【小話5】(イルマ達とターナやヒルゼとの出来事)
【ターナとイルマ達】
商人ギルド副ギルドマスターのターナ。
イルマ達はそんな彼と《荷物捜索》クエストの件で世話になったその後も何度か彼と交流があった。
それは何の交流かというと……
「────ターナさん。今回はこれをやればいいんですか?」
「ああ。助かるよ。悪いけど今回も早急に頼むよ」
「はい。僕達もターナさんから依頼を直接受けることでギルドを通すよりもずっと高額な報酬を更に上乗せで貰っているので早急に依頼をこなしますよ」
ターナはイルマが報酬に満足していることに「それは良かった」と呟く。
そう、イルマ達はターナと《荷物捜索》後からの交流とは、ターナがギルドを通さずに直接依頼をイルマ達に出しては受けるということをしていた。
それは一度や二度のことではなく、ターナは商人としてそんな直接依頼をイルマ達の能力を知った後、報酬が多少高くともギルドとの手続きがなくてイルマ達の能力の高さもあって依頼を早急にこなしてくれるイルマ達に何度もギルドに通さずに依頼を出していた。
イルマ達もギルドの評価にはならないがターナから直接依頼を受けることで普通に依頼をこなすより報酬が貰えることや生活費を稼ぐためにもターナから直接依頼を報酬が更に多少上乗せしてくれることもあり何度も受けていた。(イルマ達は親等から貰っていた生活費はあるが、足りないもしく欲しい物を手に入れるためにこうして日々からクエスト等をこなしてお金を稼いでいる)
ちなみにギルドを通さずに依頼を依頼者から直接受けることは別に違反行為ではない。
直接依頼を受けるのはギルド側を通さないことで報酬が丸ごと貰えたり面倒な手続きをしなくてもいいことやランク以上の物を受けれたり等とメリットがある。しかし、それはギルドを通さずに依頼を受けることで依頼者から騙されることや報酬を渋られることなど様々なトラブルが起きるリスクに繋がる。
それは冒険者ギルドの信頼や依頼者がギルドを通さずに依頼を直接冒険者に受けられると、依頼の仲介をすることで収益を獲ているギルド側としては収益が減ることもあり推奨していない。
しかし、イルマとターナの場合みたいに互いに知り合いがいて、ターナはイルマ達の大体の力量を知っている上に身元がハッキリしている等、依頼者と冒険者の間(正式にはイルマ達は冒険者ではまだないが)で信用や信頼がある場合はギルドを通さずに直接依頼をした方が得なこともあって、冒険者や依頼者の間では極力リスクを減らしたり、金銭的な理由で直接依頼を受ける、受けて貰うことは珍しいことではなかった。
そんなこともありターナは、今回も早急にこなして欲しい依頼をギルドを通さずにイルマ達に直接依頼を出していた。
「なら今回も君達が早急に依頼がこなすのを期待して待っているよ」
「はい。皆、今回も早急にターナさんの依頼をこなすよ」
「「「『おう(了解)(了解です)』」」」
そしてターナから直接依頼を受けたイルマ達は、お金を稼ぐ為に、報酬をターナから上乗せして貰う為にも、今回も気合いを入れて早急に依頼をこなすのであった。
【イルマ達とヒルゼの魔道具作成】
イルマ達はヒルゼのお店にお邪魔し、新しい物や自分達に有効な魔道具をヒルゼと一緒に考えている時のこと。
「ヒルゼさん、ヒルゼさん!この、今店に置いてある肉体強化系の魔道具よりももっと肉体を強化する魔道具を作ってくれよ!例えば使えば巨人でも持ち上げれるぐらいのすげぇやつならめっちゃ最高だぜ!!」
「えっ!?…………そ、それは幾ら何でも無茶な………」
「それぐらいの物をチャレンジして作ってみてくれよ!」
「え、え~~…………」ジーー
