理由にされない為だったのだ。


もし、これで後になってからダンジョン内のことについてを言い訳の理由にした時には、イルマ達は「おれ?僕達も同じ条件ですよ?それに貴方は、ダンジョンに先に入れるメリットを選んだ上に、ダンジョン攻略した後に何も言わなかったじゃないですか。それなのに、僕達がダンジョン攻略した後から言うのは………」とトルクの言い訳を叩き潰せるからだ。



「それにアイツらがダンジョン内に罠を新しく仕掛けても、私達にはイルマの固有技能【開示】が有るから問題ないわけだし。」


「だな。」


「逆に汗を流して罠を一杯仕掛けたらいいのに。その分、攻略に時間が掛かって私達が得する。……フフ。」



ーどんな罠を仕掛けているんだろうな?ハハハ!!


ーそうね、でも頑張って仕掛けた罠は無駄になるでしょうけどね!残念ね!ヒヒヒヒ!!


ー無駄な努力。フフフフ………。



『……………ちょっと私、少しあの貴族の方達が可哀想になってきました。端から見て公平なルールや貴族側が有利に見えるこの勝負、実際はどう足掻こうともイルマさん達の手の平の上で踊っていることに…………』



ミルンは、トルク達がどう足掻こうともイルマ達の手の平で踊っていることに少しトルクに同情する。


ミルンがトルク達のことを同情している中、メラ達はトルク達がダンジョン内で無駄な努力をしているのだろうな~とその光景の様子を想像しては喜んでいた。


そんな皆の様子を見たイルマは………



(トルクさん達が無駄な努力をしている姿を想像しているんだろうけど、皆嬉しそうだなぁ~………まぁ皆の気持ちも分かるけど。実際、2年生になってからあのトルクって貴族のせいで僕も含めて、皆普段から苛立ちやストレスを溜めていたからなぁ~…………だからこそ、この勝負をする作戦を決めた時、皆は今まで溜めていたストレスや苛立ちを全部ぶつけてやる!とやる気に燃えていたからね。)



イルマは、皆の気持ちを察して苦笑する。その後、暫くメラ達はトルク達が苦労している姿をネタに話をしていたが、イルマが作戦に影響が出ないように、頃合いを見計らって諌めるのであった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「ほらお前達!ドンドン罠を仕掛けろ!!アイツらがこの僕に勝負を仕掛けたのを後悔するように罠のレベルは気にしなくてもいい!!」


ーはい!!分かりました!!


「そうだ!もっと仕掛けてアイツらがダンジョン攻略が出来ないようにしろ!!ハハハハ!馬鹿な奴らめ!考えもせずに先にダンジョンを潜らせるからこんな目に合うんだぞ。この僕に勝負を仕掛けたんだ、無様に「助けて~~」と言わして、絶対に後悔させてやるぞ~~!」



そして、先にダンジョン内に潜ったトルクは、メラ達の想像通りにダンジョンを攻略しながらもいそいそと男達に罠を仕掛けさせては、罠にかかるイルマ達の姿を想像しては嗤っていた。


その後トルク達は、カガリがダンジョン内に仕掛けた罠や強化された魔物に多少梃子摺る。しかし、普段から貴族と威張るトルクの実力は1年生の中でも高く、その後その力を発揮しては人工ダンジョンを攻略するのであった。




そして、暫く時が経った後ーー




「おい、お前達しっかり運べ!その魔物達の死体の鮮度が悪くなれば勝負の勝敗に影響するんだからな!!」


トルクが配下の男達に、魔物の死体を運ばせながら人工ダンジョンから出てきた。

配下の男達は、トルクが何も手伝わないこともあり、そのトルクの分も魔物の死体を必死に持って運んでいた。


そして、人工ダンジョンの外に出て来たトルクは、配下の男達に魔物の死体を教官の元まで運ばせ、ダンジョンの攻略の証と共にその魔物達の死体を見せるのであった。



「どうですか?これが僕の実力ですよ。」


「ほぉー、流石トルク君ですね。この魔物の数を倒した上でダンジョンを攻略するなんて。」


「確かにな。まぁ、そのせいかダンジョン攻略には少し時間が掛かったみたいだがな。」


「フン。それは初めてダンジョンを挑戦したせいだ。次からはもっと早くダンジョンを攻略出来る!(まぁ実際は、ダンジョン攻略に時間が掛かったのは奴らに対して罠を仕掛けたせいだがな)」


