第131話(イルマの秘策)
遅くなりましたが今年も宜しくお願いします。
では、異世界トラブルの続きをどうぞ!!
「………マジかよ」
「複数のAランクやAランク相当の魔物に、そこに加えてAAランクの魔物が3体なんて……」
「こんなの、どうすればいいだよ……」
「無理だ……もう無理だろ!!」
「おい諦めるな!!此処で俺達が諦めたら、守りを失った王都はどうなる!?」
「……っだけど………」
「ならどうするだよ!」
「そ、それは………」
マモンによる暗黒魔法《蠱毒への誘い》にて、危険度が高い魔物が誕生し、王都防衛線は再び危機が訪れてもう無理だという諦めの声が漏れる。
幸いなことに、魔物達は急な進化もありその身に得た力を制御するためなのかまだ動きは見られていない。
そのお陰で危険度が高い複数体の魔物からまだ被害は発生していない。
「……どうする、イルマ」
「ちょっと真剣にヤバいわよ」
「ここにきてAランクやAランク相当の魔物相手、それだけなら何とかなったとしてもアレらの相手は厳しい。仮に倒せたとしても、相当の被害が出る」
「……………(どうする?皆の言う通りあの3体の相手は最低騎士団長クラスじゃないと相手にもならない位ヤバい。だけど、ガゼル総括や騎士団長達があの3体の相手をすれば、残りの戦力だと複数体いるAランクの魔物達に対応出来ずに犠牲者が多数出てしまう………!それに最悪の場合、被害はそれだけに収まらず王都が魔物に襲撃される!!)」
その時イルマ達も今の魔物側の戦力と王都防衛側の戦力を比較し、今の状況が相当不味いと認識し、イルマはどうすればこの危機を乗り越えれるのかと悩む。
それだけマモンの暗黒魔法、《蠱毒の誘い》によって誕生した魔物の存在はヤバいのだ。
何せ、誕生した3体のAAクラスの魔物は単体で都市1つを滅ぼすことが出来る存在なのだから。
◆◇
─────────
魔物ランクAAクラス
【混沌の熊】
巨大で強靭な肉体に加えて強力な魔力の守りを持ち、名前の由来にもあるように複数の属性を合わせ持つことで弱点な魔法属性が存在しない魔物だ。
その為、《カオス・ベアー》には魔法による攻撃はあまり効果が無く、倒すには物理的な攻撃でないと難しいが巨大な強靭な肉体と強力な魔力の守りをを持つ《カオス・ベアー》を物理的に倒すのは困難である。
魔物ランクAAクラス
【暴虐の狗】
純粋な戦闘力と過激な攻撃性を持つ狗の魔物。
それよりも脅威なのは、攻撃を受けたとしても傷を治す再生力。その《バイオレント・ドッグ》の再生力は強力で、例え手足が無くなることになったとしても頭部の大部分を吹き飛ばさない限り発揮する程であり、その再生力により《バイオレント・ドッグ》の継戦力は頭部を消すか、体力が尽きない限り続くのだが、前者はその戦闘力から難しく、後者は上位の魔物故に現実的ではない。
魔物ランクAAクラス
【巨大蠕虫】
通常のワームよりも更に巨大なワーム。
その大きな口で装備や建物ごと獲物を飲み込む。
攻撃手段はその大きな口での補食行為や巨大な肉体での体当たり、他にも口から酸を吐き出しては獲物を仕留める。
《バイオレント・ドッグ》よりかは劣るが此方も再生力を持ち、魔法物理共に驚異な耐久力を持つ。
それに加えて地中に潜ることから討伐するのが困難。
────────────
これがイルマ達や王都防衛線の前に誕生した3体のAAランクの魔物の情報だ。
何故こんなに詳しく情報が有るのかというと、この3体のAAランクの魔物は過去に現れたことがある魔物であり、その際多大な犠牲者を出しての討伐記録が存在し、その為この3体の魔物の情報は多くの人に知られていたのだ。
それだけに王都防衛に参加していた者達は、この3体の魔物の存在に絶望を感じていた。
「(どうする、どうしたらいい?今の現状全滅は兎も角、大勢の犠牲者が出るのは避けれないし王都の防衛が難しい。被害を許容すればだけど何も手を打つことなく大勢の犠牲者が出るのは避けたい!でも今の現状打てる手が…………ミルンまだなの?)」
Aランクの魔物やAランク相当の魔物に加え、3体のAAランクの魔物の存在からどうやって王都を防衛したらいいのかと頭を悩ましていたイルマの下に1つの念話が届く。
『イルマさん!あの準備が整いました!』
「!本当、ミルン!(ナイスタイミングだよ!)………よし、これなら───」
「?どうしたイルマ、何か手が有るのか?」
「何?どうしたの、何か手は有るのイルマ」
「…………イルマ」ジーー
「実は─────」
ミルンからの念話の内容を聞いたイルマは、この状況を変える手を打てる!っと先程の暗い表情に希望を見せ、そんなイルマの様子にメラ達は気付き声を掛けた。
そんなイルマだが、魔物達が暴れ出す前に直ぐ様にメラ達にこの絶望的な状況を変える手について話をする。
そしてイルマの作戦の内容を聞いたメラ達は、その作戦で自分達がどう動くのか聞いては緊張と恐怖を見せるが、そんな迷っているとその間に魔物達が暴れては犠牲者が出ると思い、唾を恐怖と緊張と共に飲み込みでは動き出した。
「くそっ!!」
──ガァン!!
