第14話(平原での戦い1)
平原での戦いは複数話での構想となってます。
では異世界トラブルの続きをどうぞ!
メラ達はイルマの話を聞いては情報収集の必要性と大切さを知り、平原で戦っていく為にも情報収集をしに冒険者ギルドに向かっていた。
「デルおばさん!!平原のことを教えてくれ!」
──バンッ!
冒険者ギルド内に扉が勢いよく開く音とダンの大きな声が響く。
「~~ッダンあんたアホなの!?」
「……大アホ」
「ダン……」
冒険者ギルドに来て、ダンの第一声にイルマ達は頭を痛そうにしていた。
「あ?何だよ、デルおばさんに聞いたら駄目なのかよ?」
「そうじゃないわよ!あのね、ダン。あんたがアホって意味は、ギルドに来て第一声が大きな声で質問なのかって意味よ。普通挨拶が先でしょ!」
「………メラの言う通り。先ずは挨拶が先。質問はその後」
「はぁ~………ダン、メラやシーラの言う通りだよ。それに今回は誰かに聞かれても困ることではないけど、質問の内容によってはあまり大勢に聞かれたら困ることだってあるんだよ?だけどダンはいきなり大きな声で質問するから皆呆れたんだよ?」
ほら、とイルマはダンに周りを見るよう促す。
すると周りを見渡したダンの視界には、「何だ!?」「何、平原?イル坊達、平原について聞いてどうするんだ?」と言って、冒険者ギルド内にいた人達は大きな声を出したダンに視線を向ける。
それを見たダンは自分に周りの目が集中しているのを理解し、それに加えて挨拶もせずに大きな声で質問した自分の行動が非常識だったことを周りの目が自分に向いているのを自覚しては乾いた笑いを漏らす。
「……は、は、はははは」
「………ダン。今回はもういいけど、次から気をつけてよ?」
「わっ悪い!!」
「本当よ!もっと周りを見なさいよ!それと挨拶が先よ!」
「バカ」
乾いた笑いを漏らしたダンは、その後イルマ達に手を合わせて謝る。
そんなダンの謝罪に、イルマ達は次からは気を付けることをダンと約束した後ため息を吐くのであった。
そして、ダンへの説教が終わったタイミングでデルおばさんがイルマ達に話しかけてきた。
「ハイハイ、イル坊達、ダンちゃんへの説教は終わったかい?」
「あっ、こんにちは、デルおばさん!」
「「「こんにちは!」」」
「はい、こんにちはイル坊達。」
デルおばさんから声を掛けられたことで存在に気付いたイルマ達は、デルおばさんに礼儀よく頭を下げて挨拶を行う。
「で、今日はどうしたんだい?さっきダンちゃんが平原を教えてくれって言っていたけど……イル坊達はどうして平原のことが知りたいんだい?」
この子達、今度は何をするつもりだい?
平原についてだって?何で急に平原のことが知りたいのかその理由は何なのかしらね?