ナミノ教官の攻略時間に対しての指摘に、トルクはダンジョン内にイルマ達に対して罠を仕掛けていたせいで攻略時間が掛かったことを伏せて、初めてのダンジョン攻略のせいだ、次からはもっと早く攻略出来ると切り返す。


そんなトルクの言葉にナミノ教官も「それもそうだな」と 納得する。


そして、トルクはイルマ達が自分達がダンジョン内に仕掛けた罠にかかる様子を想像し、内心でイルマ達のことを嗤いながら次はお前達の番だとイルマ達にダンジョン攻略を促す。


イルマ達はそんなトルクの様子を気にも止めずにダンジョン内に入っていく。

そのイルマ達の様子が気に入らないトルクは、「(せいぜいダンジョン内で後悔しろ!)」と内心でイルマ達を罵倒していた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



人工ダンジョンの中に潜って行ったイルマ達は、トルクとの勝負に勝つ為に今回は固有技能の使用を解禁していた。



「【メニュー2】【開示2】発動!………うん、皆ダンジョンの奥に繋がる道はこっちだよ。……やっぱり途中の道に、カガリ先輩が仕掛けたと思う罠とは別の罠が結構仕掛けられているね。」


「やっぱりな。思った通りアイツが先にダンジョン内に入りたかったのは勝つ為に罠を仕掛ける為だったみたいだな。ーーでも」


「うん。それは僕の固有技能でお見通しだから問題ないよ。」


「なら予定通り、アイツに勝つ為にイルマはそのままダンジョン攻略最短ルートと罠の回避に力を注いでちょうだい。カガリ先輩が強化した魔物達は、私とダンだけで倒すわ。」


「おう!魔物退治は俺とメラに任せろ!!」


「………私とミルンは、皆のフォローしつつ、レポートの為にダンジョン内の様子と罠について調べる。」


『はい。任して下さい!!全力で皆さんのお手伝いをしますよ!!』


「……全力じゃなくてもいいからドジは止めてね。」


『アーッ!!酷いですシーラさん!!人がやる気を出して皆さんのお手伝いをしようとしているのに!!』


「いや普通そう思うだろ?」「シーラの気持ち分かるわ。」


「いやいや、皆そこはフォローしてあげてね?」


「私は間違ったことは言ってない……。ミルンの普段の様子から妥当なことを言ったまで。」


『ううう、私の味方はイルマさんだけですー。……なら私は、そんなことを言うシーラさん達が驚く程の完璧な仕事をしてみますよ~だ!!』


「「「(で、ドジを踏む(のよね)(でしょ)?はい、フラグが立ちました!)」」」


「(うん。見事ドジを踏むフラグが立ったな~~)」


『よ~~し!皆さんが驚く姿を見せてやりますよ~!!ーーーーーあれ?……今から行くのはこっちでしたっけ?』


「「「おいッ!?早速かよ(なの)!?」」」


『ち、違いますよッ!?こ、これは、じ、ジョークですよ!』


「「「ジーーー」」」ー疑いの目ー


『じゃ、じゃあ行きますよ皆さん!』


「「「(本当に大丈夫(かぁ~)(なの)?)」」」


「(不安だぁ~~)」


イルマ達は、ミルンのドジを踏むことに不安を覚えながらも、普段成長するために制限している固有技能や力をトルクに勝つ為に解放し、各自役割分担をしてダンジョン攻略に乗り出すのであった。



その頃トルクは、イルマ達が人工ダンジョンに潜ってから出てくるまでの間、イルマ達がダンジョン内で自分達が仕掛けた罠に嵌まっている姿を想像しては上機嫌にレポートを作成していた。



そして、トルクがレポート作成を終えて待つ間どうしようかと思っていた時、人工ダンジョンの入り口にまさかのイルマ達の姿が見えて来た。

トルクは、あまりにも早くにダンジョン内から出てきたイルマ達の姿を見て驚く。



「(馬鹿なッ!?幾らなんでも早すぎるッ!!例えダンジョン内の罠や魔物との戦闘を回避したとしても、ダンジョン内の捜索でもっと時間が掛かる筈だ!!……………そうか、奴らダンジョン攻略を諦めたんだな?そうに決まっている!!現に、奴らは魔物の死体を持っていない!!僕が仕掛けた罠に嵌まったり、強化された魔物にビビってはダンジョンの攻略を諦めたからこんなにも早くにダンジョンから出てきたに違いない……!!)」