危険度が高い魔物の誕生を阻止することに遅れたガゼル総括は、自分の行動の遅れのせいでこの危機的な状況を招いたと後悔し、苛立ちを地面にぶつけていた。
「(どうする?あの誕生した3体のAAランクの魔物は俺と騎士団長達が力を合わせれば何とか倒すことは出来るが、その間に他の魔物によって王都が危険に晒される。だからといって、あの3体のAAランクの魔物を放置する訳にはいかない。そんなことをすれば放置されたあの3体に横から無防備に攻撃されることになる。
…………なら、俺と騎士団長達があの3体を相手する間は各騎士団と他の者で倒すことは出来なくても時間を稼いで貰う……………駄目だ、この選択はリスクがデカすぎる。もし失敗したら王都への防衛線を越えられて、魔物達に王都を襲撃される。それに時間稼ぎに成功したとしても、俺と騎士団長達があの3体のAAランクの魔物を倒した後に複数体のAランクやAランク相当の魔物を倒す余力が残っているか……)
────チッ、どうすればいい!!今にも魔物達が暴れ始めるかもしれないってのによっ!!」
何か他に手は無いのか!!
ガゼル総括はこの危機に、何とか魔物から王都を守ることが出来る手は無いのかと必死に解決策を頭を回転させて考える。
だが、魔物達が何時動き出すのか分からないことが、ガゼル総括を焦らしては頭の回転を妨害していた。
そんな時、
「ガゼル総括!」
「っ何だ?───お前達は…………それよりも何しに」
「ガゼル総括!聞いて下さい、この状況を解決する作戦が有ります!!」
「何!?」
声を掛けてきた者がイルマ達と騎士見習いのセイナだと気付いたガゼル総括は、何をしに来たのか疑問に思い問いかけようとしたが、その前にイルマが発した言葉の内容に驚愕の声を漏らす。
「ガゼル総括、時間が無いので手短に話します。今の状況は不味いです。Aランクの魔物にAランク相当の魔物だけでも此方の戦力ではキツイのに、そこに3体のAAランクの魔物が存在してはこのままだと王都を防衛するのは難しい筈」
「……………ああ、言いたくないが正直言って現状の戦力では王都の防衛は難しい。あの3体の魔物の存在さえ無ければ何とかなったが、現状戦力が足りない」
「でも、そんな中であの3体のAAの魔物が1体になればどうですか?」
「あの3体が1体だけになればと?…………たらればの話をしても仕方ないが、あの3体がもし1体だけになれば俺がその1体を対応して、他の魔物は騎士団長達に任せれば何とかなるが………何か策が有るのか?」
「はい。ですが言ったように時間がその策を実行するためにもあまり無いのです。なので今は詳しくはその策を説明出来ないのですが、僕らを信じてくれませんか?」
「……………………」
イルマのその言葉に黙るガゼル総括。
時間が無いことで、王都防衛の策を詳しく説明出来ないというのに任せろっと言っているのだ。そんなこと立場的にも常識的にも考えて話にならない。
だが、今は他に手が無い。なのでガゼル総括は即断出来ずに黙ってはどうするか考えていた。
───《ガァアアアアーー!!!》
しかし、考える時間はもう残っていないようだ。
「!?この────分かった、責任は俺が取る。お前達は策を実行しろっ!!」
「了解です」
───タ,タ,タ,タ,タ
魔物達が動き出す気配を察知したガゼル総括は、イルマ達とセイナに責任は取るからと言っては策を実行させるよう命令し、その命令にイルマ達とセイナは策を実行するために動く。
「…………頼むぞ」
◆◇◆◇
『では皆さん、行きますよ!』
「頼むよ、ミルン」
『はい。妖精魔法、《妖精の導き》発動!!』
ミルンがイルマの策を実行するために、自身の魔法である、妖精魔法《妖精の導き》を発動させた。
ミルンが発動させた魔法は、妖精が人を迷わせる時に使う魔法であり、ミルンはイルマの指示でその《妖精の導き》を3体のAAランクの魔物の内2体に向かって発動させた。
《グルルルルッ!?》
《キィシャーーッ!?》