「(うっ、どうする?デルおばさんに正直に理由を伝えるのは不味い………)」
デルおばさんの言葉にイルマはどう答えるのがいいかと悩む。
普通に答えるのか、
それとも嘘の理由を答えるのか。
勿論、普通に理由を答えると怒られるのは明白なのだが、だからといって親しいデルおばさんに嘘を言うのは気が引ける。
そして嘘を言うのは簡単だ。
嘘の内容も平原の話を聞いたから気になった。
そう言えばデルおばさんも納得はするだろう。でも一度嘘を言うことは、これからも嘘を言い続けないといけない。
嘘を吐く中には相手の為の嘘もある。仕方ない場合もある。だから今回みたいに、森の異変に対応する為に必要な平原の情報を知る中で嘘をつくのは必要な嘘だ。
(………正直言って、必要なことだとしても、僕ら4人に良くしてくれるデルおばさんに秘密にすることは我慢出来るけど、嘘をつくのは嫌だな………)
イルマがデルおばさんに嘘をつくことは嫌だなと悩んでると、周りにいる冒険者の中から1人の青年が助け船を出してくれた。
「デルおばさん、別に理由は何でもいいじゃないか。この歳ぐらいの子供は何でも知りたがるし」
「あ、誰だい?…………あんたは」
デルおばさんは声を掛けてきたのは誰かと視線を向ける。そして、青年の姿を見たデルおばさんは「ああ、あんたかいドラン」とイルマ達に助け船を出してくれた青年の名前を呼ぶ。
ドランはデルおばさんに「まぁまぁデルおばさん、別に平原について教えるぐらい何も気にすることはないだろ?」と言っては「よっ!イル坊達」イルマ達に声を掛け近付いて来る。
イルマ達に助け船を出してくれた青年ドラン。
このドランは、イルマ達に良くしてくれる冒険者達のその中でも特にイルマ達に優しくしてくれる冒険者の青年だ。
そしてイルマ達もドランの登場に、ドランお兄さん(さん)(兄ちゃん)!と声を上げ、「こんにちは」っとイルマ達はドランに挨拶する。
(やった、ドランお兄さんだ。これならデルおばさんに嘘をつくことは避けれそうだ!)
ドランお兄さんの登場にイルマは喜ぶ。自分達に特に優しいドランお兄さんなら、平原についてすんなり教えてくれそうだからだ。
そしてイルマの予想通りドランお兄さんは、デルおばさんに「デルおばさん別にいいだろ?」と伺い、そんなドランお兄さんにデルおばさんは「はいはい、あんたの好きにしな」っと了承し、「よし。ならイル坊達には、俺が平原について教えるやるよ」と僕達に平原について教えてくれた。
「平原は~道から外れると草が生い茂っていてイル坊達には視界が悪いと思うぜ?」
「魔物は主に多いのはなぁ~4種類だ。先ずはレッサーウルフが群れで襲ってくるんだが、コイツらはただ襲ってくるんじゃなくて、囮を使ったりなど工夫してくる。逃げるにしても嗅覚が鋭いから隠れることはお勧めしないぞ。逆に嗅覚が鋭いから、臭い物を使うと嫌がる」
「ビッグラビットはその名の通り大きい兎の魔物だ。大きな跳脚力とその大きな身体から繰り出す重たい蹴りが特徴だな。しかし、兎なだけにあまり積極的に襲ってくることはないぞ」
「他にも空にはウィンドバードがいる。こいつは弱いが他の魔物とは違い風の魔法を使ってくるぞ。まぁそれ以外は身体が少し大きめな鳥だな」
「後は、俺達にとって草が生い茂って死角になりがちな足下にいるスライム、牙が生えたスライムの亜種であるスライムキバ。こいつはそんなに強くないが、死角になりがちな所にいるだけに注意しないと………ガブッ!っと噛みつかれるぞ?」
ドランお兄さんはイルマ達に平原の環境と特に出会う魔物について丁寧に教えてくれる。
昨日を知ったレッサーウルフやビッグラビットの特徴や注意点や、ウィンドバードとスライムキバについてなどダンやメラ、シーラが知らなかった情報もドランお兄さんの話から出てくる。
「ドラン、あんたいつもイル坊達には甘いねぇ~」
イルマ達にすんなりそれでいて情報を丁寧に教えるドランに向かってデルは呆れていた。そんなデルおばさんに対してドランは、「イヤーっ、ついな」と弱い所を突かれたみたいに頭を搔きながら苦笑を漏らす。
「俺にはイル坊達ぐらいの弟がいるからなぁ~。だから困っていたり、聞かれたらついな……」
ドランお兄さんはイルマ達に、何故すんなり平原について情報を教えてくれる理由をデルおばさんに打ち明ける。