自分の想像以上に早くにダンジョン内から出てきたイルマ達の姿を見たトルクは、ダンジョン内から出てきた手ぶらのイルマ達の姿を理由に自分の頭の中で勝手に攻略を諦めたと想像して納得していた。


そんな勝手に納得しているトルクを余所に、教官達やカガリはイルマ達にもうダンジョンを攻略したのかと声を掛ける。



「はい。ダンジョンを攻略してきました。」


「(何ッ!?ーダンジョンを攻略しただと?一体どういうことなんだ!?)」



イルマの教官達からの問いかけ返答に驚くトルク。

そのイルマの返答に、トルクだけではなく、教官達やカガリもイルマ達のダンジョン攻略時間の早さに驚く。


そして教官達は、イルマの返答に本当かどうか確かめる為、ダンジョン攻略の証の提出やダンジョン内についての質問をイルマ達に問いかける。


イルマ達は、教官達の反応を予測していたのか、慌てる様子もなく、背負っていた鞄から攻略の証やダンジョン内の魔物の死体から出していく。そして、その鞄の見た目よりも多くの魔物の死体の数を出していき、周りの人間を驚かせる。それについてはイルマ達が持っていた鞄は魔道具であることを説明することで納得した後、ペラペラとダンジョン内の様子を語っていくのであった。



「ーーーだから今回のダンジョン内に出現した強化させた魔物は、魔素の影響の為かそこまで数は出現しませんでした。その為、総合的にはダンジョンの攻略難度は余り変化していない印象でしたね。でも、出現する魔物の強化の実験は成功だと言ってもいいと思います。」


「それはいい報告だね。これで、建前であった今回の人工ダンジョンの実験についてアタシは父に大きい顔をして話が出来るわ。」


「それは良かった。建前であったが、実験が成功したことで俺達も今回の件で協力した甲斐があった訳だ。」


「そうですね。今回、協力してもらった僕達の立場的にもそれは良かったです。」


「それでは、この攻略の証と魔物の死体の数、ダンジョン内の様子のことについてしっかり答えれることからイルマ君達はダンジョンをしっかり攻略したと見てもいいですね。後は、勝負の勝敗についてはイルマ君達がレポートを書いている間に、此方で罠の回避数等を採点してから結果を発表にしますね。」



イルマ達の話を聞いたカガリやナミノ教官は、その話の内容に喜び、タダシ教官も攻略の証や魔物の死体の数やイルマ達の話の内容からダンジョン攻略を認め、イルマ達がレポートを書いている間に罠の回避数も採点して勝負の勝敗を発表すると言うのであった。


その話を聞いていたトルクは、イルマ達の予想外のダンジョン攻略の結果に、自分がダンジョン攻略した時の余裕は無くなり、イルマ達がレポートを書いている間、勝敗についてドキドキして待っていた。



そしてそれからイルマ達がレポートを作成終了し、そのレポートを教官達に提出しては教官達は、そのレポートを読んでから2人で今回の勝負について2組の攻略結果について話し合う。


その教官達の話し合いの様子を攻略時間や倒した魔物の数が劣るトルクはドキドキして見ている。反対に今の所、罠の回避数以外ではトルクの記録を超えていることもあり、勝利に自信があるから平常心で待つイルマ達。


そんな対称的な2組が、今回の勝負の勝敗の結果発表を待っていると、話し合いが終わったのか教官達はトルク達とイルマ達の前に歩いてくる。



「(どうなったんだ!?僕が、この僕が勝ったのか?それとも負けたのか?どっちなんだ!!)」



ダンジョン攻略の時間や倒した魔物の数が劣るトルクは焦っている。その為トルクは、後は罠の回避数がイルマ達よりも超えていることを勝負の勝敗がどうなったんだと思いながら祈る。


そして、ついに教官達の口から今回の勝負の勝敗が明かされる。



「……………今回の勝負の勝敗は、………………イルマ君達の勝利!!」


「ッ!?」


「ヨッシャアァーー!!」 「フン、当然よ!」 「……勝った!」 『皆さんの勝利!良かったです~』 「(ふ~う……勝ったと思っていたけどこれで一安心だね。)」


自分達の勝利に喜ぶイルマ達と負けにショックを受けるトルク。


ーーこの僕が……負けた!?………勝つ為に卑怯なことまでしたのに……それでも負けた、何故………何故なんだ?コイツらはそこまで凄い奴らなのか?



