第53話(教官との手合わせ)
遅くなりました。
クラスの者との絡みより教官と手合わせをさせたくなり、手合わせをさせてみました。
では、異世界トラブルの続きをどうぞ!
ナミノ教官から循環術の指導を受けてからイルマ達は、トイから聞いた循環術のコツを意識して訓練に励み、他のAクラスの皆も授業を受けながらもイルマ達と同様に循環術の訓練に励んでいた。
そして、それから1一ヶ月の時間が過ぎた。
ナミノ教官は、Aクラスの皆がどれくらい循環術を使えるか確認する為、全員が技能等は使わずに循環術だけを使い、自分と手合わせを行うと言ってきた。
クラスの者達は、元Aクラス冒険者であるナミノ教官との手合わせが出来ることに喜び、また教官に自分の実力をアピール出来ることにやる気を見せていた。
そして、クラスの皆は、ナミノ教官との手合わせで訓練でこの短期間に短時間だけ維持出来るようになった者、維持が難しい者は要所要所に循環術を使うなどの工夫してナミノ教官に、自分達の実力を順番に見せていった。
しかし、ナミノ教官は手合わせの中、生徒の循環術の精度と足りてない所を見る為、自分からは攻撃せずに体捌きで生徒達の攻撃を避ける。そして、ある程度実力を見たら生徒達には反応出来ないスピードで寸止めの一撃を放ち手合わせを終わらせていた。
それをナミノ教官は、生徒達と手合わせを行う度繰り返していた。
そんな中、イルマ達はナミノ教官と他の生徒達の手合わせを観察し、見取り稽古をしていた。
実戦経験があるイルマ達から見てもナミノ教官の実力は凄く、特にクラスの者達と連続して手合わせしているナミノ教官の衰えない体力や体捌きと生徒の手本として見せているナミノ教官の循環術の精度は唸らせるものであった。
「流石ナミノ教官。凄い循環術だな。」
「それに連続手合わせをしても衰えない体力や体捌きも凄いわよ。」
「……流石元Aランク冒険者。……格が違う。」
『教官さん強いですね。クラスの皆さん全然相手になってないです。』
「やっぱり元とはいえ上級者冒険者の実力は凄いね。体力や体捌き、技の精度の1つ1つのレベルが高いね。……おっ、次はマルクス達がナミノ教官と手合わせを行うみたいだよ。」
ナミノ教官との手合わせを見ていたイルマ達。すると次の手合わせの相手が最近訓練を共に行っているマルクス達が行うようだ。
「マルクス達か。マルクス達は、何処までナミノ教官に食い下がれるか楽しみだぜ!!」
「マルクスやダイは多少食い下がることが出来ると思うけど、魔法が主体のキナリやアーラは厳しいんじゃない?」
「……私もそう思う。」
「まぁまぁ、今回の手合わせは循環術の精度を見るのが主にだから、キナリやアーラも良いところまで行くかもよ?」
『マルクスさん達も頑張ってくださ~い。』
イルマ達は、マルクス達を応援しながらも、ナミノ教官との手合わせで何処まで食い下がれるか興味深くその様子を見取り稽古しながらも観戦していた。
(マルクス達は僕達と訓練をしていたこともあり、最近実力を上げてきているから、ナミノ教官に何処まで食い下がれるか楽しみだ。)
そして、マルクス達とナミノ教官の手合わせが始まる。
最初にダイからナミノ教官と手合わせが行う。ダイは循環術によって高めた早さでナミノ教官を周りを動き回りながら間合いを詰める。
(ほう。狩人のスピードに循環術で高めた早さで俺の周りを動き回ることで錯乱させて間合いを取っている。……さぁ、この後はどうする?)
(くっ、この早さで動き回ってもナミノ教官の視線が切れない!?………ならっ!!)
