第52話(循環術)
今回は、Aクラスになってからのことと新しい技法である"循環術"などについての話です。
では、異世界トラブルの続きをどうぞ!
イルマ達は、無事に4人全員がAクラスになれた。
Aクラスの者達は、ナミノ教官の案内で、新しい教室に来ていた。ナミノ教官は、これからのことで話すことがあるから適当な所に座れとクラスの者に話し掛ける。
教官に言われてイルマ達は、グループごとに適当な場所に着席して教官の話を待つ。
「先ずはお前達Aクラスになれておめでとう。この結果は、お前らが優秀な証だ。」
ナミノ教官の言葉にAクラスになれた者は恥ずかしそうにしたり、嬉しそうにしたりとそれぞれ違う反応見せながらも喜んでいる。
「しかし、先程も言ったようにこの結果に甘えていたら、Bクラスに降格してもらう。今のお前達は成長過程の中で現時点で優秀な20名なだけだ。Bクラスの奴らも今の結果のままで終わる奴らばかりではない。今回の結果に我武者羅になってお前達の背中に向かって追い掛けてくるぞ?」
「(教官の話は当然と思う。どんな世界でも上の者は下の者に追われる立場だ。止まった者や手を抜いた者から下の者に抜かれていくのが現実だ。それはどんなことでも一緒のことだ。)」
イルマは、ナミノ教官の話を聞きながら、勝負の世界の事情について考えていた。
「だからお前達も我武者羅にならないと今の立場を維持出来ないことだけは肝に命じておけ………話が長くなってしまったな、悪い本題は此処からだ。Aクラスになったお前達はBクラスの者達より優秀と見込んで、今日から授業の内容をステップアップする!「ッ!やったぜー!!」た・だ・し、肉体作りは止めることはないぞ?「え~~」馬鹿やろう!当たり前だ!今のお前達の時期がが1番身体作りに向いていることには変わりはないし、お前達の肉体作りがまだまだなことは事実だ!これを疎かしたらお前達の成長は無いからな、肉体作りは予定通りクラス関係なく1年間は授業で取り組む。その後は他に取り組まないと行けないことが有るから肉体作りを主体で授業を取り組むことが出来ないが決して肉体作りを怠るなよ。」
肉体作りがまだまだ続くことに生徒達はブーイングを入れるが、ナミノ教官はそんなブーイングを一蹴する。
そして、話はステップアップする授業内容に関することになる。
「ナミノ教官!授業の内容をステップアップすると言いましたがどんな感じにステップアップするのでしょうか?」
「そうです!教官は、肉体作りを主体で授業をすることは変わらないと言いましたが、今は、肉体作りの合間に知識の面であったりと他のことをしていますが、これに更に何かをするのですか?」
「今の授業時間を更に伸ばすことになるんですか?」
「ああそうだ。しかし、追加で取り組むがそれは今の授業時間を伸ばすことは無い。それをしながら今まで通りに授業をしていく。」
「「「「「???」」」」」
生徒達はナミノ教官の話に首を傾げる。
授業内容を追加するのに、授業時間は伸びずに今まで通りの授業を行うと言うのだ。ナミノ教官の言葉に矛盾を感じながらも生徒達はナミノ教官の話の続きを待つ。
ナミノも生徒達が頭を傾げている様子を見て更に詳しく内容を説明する。
「ステップアップすると言ったことだが、それはあることをやりながら今まで通りの授業を行うことだ。だから、授業内容は変わらずに時間も伸びないと言ったのだ。ちなみにそのあることという物は、」
「「「「「あることとは?」」」」」
「……循環術だ。」
「「「「「循環術ッ!?」」」」」
「(おいイルマ、循環術って何だ?)」
「(……あんた知らないの?はぁ~、……いい?循環術ってのは魔力や気を身体の中で循環させて身体能力を向上させる術のことよ)」
「(しかも高めた気や魔力で使った技や魔法の威力を高めることも出来る。後、術と言うけどどちらかと言うと技。技能や魔法とは違う。)」
「(?いつもの闘気を使った身体能力強化とはまた違うのか?)」