そして、タダシ教官の口から自分が勝負に負けたと聞いたトルクは、薄々感じていたイルマ達の実力を自覚し始める。



「ちなみに勝利の理由だが、イルマ達の方が明らかに攻略時間の早さ、魔物の討伐数でもトルク君よりも上で、後は罠の回避についてもイルマ達の方が罠をしっかり回避していた。これはイルマ君達の方がトルク君よりも危機回避能力、戦闘力、索敵など、全ての分野で上を示している。なので今回の勝負について文句無しでイルマ達の勝利だ。」



ー僕が有利な条件でも全ての評価で上をいかれたのか………。

何が悪かった?僕は、ダンジョン攻略においてミスをした覚えがない!何故なんだッ!?


トルクは自分が負けた理由が分からず口を閉ざしていた。



「トルク君……。何か言いたいことは有りますか?」



タダシ教官は、勝負の勝敗と理由を発表した後、勝負に負けたトルクの様子を見ては何か言いたいことが有るかと問いかける。


トルクは、勝負に負けたことを聞いてから暫し、自分の負けを認められないのか下を向いては黙っていたが、タダシ教官から問いかけられて顔を上げてはタダシ教官に1つお願い事を頼む。



ーーそうだ!教官達の評価を見てみたら何か理由が分かるかも知れない。具体的な評価とレポートに映されたあの人達の考え方を見たら何故自分が負けたのかを知ることが出来るかもしれない。



勝負に負けた理由が分からないトルクは、その理由を知る為にタダシ教官にイルマ達の成績を評価した用紙とレポートを見せてもらうことをお願いしてみることにした。



「………タダシ教官。………………あの人達の今回のダンジョン攻略した成績を採点した用紙を見せて下さい。ついでにレポートもお願いします。(……先ずはあの人達の実力を教官達目線から見てみよう)」


「成績についてとレポートが見たい?…………イルマ君達、ナミノ教官、トルク君にイルマ君達の採点用紙とレポートを見せてもいいですか?」



トルクのお願いの内容に正確な意図が分からず首を傾げるタダシ教官。しかし、トルクの様子からお願いを叶えてあげようと、当人であるイルマ達と担当教官のナミノ教官に許可を願う。そのトルクのお願いに問題無いと考えるイルマ達とイルマ達がいいなら問題無いと言うナミノ教官。タダシ教官は、当人達の許可が出たのではイルマ達のダンジョン攻略の採点評価した用紙とレポートをトルクに見せる。



「はい、トルク君。これが彼らの成績について採点し、僕とナミノ教官が評価した用紙とレポートだよ。」


「………ありがとうございます。」

ーーこれで勝負に負けた理由が分かるかは分からないが、何かヒントが分かるかも知れない……。


タダシ教官からイルマ達のダンジョン攻略の採点用紙とレポートを受け取るトルク。

トルクは、暫くそのイルマ達の採点用紙とレポートを読んでは1人、勝負に負けた理由かヒントだけでもを知る為に読んで探っていた。


そんなトルクの様子に何か考えが有ると思った皆は、トルクの気が済むまで黙って待っていた。



◆◇◆



「ーーーフゥ~。」

ーーーそうか、そうだったのか。

あの人達の評価やレポートを見たら何故自分が負けたのかがよーく分かった。………教官達の目線からだと魔物の死体からあの人達の戦いに挑む姿勢を察していたのだ。それが僕よりもあの人達の方が上だと評価した理由なのだと、この採点用紙を見て分かった。僕がダンジョンで倒した魔物達とは違って、あの人達が倒した魔物達は、致命傷以外傷がない魔物や足や魔物の弱点をついて弱らした様子の魔物、時には一気に魔法で吹っ飛ばした魔物の死体等………この人工ダンジョンは、今回強化された魔物以外は低ランクの魔物ばっかりなのに、この人達は僕と違って低ランクの魔物だからといって決して油断せずに戦闘を行ったことが魔物の死体の傷から見たら明らかだ。