そんなドランにデルおばさんは、「………まぁ、あんたの気持ちは分かるけどほどほどにな。イル坊達、ドランに感謝しなよ?普通情報を教えてもらうにはお金等対価が必要なんだからね」
と、簡単に情報を教えて貰えることが普通じゃないことをイルマ達に伝え、常識を教えてきた。
「(皆デルおばさんの言う通り、普通情報を教えて貰うには、クエストで必要なことや例外は除いて金銭等対価が必要だよ。だから親切に平原について情報を教えてくれたドランお兄さんに感謝しないといけないね)」
デルおばさんの言葉に、イルマはメラ達に小声で情報収集の常識とドランお兄さんに感謝しないといけないことを伝える。
そのデルおばさんとイルマの言葉にメラ達は頷き、ドランお兄さんに感謝を伝える。
「「「ドランさん(兄ちゃん)ありがとう!!!」」」
「ドランお兄さんいつもありがとう!」
「おう。いいってことよ!」
イルマ達のお礼にドランは嬉しそうに手を上げて笑う。
(よし。これで平原についてと情報収集する時の常識を皆に教えることが出来たぞ。これで平原に向かえる。)
イルマはメラ達に情報収集とその常識を教えるという冒険者ギルドでの目的を達成出来たこともあり、「なら次だ!」とダンが走って冒険者ギルドを出ていく。
イルマ達も用が済んだからといって急に走り出すダンの後を追いかけては「デルおばさん、ドランお兄さん、それに皆ありがとう!またね!」と、お礼を言いながら「ダン!お礼位ちゃんと言いなよ!」「そうよ!」「ドラン兄さんにお礼は言っただろ?」「……帰る時も言うのが常識」とダンに苦言を叫びながら冒険者ギルドを出ていく。
「………行っちまったな。相変わらずイル坊達慌ただしいな」
「ははは、イル坊達だしね。それに子供は元気が1番っさ」
「「だな!」」
そのイルマ達の元気な様子に、デルおばさんやドランに他の冒険者達は笑って見送るのであった。
僕達は冒険者ギルドで平原のことを聞いた後、次の目的地である平原に来ていた。
平原の魔物と戦う為に冒険者ギルドでドランお兄さんから聞いた情報を元に注意しては、慎重に辺りを探索していた。
「確か、レッサーウルフ、ビッグラビット、ウィンドバード、スライムキバの四種類が平原で出るって言ってたよな~」
「主にって言葉が前につくわね。」
「………平原での視界の悪さも注意」
「とりあえずイルマ~、辺りに魔物がいるか確認を頼む~」
「分かった」
イルマはダンの頼みに頷き、索敵系の技能を発動しては辺りを探る。
「────ッ、魔物の反応あり!」
「ッ!どっちだ?」
「何体なの?」
「………どの魔物?」
「どの魔物かはまでは解らないけど、
技能に反応有ったのは1体だけ。
魔物の場所は……こっちだ!」
魔物の存在を索敵系の技能で見つけた僕は、皆に魔物の反応が有った方向を指指す。そして僕の指指す方向に移動すると、昨日も見かけた兎の魔物であるビッグラビットが一匹いた。
発見したビッグラビットは、餌を探している様子でまだ此方に気付いた様子はなかった。
そのことに僕らはその間にビッグラビットの注意点思い出し、戦闘態勢を整える。
先ずは僕が先日のレッサーウルフのように、ビッグラビットが逃げた場合でも対応出来るように反対側に迂回し、追撃出来る位置で待機する。
次にメラやシーラが少し離れた位置で待機し、草木に隠れては何時でも魔法を放つことを出来るように準備する。
そして最後に、ダンがビッグラビットの跳躍力からの重撃を避けれるよう警戒しながらゆっくり近づく。すると、餌を探していたビッグラビットが接近してきたダンに気付く。
「───ッ!? キュイッ!!」
「──ッ気付かれた!」
ダンに気付いたビッグラビットだったが、ダン以外の3人にはまだ気付いていない。
そしてダンに気付いたビッグラビットだが、相手が1人、しかも子供相手なこともあり逃げず立ち向かうことにしたようで、ダンに向かって威嚇するように唸る。
「───ッ(皆、まだだぜ!)」
「(了解、ダン)」「(分かってるわ)」「(……了解)」
ダンは隠れたイルマ達に目で待機の合図を送り、イルマ達も了解しては待機を続行する。
そして、
ダンに威嚇するように唸っていたビッグラビット。
ダンがイルマ達に合図を送る為に視線を自分から逸らした瞬間の隙に、跳ぶ為に屈んで脚に力を入れ……
ビッグラビットは空に跳ぶ上がる!!