「(それは違うよダン?循環術は、技能や魔法とは違って訓練すれば訓練する程身体能力向上率は上昇するし、闘気や技能の気や魔力を使った身体強化とは違って、厳密には気や魔力を身体の中で循環させることで気や魔力の質を高めて身体能力を強化するんだ。)」
「(それが分からねえ?訓練したら訓練した分、身体能力向上が上昇するなら何で皆しないんだ?それに質を高めて身体能力向上させるのと闘気や技能で強化させるのと結果的に同じ身体能力強化何だろう?確かに……技や魔法の威力を上げれるのは利点だろうけどさ。)」
「(全然違うわよ!皆知っていても危険だから自分達だけでは出来ないからしていないのよ!それに、循環させた気や魔力を使って循環術で身体能力強化された上に更に気や技能で能力強化を上乗せが出来るのよ!!)」
『(循環術って術って凄いですね!!)』
「(ッ!?そいつはスゲーッ!!………あれ?でも、何で循環術は危険何だ?)」
「(……循環術、その習得は術の特性上身体中に気や魔力を循環させる必要があるため、気や魔力操作が拙い者が指導者無しにすることは危険極まりない術。)」
「(それに、仮に無事に循環術が使えても、指導者無しに習得する循環術は癖が付いてしまうことがあるんだ。この癖が最初に付いてしまうと術の特性上、闘気や技能みたいに全体的に強化するんじゃなくて、身体の中に気や魔力の通り道が出来てしまうから中々直しにくいリスクが有るから僕ら含めた生徒達は循環術を知っていても習得はしていないだよ。)」
「(へぇ~~、やっぱりそんな闘気や技能で身体能力を強化した上で更に身体能力を強化して、技や魔法の威力を上げるなんて便利な物には相応のリスクがあるんだな。)」
『(なるほど~~、相応の効果に対して相応のリスクがある物なんですね。)』
「(でもその分、習得したら一気に強くなれるから覚える価値は充分にあるよ。)」
「(それより、循環術って上級冒険者には習得必須技能で結構有名なことなのよ?それを知らないって、……ダンあんたまた勉強会をやりたいの?)」
「(ッ!?そ、それは勘弁してくれ!!勉強会はもう懲り懲りだぜ!!)」
「(……こっちは大歓迎だから何時でも言って。)」
「(シーラッ!?)」
「(そうね~私も何時でも良いわよ?ねぇ、イルマ?)」
「((ダンの反応が面白いから話に乗っとこ)う~んそうだね……また勉強会しよっか?)」
『(ダンさんファイトですね!!)』
「(頼む!!許してくれよ~~)」
イルマ達は、教官の話で出てきた循環術を知らなかったダンに対して、小声で循環術の説明を行う。その後、上級冒険者になる為には必須技能の循環術のことを知らないダンに対して、以前行った勉強会をまたするの?とダン弄っていた。
ミルンは、イルマ達のからかいに気づかずに純粋にダンのことを応援する。そして、ダンに味方が誰もいない状態になり、ダンは苦手な勉強会の再びの襲来に悲鳴を上げる。そんなダンの様子にイルマ達は楽しそうに見ていた。
話は戻り、ナミノ教官はAクラスの生徒に循環術を習得してもらい、循環術を続けて発動時間と精度を高めることを今までの授業に組み込むと話する。
生徒達は、養成所に入りやっとそれらしい技術を教えて貰えることにテンションを上げて喜ぶ。そして、イルマ達Aクラス20名はナミノ教官の指導の元、循環術のやり方を文字通り身体に叩き込まれる。
ナミノ教官から循環術を習得出来るよう指導を受けて、Aクラスの生徒達は、拙いながらも全員が循環術の習得をする。
「じゅ、循環術って……習得して、発動……するのは簡単だけど、循環術を……維持しながら普通に身体を動かすのは……難しいだな……。」
「そ、そうね、……身体の中の魔力や気を……循環させながら……身体を動かすと、術が解けそうに……なるわね。」
「……このままだと普段通り処か……戦闘時に……術を維持しながら戦えるようになるまで……先が長い。」
循環術を習得したクラスの者達は、ナミノ教官から循環術の精度と持続時間を伸ばすようにと言われていた。
しかし、皆循環術を発動させることは簡単に出来たが、そこから循環術の精度を上げて維持する時間を伸ばす処か、術を発動後に普段通りに動くのも儘にならぬ状態だ。