ダイは高めた早さでもナミノ教官を視線が切れないことに次の手を打つ。ダイは動き回りながらも足で土を蹴りあげることでナミノ教官の視界を塞ぎ、その隙に気配を消して一気にナミノ教官に接近する。
ナミノ教官に気配を消して接近したダイは、素早く攻撃を繰り出す。しかし、ダイの攻撃はナミノ教官に届かなかった。
ナミノ教官は、ダイの奇襲攻撃にもしっかり反応して攻撃を防いでいた。
「良い攻撃だ。早さで錯乱出来ない相手の反応速度を利用して、目潰しを仕掛けて気配を消してからの奇襲攻撃は良かったぞ?しかし、攻撃を放つ時までは気配を消して切れていないぞ?要課題だな。」
「…………参りました。」
ダイは、ナミノ教官に攻撃が通じなかった段階で循環術の維持が限界に来て降参する。
ダイが敗れたことにマルクス達やイルマ達は残念がる。
マルクス達やイルマ達は、ダイに「良かったぞ!」「今度は攻撃時の気配の消す訓練だな。」とダイに声を掛けていく。
ダイは、「再訓練だな」と自分の課題が見つかり、訓練内容に気配の消し方をやり直すことが追加されるのであった。
ダイがナミノ教官に敗れて、次はキナリがナミノ教官に挑む。
しかし、ダイの早さでも通じなかったナミノ教官に、ダイより体術が苦手なキナリが通じる訳がなく、あっという間にナミノ教官に敗れる。
キナリ同様に、アーラも同じようにナミノ教官に敗れて仲間達やイルマ達から「ドンマイ」「魔法では逆の結果になったよ」と励まされるのであった。
最後にマルクスがナミノ教官と手合わせを行うが、ダイより早さで劣るマルクスはいっそ開き直り、ナミノ教官に正面からぶつかる。
ただ、正面からぶつかると言っても無策でぶつかるという意味でなく、全集中力を向けて気を爆発させて、一気に勝負を仕掛けたのである。
ナミノ教官は、マルクスのシンプルだが厄介な攻撃を防御はせずに回避に意識を向けることでマルクスの体力切れを待つ。
そして、マルクスとナミノ教官の手合わせは、マルクスの体力切れで勝負が決まるのであった。
ナミノ教官に負けたマルクス達にイルマ達は「頑張ったね」「凄かったよ」と声を掛けていく。マルクス達もそんなイルマ達に「ありがとう」と返事を返していく。
マルクス達が手合わせ終わり、次はイルマ達の番となった。
最初にメラからナミノ教官と手合わせを始めることになる。メラは、普通に戦っても勝ち目がないこともあり、他の生徒達の手合わせの間に立てた作戦を実行する。
「(さぁ、イルマ達の番になったな。コイツらはちょっと気合いを入れてやらないと不味いかな?最初はメラが相手だが、正面から勝負を挑んで来るとは思わないが)……どうする?」
ナミノ教官は、メラなら正面からではなく、作戦を立てていそうなこともあり、どうしてくるか警戒していた。
すると、メラは循環術に使っている魔力を一点に集中させて地面を砕き、そのまま砕いた岩を蹴りあげることで遠距離戦に持ち込む。
「何ッ!?チッ!地面を砕いて蹴りあげることで遠距離だと?」
(手合わせでまさかの遠距離戦だと?しかも循環術を"一点集中"させて力と耐久力を底上げするだと!?そんな技なんてまだ教えていないぞ!!)
ナミノ教官は、メラの行動と循環術の使い方に驚きながらもメラの攻撃を巧みに避けていた。
そして、ナミノ教官は攻撃を避けながらもメラの攻撃の間を観察し、次の攻撃が来る僅かな間にメラに接近し、手合わせを終わらせる。手合わせに負けたメラは悔しながらも敗北を認めて後ろに下がる。ナミノ教官は、そんなメラの後ろ姿を見ながらメラの実力に舌を巻いていた。
(………しかし、メラの循環術の使い方と攻撃には驚かされたな。近接が苦手だからって、あんな感じに遠距離戦に持ち込まれるとは思わなかった。……やっぱりコイツらは気を入れてやらないといけないな。)
ナミノ教官は、メラとの手合わせで、イルマ達に対しての警戒度を上げるのであった。
メラとの手合わせが終わり、次はダンが手合わせを行う。
ナミノ教官は、再度気を入れてダンとの手合わせを始める。
「(……ダンは、メラとは違ってバリバリの戦闘職だから正面から来るか?それともメラみたいに予想外の攻撃が来るか?)」
ナミノ教官は、ダンの出方を窺う。
ダンは、ナミノ教官が警戒していることを感じながらも、そんなこと関係ないと言わんばかりに正面からぶつかっていく。
「(ッ!やっぱり正面から来たか!)来い!!」
ナミノ教官は、正面から接近してくるダンに迎え撃つ。
ダンは、迎え撃つ態勢のナミノ教官に対して直前でストップして飛び上がる。
「(何ッ!?飛んだ?)どうするつもりだ!?」
ダンは、接近したスピードを殺さずに飛ぶことで普段より高く飛び上がる。
そして、そのまま高く飛んだダンは、足を踵落としの要領で地面に叩き付ける。
ドーーンッ!!
