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盗賊たちよ、世界を救え  作者: 瀬川弘毅
1 邂逅編
2/89

01 僕は戦わない

『今朝未明、ミッドウェー軍基地を壊滅させた謎の勢力について、現在アメリカ当局が調査を進めています』


 ニュースキャスターが読み上げる内容を、八束継介(やつづかけいすけ)は興味なさそうに聞いていた。


 ラップを剥がし、レンジで温めた総菜をテーブルに並べる。

「夕飯に食べてね」と母が作り置きし、冷蔵庫に入れていたものだった。


 テレビ画面に映っているのは、地図から消された軍基地。一見すると砂丘か何かに見えるが、建物が全て跡形もなく吹き飛ばされた結果なのだろう。


挿絵(By みてみん)


『専門家は、現代の科学技術ではありえない現象だとコメントしており……』


 そこで八束はテレビを消した。いつも通りの一人の食事を、静寂の中で行った。


(くだらないよ)

 彼にとっては、アメリカの軍基地が一つ減ろうがどうでもいいことだった。


 自室に戻り、勉強机に向かう。

 机の上に見慣れない物体があるのに気づき、八束は眉をひそめた。

 それは鍵束だった。十種類ほどの鍵が、金属のリングにまとめて結びつけられている。


(何だろう、これ)

 ともかく、勉強の妨げになるものは排除するまでだ。八束は鍵をゴミ箱へと、無造作に放り込んだ。


 しかし、異変は続いた。

 手洗いに立ってから部屋に戻ると、机の上に鍵束があった。先ほどと同じ位置に、同じ向きで置かれていた。


(君、よく聞きなさい)


 突然どこからか声がしたので、八束は腰を抜かしそうになった。


(もうすぐ、地球を支配しようと企む侵略者がやってくる。君は戦士に選ばれた。君はこの武器を使い、戦わなくてはならない)


 よく聞いてみると、声は鍵束から響いてくるようだった。


「嫌だよ」

 しかし、八束の答えは否だった。

「第一、そんな馬鹿げた話を信じる理由がない」


(信じる、信じないは君の勝手だ。けれど、これは事実なんだ。侵略者への対抗手段を持っているのは、戦士として選ばれた者だけなんだよ)

 謎の声が響くたびに、鍵束がぼんやりと輝いた。


「勘弁してよ」

 うんざりしたように、八束は首を振った。


「僕は今高校三年生で、受験勉強を頑張らなきゃいけない時期なんだ。そんな大切なときに、どうして戦わなくちゃならないんだよ。僕は自分のことで手一杯なんだ」

 そして、鍵束を乱暴に払い除けた。


「他を当たってよ。僕よりも暇な人なんて、探せばたくさんいるだろ」

 説得を諦めてくれたのだろうか。不思議な声は途切れ、鍵は光を失った。

 八束はほっとして、勉強を再開した。



お待たせしました。ようやく主人公が登場しました。


ただ、八束継介は少々ひねくれた人物です。猪突猛進な、いわゆる「主人公」タイプではなく、あれこれと理由をつけて戦うことを拒みます。


今後、彼がどのように成長していくのか、何故彼は歪んでしまったのかに注目していただければと思います。


(追記)挿絵を載せてみました!主人公の八束継介君です

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― 新着の感想 ―
[一言] 世界情勢を気にしない準成人!やばい、世界終わった……!成長に期待ですね!
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