クラスの者達が、循環術を発動し、その上で普段通りに動けるようになれた者が2人いた。
1人は、技能≪成長補足≫や≪器用貧乏≫を持つイルマが術を習得後に、他の皆と同じように術を発動後に苦労していたが凄い早さで術の練度を高めていった。
そして、もう1人がトイだ。トイは職業が格闘家であり、闘気の操作に長けていたことと、循環術に適正が有ったこともあり、皆達より早いスピードで循環術の練度を高めていったのだ。
そんなトイにイルマ達は休みの日に訓練している時に見かけたのでコツがないのか話し掛ける。
食堂に行こうとしていたトイは、急にイルマ達話し掛けられて、普段交流がなくて余り話しをしていなかったイルマ達からの質問に、少し身体を強ばりさせながらも質問に答える。
「え~っと、イルマ、ダン、メラ、シーラだったよね?」
「はい。」 「おう、そうだぜ」 「そうよ」 「…うん」
「循環術のコツだったかい?それなら同じグループのイルマに聞いたら良いんじゃない?イルマも他の皆より術の練度が高いだろ?」
「いや~~、他の人の話を参考にしてみたくて……。(僕の場合は、技能≪成長補足≫と≪器用貧乏≫の技能のお陰な所があるからなぁ~)」
イルマはトイの問いかけに、他の上達した人の参考を聞いて自分の技量を更に高めたいと言うと、その考え方を気にいったのかトイは先程までとは違い、前向きにイルマ達の質問に答えてくれる。
「循環術のコツだったよね?……コツかぁ~、コツといえば術をする時に意識していることはあるけど。」
「何だ!その意識していることは?教えてくれ!」
「私も気になるわ。」 「私も」「僕も知りたい。」
「はは、皆食い気味だね。……あ~意識しているそれはね、身体を動かすことと術を維持することの2つを別に考えず、1つのことをしようとしていることだよ。」
「?。どういうことだ?2つのことを1つで考える?」
「詳しく教えてくれないかしら?」
「え~と、例えば両手で別のことをしようとしたら難しいだろ?」
「ええ。両手で別のことをしようとしたら、一度に2つのことをしようとすることになるから難しいわ。」
「だろ?でも、例えば料理を作る時に片手で鍋を持って動かして、もう1つの手で鍋の中身を箸で炒めれたり、調味料を入れたりと2つのことを同時に出来るだろ?でもそれは、料理を作るって1つのことをしようとしているからなんだ。」
「……循環術も同じことがいえると?術を発動することと身体を動かすのを2つのことをしようと考えないようにするのがコツ?」
シーラの言葉にトイは頷く。
「そうだな……闘気や魔法を使って戦闘する際、気や魔力を操作しながら身体も動かしているだろ?それと同じさ。循環術を維持しながら身体を動かすには、循環術を使いながら戦闘していると思ってみたらいいと思うよ?」
「おお!それなら解りやすいぜ!!サンキューなトイ。」
「ええ、それなら私も出来そうね。ありがとう。」
「……感謝。やってみる価値あり。」
「ありがとうトイ。トイの言葉を意識してやってみるよ。」
「良いよ。じゃあ頑張って。」
イルマ達の質問に答えたトイは、イルマ達に手を振って食堂に向かうのだった。
イルマ達は去っていくトイに「ありがとう」と言って、トイに聞いたコツを参考にして再び循環術の訓練を行うのだった。
ーイルマ達とトイの話を陰で聞いていたナミノ教官は、トイの循環術のコツの話と休みでも訓練し、解らないことは素直に人に聞けるイルマ達のことに感心していた。
(流石成績トップのグループだな。休みの日でも訓練していることもだが、普通はあの歳でトップの成績を取るぐらいになればプライドが邪魔して、出来ないことを人に聞くことが出来なくなるもんだがな。トイも循環術のコツをちゃんと理解して、人に教えることが出来るとはやるもんだ。)
ナミノの教官は、イルマ達に気づかれないように、そのまま隠れてイルマ達の訓練している様子を暫く見ていた。
次回は、今回登場したトイやマルクス達との絡みを書こうかな?と思っています。