すると、その2体の周りに結界のような物が現れて2体の魔物が現在地を見失ったかのように頭を振って辺りを見渡す。
『やっぱり、こんな大きな力と身体を持つ魔物にはあまり長いこと魔法の効果が持たなそうです』
「分かってる。だから2体に魔法の対象を絞っただからね」
「…………説明されたが驚きだ。お前が妖精憑きなことと、妖精を直に見るとな」
「内緒ですよ?非常事態だから明かしただけなので」
「ああ、分かってるさ」
「お願いします。よし、なら次は───」
ミルンは人と違い、大きな力と身体を持つ魔物では魔法の効果が長続きしないと魔法の感触から悟りイルマにそのことを伝える。
イルマもそのことを予想していたこともあって、ミルンの魔法の対象を2体に絞って作戦を建てていたようだ。そして、イルマに協力を要請されて着いて来ていたセイナは話を聞いて知っていたが、直に妖精であるミルンの姿を見ては驚いていた。
そんなセイナにイルマは、非常事態だから秘密を明かしたので内緒だと告げてセイナは頷いて了承する。
そして、イルマはミルンの魔法の効果が切れる前に次の手を打つ為に行動に移る。
「ミルン、どう?そのまま魔法の維持しながらアレは大丈夫?」
『はい。問題ないです。イルマさんに戦いが始まる前に頼まれていただけに事前に準備が出来ていたので』
──セイナは無理ですけどね。
「それは仕方ないよ。でも、念のために動いていたのが助かったよ。お陰で作戦を実行出来そうだ。
───────そう、【同時・妖精融合】が」
そう、イルマの策は2つ有った。
1つ目は、ミルンの妖精魔法で魔物の足止めと隔離。
2つ目は、イルマとミルンでの【妖精融合】を他の者にも同時に行うことで能力値を高めてAAランクの魔物と戦える力を手に入れることだった。
ちなみに【妖精融合】は、妖精のミルンに憑かれているイルマがミルンと力を共鳴させることで強化する技能だ。
だが、イルマより相性が悪いとはいえど長いこと付き合いがあるメラ達3人となら、ミルンは事前に【妖精融合】を準備すれば可能であることをイルマに大会が終えた後に伝えていた。そこでイルマは、この戦いでの保険としてミルンにその準備をさせていたのだ。
そして、イルマはその保険を2つ目の策に組み込んだのである。
この説明を皆にイルマがした際、
「本当に大丈夫なのか不安だけどよ、やるしかないか………」
「確かにね。でもしないとAAランクの魔物には勝てないからするしか選択肢は無いわ」
「でもイルマ、本当に大丈夫?イルマは1人でAAランクの魔物を担当するのは無茶だと思う」
「その分は固有技能の【ガチャ】で、僕自身よ能力値を高めて補うよ。それに雷鳴剣の力も有るしね」
イルマの作戦を聞いたメラ達は、不安が有るが策は他に無いこともあって覚悟を決めた。だが、イルマがAAランクの魔物を1人で担当することには心配の声を漏らすも、イルマは固有技能【ガチャ】と雷鳴剣の力で何とかすると告げるのである。
「それとセイナさんの力も借りよう。あの人はまだ騎士見習いだから戦力から引き抜いても騎士団としてはそこまで問題ないと思うし、あの人は固有技能を保持している上に実力も有る」
「セイナか。アイツの実力と戦い方を知ってるから一緒に戦闘していても戦い易いしな」
「そうね、誘いましょう」
「協力してもらうの賛成」
「よし。確かセイナさんは………あっちか!」
そして、策を話終えたイルマ達はセイナにも力を貸して貰う為にセイナに話しにいく。
その後、イルマ達から話を聞いたセイナはその内容を聞いては信じられない気持ちになったが、イルマが証拠として妖精であるミルンの姿を見せては信じて貰い、ガゼル総括に策を伝えに行ったのだ。
「行くよ、ミルン。皆!」
「「「おう(ええ)!」」」
「……………(俺だけ除け者だな)」
「『【同時・妖精融合】!!!』」
次回、戦闘回になります。
セイナ:俺の出番有るのか?俺だけ強化されてないのだが。
A、有ります。しかし、お助けキャラ位になります。何故なら強化されてないのだから。