ヒルゼはダンが無茶な注文の魔道具を作ってくれと催促されて困り、目線でイルマ達に助けを求める。
「………馬鹿」
「ダン、アンタ馬鹿なの?」
「何だよ?そんな魔道具があれば皆も助かるだろ?」
「あのね~、巨人を持ち上げれるぐらいなんて、そんな無茶苦茶な魔道具なんて簡単に作れる訳がないでしょ!!」
「………それに今この店に置いてある肉体強化系の魔道具は、ヒルゼさんがこの前に作成したばかりの最高の出来って言ってた物。なのに、それ以上の肉体強化系の魔道具を作れは無茶なお願い」
ダンがヒルゼにこの前作成して店に置いてある、自分の腕で最高の出来であった肉体強化系の魔道具よりも更に上の肉体強化系の魔道具を作って欲しい!というそんな無茶苦茶なお願いをヒルゼにしたダンにメラとシーラがヒルゼの助けに答えて馬鹿、そんな簡単に作れるか!っと注意する。
「何だよ~~チャレンジして作ってみるだけなら別にいいだろ?」
「だ・か・ら!今、この店に置いてある肉体強化系の魔道具がヒルゼさんが作れる最高の出来の物って言っているのよ!」
「………なのにそれ以上の物を作れって簡単に言っているダンがおかしい」
「うん、僕もちょっとダン君のそのお願いを叶えるのは無茶だと………」
んだよっとダンは皆から自分の願いを無理と否定されて拗ねる。
そんなダンがヒルゼに無茶なお願いを言っている中黙っていたイルマはというと………
───ダンの無茶なお願いはともかく、前世であった物を魔道具で作成出来れば今ある魔道具よりも効果が強化した物が出来ないか?例えば技能≪魔力感知≫の能力がある探知系の魔道具に、技能≪魔力放出≫と技能≪魔力感知≫を組み合わすことで技能≪魔力放出≫で放出された魔力に当たった反応を技能≪魔力感知≫で感知する魔力式のレーダーとか作れないだろうか?
とイルマは前世の記憶から、ダンのお願いとは別の形で今ある魔道具よりも効果が高い魔道具が作れないかと考え、とりあえずイルマはヒルゼが自分が今考えていた物が作れないかと声を掛けることにした。
「ヒルゼさん」
「うん?何だいイルマ君」
「こんな魔道具は作成出来ますか?」
とイルマは先程考えていた魔力式のレーダーの案をヒルゼに話す。
するとイルマから技能≪魔力放出≫と技能≪魔力感知≫を組み合わした魔力式レーダーの話を聞いたヒルゼは目を大きく開いた後考え込む。
そして、考え込んだヒルゼは「…………驚きだよ。そんな風に技能を組み合わせて魔道具を作成することは考えたこともなかった」とイルマの技能を組み合わして魔道具を作成する案に感心し、その後ヒルゼはイルマが話した魔力式のレーダーを作成してみることにした。
そして、
「…………出来た!!」
「本当ですか!?」
イルマから聞いた技能≪魔力放出≫と技能≪魔力感知≫を組み合わした魔力式のレーダーの魔道具の試作品を作成出来たヒルゼはイルマ達に見せる。
その試作品の魔力式レーダーの魔道具を見て喜ぶ皆。
しかし、
「(…………なぁ、これっているか?イルマの固有技能の【メニュー】があれば必要ない処かそっちの方が効果が高いじゃあないか?)」
「「「『(………あっ!?………そういえば………)』」」」
「???」
折角イルマの前世の記憶を使って新しいタイプの今ある探知系の魔道具より効果が高い探知系の魔道具を作成したのだが、肝心の魔道具の効果がイルマの固有技能と被り、更に固有技能の方が効果が高いこともあってそこまで必要でないことに魔道具を作成後に気づくイルマ達。
そんなこともありイルマ達は、新しいタイプで効果が高い魔道具を作成出来て喜ぶヒルゼには悪いが新しく作成された魔道具に本心から喜べずにいたのであった。