ビッグラビットが跳ぶのを確認したダンは、それでもギリギリまでその場を動かず待機。
…まだ、……まだもう少し、…………ッ 今!!
タイミングを見計っていたダンは、ビッグラビットの≪重撃≫をギリギリで避ける!
「今だ!!」
バッ! ーーードーンーー
ダンが攻撃をギリギリで避けたことで、攻撃が当たったと思ったビッグラビットは体勢を崩す。ダンもギリギリで攻撃を避けたこともあって、ビッグラビットの体勢が崩れて攻撃チャンスだったが攻撃が出来ない。
しかし、ダンがビッグラビットに攻撃できないのは問題ない。何故ならダンは1人じゃない、パーティーがいるからだ。
──行け、今だ皆!
──《了解!》
ダンの合図に攻撃を仕掛けるイルマとメラにシーラ。
メラとシーラは準備していた魔法を同時に放つ。
≪ウィンド・カッター≫ー風の刃ー
≪ウォーター・ボール≫ー水の玉ー
バランスを崩し、更に気付いていなかったメラやシーラの攻撃にビッグラビットは反応出来ず魔法に直撃する。
「ギュッ!?───ギ、ギュイ!!」
「まだだ!」
「ッ!?」
だが、魔法を直撃したビッグラビットはそれに耐えて反撃しようとするが、さらにそこで反対側に迂回していたイルマが飛び出してきた。飛び出してきたイルマの存在に驚きから隙を晒すビッグラビット。
そんな隙を晒すビッグラビットにイルマ止めの一撃を与える。
イルマの止めの一撃を喰らったビッグラビットは倒れる。流石にランクの低い魔物であるビッグラビットがそこからは起きあがることもなく、イルマ達は無事にビッグラビットを倒したのだった。
「よっしゃー!やったぜ、平原での初勝利ーー!」ガッ!
「「イェーイ!!」」パン!
「やったね!」
ビッグラビットという新しい魔物を情報を元にスムーズに倒せたこと、平原での初勝利に僕らはハイタッチしては喜び合うのであった。
そして初勝利に喜んでいた僕らだったが、「次行くよ!」と気持ちを切り替えては平原にいる他の魔物も情報を元に見つけ次第倒していった。
「おおっ!?こいつ情報通り、風の魔法を使ってきやがった!」
「でも威力は弱いわ!」
「風の魔法以外は脅威な物は無し」
「なら僕が風の魔法で魔法を相殺している間に、皆で倒して!」
「「「了解!!」」」
ウィンドバードは情報通り風の魔法を使ってきたがイルマが同じ風魔法で相殺し、そうすると武器を封じられたウィンドバードはただの大きい鳥なので、メラ達がイルマが風の魔法を相殺している間に問題なく倒せた。
「メラ、地面の方から魔物の反応が有るよ!」
「足下?……スライムキバね!あっ、いた!先手必勝《火の矢》!」
「おっ、倒したか?」
「……倒したみたい。強さはスライムと同等レベル?」
スライムキバはイルマ達が倒したことがあるスライムに牙が有るだけなので、牙だけを注意したら、大人なら厄介な足下の死角からの攻撃は、子供のイルマ達には死角にならず普通に倒せたのである。
そして平原での主に出現する魔物で、倒していないの後はレッサーウルフのみとなった。
そんな時、イルマ達の比較的近場からレッサーウルフの吼える声が響いてきたのだ。
「「「「ウォォオオオオオーー!!」」」」
「「「「!!?」」」」
レッサーウルフとの戦いは次回となります。