それに、ダンジョンでの強化された魔物との戦闘についてや罠の回避方法とか目から鱗の記述があの人達のレポートには書かれていた。………………認めるしかない。この人達は、貴族に産まれ、小さい時から様々な教育を受けてきたこの僕よりも凄い人達なのだと。



イルマ達の評価用紙とレポートを見て自分とイルマ達の違いやそこから見えてくるイルマ達の実力を感じるトルク。


そして、そんな自分よりも上のイルマ達に舐めた態度を取ったことに反省し、その気持ちが大きな息を吐くという形で表に出る。

そしてトルクは、イルマ達の採点用紙とレポートから顔を上げてイルマ達の方へ振り向いて頭を下げる。



「「「「「「「ッ!?」」」」」」」



そんな普段見せるトルクとの反対の行動にその場にいた全員が驚く。

そして、トルクはそんな周りの反応を気にせずイルマ達に謝罪の言葉を発する。



「………すいませんでした。先輩で、自分よりも凄い実力を持ち、伯爵の娘さんとも交流を持つ皆さんに舐めた態度を取ってしまい申し訳ありませんでした。」



「…お、おう。ま、まぁ気にするなよ。俺達先輩といっても見かけはこの養成所でもかなり幼いから敬うのも無理があるしな。」


「……ダンの言う通り。それに別に敬うまでは必要ない。………ダンを敬えるのは無理と私も思っているし。」


「おいシーラ!どういうことだ!!」


「………そのままの意味だけど?」



そのシーラの言葉にダンは「何だと~俺にも敬う所はあるわ!」とシーラに抗議し、そんなダンに対してシーラは「事実を言ったまで。ダンの敬う所?何処?」とダンを煽って遊ぶ。


しかし、そんな2人にイルマが頭に拳骨を落として黙らせる。

拳骨を落とされた2人はイルマに抗議の視線を向けるが、「今ふざける時じゃないよね?」と表情は笑っているが、目が笑っていないイルマを見ては黙るダンとシーラの2人。


そして、イルマはトルクに対しての対応をふざけた2人を外して対応することにした。


メラもダンとシーラを放置してトルクとの話を行うことにして、急に態度を変えたトルクに対して思ったことを伝える。



「アンタ勝負に負けたからっていってもそこまで態度が変えられたらこっちの調子が狂うじゃない。普通の態度!普通かもう少し砕けた態度でいいわよ。私達は別にアンタに敬って欲しくてこんな勝負を仕掛けた訳じゃあないからね。」


「うん。トルクさん、僕らは端から見ても暴走している貴方の態度や貴方とのトラブルを解決しようと思って勝負をしたのであって、貴方が僕らに対して敬う必要はありませんよ?」


「だ、だけど、僕は自分の力が2年生の貴方達よりも上だと勘違いして階級も持ち出して馬鹿にし、でも、実際は僕よりも力が上で、階級は平民だけど僕よりも上の階級の方と交流がある方に横暴な態度を取ってしまった。」


「それよ!そこがおかしいのよ!」


「??え、今の何処がおかしいのですか?」


「違うのよ。私達が言いたいことは、力や階級の高さで態度を変えることじゃなくて、端から見たら暴走しているように見える態度の改善についてよ!」


「え、え~と………」


「トルクさん。簡単に言いますと、幾ら自分の力や階級について自信や誇りを持っていても、それを振り回すことは止めて下さいと言っているのです。確かにトルクさんの力や階級は、周りにいる人よりも高いのだと認めます。でも、だからといってそれを自分勝手に振り回すのはこの前みたいにトラブルを招いたり、正直言って気分が悪くて迷惑です。」