ダンの攻撃が地面にぶつかり、辺りは激しく揺れる。
生徒達やイルマ達もその揺れのせいでバランスを崩す。
ナミノ教官も流石に体勢を保てず、片手を地面に付けて体勢を崩していた。
そんな中、踵落としをしたダンが何故か体勢を崩しておらず、体勢を崩したナミノ教官に攻撃を仕掛ける。
「何ッ!?ダン!何故お前は体勢を崩していない?!」
「へっ!内緒だぜ!!」
ナミノ教官は、体勢を崩されたとこからの攻撃を喰らったこともあり、避けることも出来ず、防御するしかなかった。
そのお陰で暫く有利に戦えていたダン。だが暫くすると、態勢を整えたナミノ教官に逆襲されて敗れるのであった。
ダンとの手合わせが終わったナミノ教官は、再度ダンに何故体勢を崩さずにいられたのか確認する。
するとダンは、「踵落としをした時、足に循環術を集中していた気を放出することで身体を前に押し出した」と答える。
(循環術の"放出"だと?また教えていない技を出してくるとは。)
ナミノ教官は、再度教えていない技を繰り出してくるイルマ達に驚愕を隠しきれない。
そして、ナミノ教官の質問に答えたダンは、次の手合わせが行われるため後ろに下がる。
ダンが下がり、次の手合わせを行うシーラが前に出てきた。
「………宜しくお願いします。」
「……ああ。(この様子だとシーラも何か仕掛けて来ると思った方がいいな。)」
ナミノ教官は、連続で教えていない技を繰り出してくるイルマ達に再度同じようなことが有るかもしれないこととシーラのタイプ的に正面から来るのでなく、何かを仕掛けてくると思い、警戒を高めていた。
そして、手合わせが始まる。
シーラは手合わせが始まった直後、ナミノ教官との間合いを詰めて来た。
ナミノ教官は、シーラの力で間合いを詰めて来たことに警戒しながらもそれに応じる。
ナミノ教官は、シーラの攻撃を警戒して攻撃を回避していくが、攻撃を回避するナミノ教官にシーラは攻撃を止めて身体ごとナミノ教官に飛びつく。
そのシーラの飛びつきに驚き、一瞬回避が遅れたナミノ教官の身体にシーラの身体が僅かに当たる。
そして……シーラの身体に当たったナミノ教官の身体の部分が凍りつき、ナミノ教官の動きが止まる。
「なッ!?身体がッ!?」
(こ、これは、"魔質変化"ッ!?こ、コイツら、一点集中や放出以外に魔質変化までも習得していたのか!?)
そうシーラは、循環術によって身体の中を循環させている魔力を魔質変化で氷に変化させることで触れた部分を凍りつかせることが出来るようになっていた。
その為、シーラに僅かに触れてしまったナミノ教官の身体の一部分は、凍りついたのであった。
しかし、その後手合わせは直ぐに終わる。
魔質変化には驚いたナミノ教官だが、身体が凍りついた場所は僅かな部分だけで動きに支障がなく、これ以上何かをされる前に一気に勝負を決めにきたのであった。元々接近戦が得意ではないシーラでは、勝負を決めにきたナミノ教官の動きに対応出来ずに敗れるのであった。
そして、最後の手合わせでイルマが前に出てくる。
ナミノ教官は、イルマの姿を見て警戒を最大限まで上げる。
「(コイツが一番警戒しないといけない。コイツらの中でも一番能力が高くて、何をしてくるか分からないからな。)」
ナミノ教官は、イルマを最大限に警戒して、イルマが何をしてきても対応出来るようにイルマの動きをじっと見つめていた。
そんなナミノ教官の姿を見てイルマは警戒されていることを気づきながらも無視して動き出す。
「(ッ!動いた!!どう来る?何をしてくる?)来い!!」
イルマは、循環術を強めてから一直線にナミノ教官に接近する。ナミノ教官は、接近してくるイルマに警戒して、攻撃は当たらないように回避をしようとする。
そんなナミノ教官の視界からイルマの姿が突然と消える。
そして、ナミノ教官の後ろに突然とイルマが現れる。
「ッ!?チッ!!ハアッ!!」
そんなイルマにナミノ教官は気づき反撃の攻撃を放つ!
すると、イルマの姿が再び消えてナミノ教官の攻撃が外れる。
そのことに驚くナミノ教官。しかし、直ぐ様に体勢を整えてイルマの攻撃を警戒するがその時にはイルマは、ナミノ教官に攻撃を既に繰り出していた。
「なっッ!?くっ!!」
だが、その攻撃もナミノ教官は、ギリギリ避ける。
そんな展開が何回か続き、イルマの攻撃パターンが変わる。
イルマは、循環術の一点集中と放出、魔質変化をさせてナミノ教官に繰り出す。
ナミノ教官もそんなイルマに同じように循環術の一点集中と放出、魔質変化をさせて、イルマと接近戦を行う。
その状態で手合わせが続いていたが、体格や循環術の練度、実力が劣るイルマでは次第に劣勢になっていき、最終的にはイルマがナミノ教官に負けるのであった。
手合わせに負けたイルマ。しかし、最初に仕掛けて来たイルマの攻撃の仕掛けを見抜けなかったナミノ教官は、イルマの評価を高くしていた。
「………イルマ。最初の攻撃はなんだったんだ?」
イルマの攻撃の仕掛けが分からなかったナミノ教官は、イルマにそのことを問いただす。
「すいません。これは切り札になるので教えることは出来ません。でも、ナミノ教官が分からなかったならこの技は、実戦でも使えそうですね。」
「何?あれは未完成だったのか!?」
「はい。でも、今のままでも十分に使えることが分かって良かったです。………それでもいつかは完成させますけど」
「(この俺が分からない技が未完成?……やっぱりコイツが一番このクラスでヤバい奴だな。)」
ナミノ教官は、イルマの言葉に驚きとイルマのことをある意味ヤバい奴と認識するのであった。
そろそろ養成所編のトラブルを出そうと思っています。