「うっ!そ、それは………申し訳ありません。」



トルクは、自分よりも下の者からの言葉は余り気にしていない様子だったが、自分よりも上の者からハッキリと迷惑と言われるのは気にしている様子だ。



「それにそんなことをしていれば成長が出来なくなるわよ?」


「ーーえっ!せ、成長が出来なくなるッ!?」



メラの成長が出来ないという言葉に反応するトルク。

メラの言葉を確かめるように周りの人間の顔を窺うトルク。

そんなトルクに対して教官やイルマもメラの言葉が正しいと頷く。その事に自分の普段からの態度がそこまで損することなのかとショックを受けるトルク。



「そうよ、アンタの態度がこのまま続けば簡単に予想出来る問題が有るわよ?例えば、アンタが技や魔法、技能等の習得で困った時に誰が教えてくれるのよ?別に誰か雇って教育を受けて覚えれると思ってない?甘いわよ。それで解決出来るのはアンタの力やお金が通用する相手のみだわ。そして、アンタが気づいていない問題は誰も指摘しない。結果、アンタが気づいていない問題や弱点については誰も助けてくれないから途中で成長が止まるって言っているのよ。」


「そ、それは………」


「僕達は、そのことを実体験で知っている。例えば、循環術の習得でも、僕らは他の人から助けをもらうことで習得だけでなくて応用技を身に付けるようになれたんだ。それは、力以外にもそれは言えるよ?誰かの助けや心配してくれる気持ちは、困難にぶつかった時に踏ん張る力になれる。だから、トルクさんの態度はトラブルや他人の迷惑以外にも自分の成長を止めることにも繋がるだよ。」


「…………この僕の態度が自分の損にしか繋がらない?」


「そうだよトルク君。残念だけど、今の君の態度だと何かあった時、誰も助けてはくれないし。そして、君よりも上の力や階級の持ち主からトラブルった時、君は何も出来ない。」


「そして、俺達冒険者とは、何かを成す時に1人で出来ることは少ない。ギルド、仲間、他の冒険者等誰かの助けが必要なことが多数だ。実際、このイルマ達も1年生の時にクエストの際、クラスの生徒や養成所、ギルドの力を借りて問題を解決したことがある。」


「………………」


トルクは、イルマ達や教官達から自分の態度を改めないといけない理由をドンドンと上げられては言葉を失くす。


「トルクさん。僕達は養成所の生徒だ。つまり冒険者になるんだ。冒険者の仕事は命懸けな場合も多いから仲間との不和を起こす態度はしてしてはいけないし、止めないといけない。でないと、いつかその事を後悔することになるよ。」


ーーそうだ。前世でも横暴な態度を取り後悔したこともあった。だから、今は反省して態度を改めた。そう、周りの人が自分よりも劣ると思っても、それでその人を見下して横暴な態度を取ることはしてはいけない。


ーーそして、そんな態度を改めれることが出来れば、今の自分みたいに成長するのを手伝ってくれたり、自分が困った時に助けてくれたりして、そんな他人との繋がりがいざっていった時に踏ん張る力をくれることだってある。



「だから、貴方にはそうなる前に態度を改めて欲しい。それが僕らが貴方に勝負を仕掛けた本当の理由です。」


「ーーこんな手間を掛けて僕の為に勝負を仕掛けてくれた……」


「……あっ!でも、トラブルを解決したい気持ちも有るよ勿論。」


「えっ!?」


「プッ!イ、イルマアンタ、それを口に出したら駄目じゃない。」


「あれ~?おかしいなぁ?僕口が滑ってた?」


「「「おもいっきり!!!」」」


「うん。いい話台無しだね!」


≪ハハハハーーー!≫



イルマのボケに皆は笑う。


そんな笑い声に、トルクはいつの間にか今の話を反発することなく受け入れれていた。


「(今のはわざとボケを入れた………僕が話を反発せず受け入れやすくするために……。凄い人達だ。この養成所に入学して良かった。2年生だけど、僕よりも下の年齢でこんなに凄い人がいるのだから。)」



「うん?そろそろ食事の時間だな。おいイルマ!目的を果たしたのだからもう引き上げるぞ!」


話に入って来なかったカガリは、トルクの顔を見てはイルマ達の思いがトルクに伝わったと判断し、時間が来たこともあり、引き上げるぞとイルマ達に声を掛ける。


そして、カガリの言葉でもう食事の時間なことに気づいたイルマ達と教官達は、腹が減ったなっと言って人工ダンジョンから引き上げるのであった。


次回からは、養成所3年生編になります。


後、投稿スピードも元に戻して行きますね。

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