終章 「素人探偵」誕生?③
「で……?」
「で……?」
盛り上がっていたところで話を切られたので、三宅はシャープペンシルを持ったまま、浮音の顔をのぞき込んだ。遠くでカラスが鳴き、応接間の窓ガラスは夕焼けで朱に染まっている。
「――こっから先はまあ、また今度やな。ブン屋をきどるのはええけど、高校生のうちは早よう家にお帰り……」
それだけ言うと、浮音は三宅さんお帰りやってさ、と、意地悪く笑いながら有作へ伝える。
「そんなあ、お預けだなんて憎いですよ鴨川さん……!」
「まあまあ、そうカッカしなさんな。三宅ちゃん、あんたにゃあまず、門外不出だった最初の事件のことを洗いざらい話したんや。まずはそいつの方から調理してもらわへんことにゃあ、なにも始まらんと思うんやけどなあ……」
浮音の言葉に平静になると、三宅はしばらく考え込んでから、じゃあ、そういうことで……と、渋々翻意を受け入れるのだった。そして、二人に見送られて今出川へ出ると、三宅は家の最寄りへ通じる三条京阪行きの五九系統へ飛び乗り、程よく空いた後部座席でメモを読み返していた。
――どういう風なキャッチでつかんで、連載してやろうかな……?
誰もが驚く、誰かのくすぐったい噂や、世にも奇妙な特ダネを人より早くつかみ、読者をアッと驚かせる――それを大いなる生きがいとする三宅は、ますます強烈さを増して、口をひくつかせ微笑んでいる。
忍び寄る初夏の兆しの中を、五九系統はラッシュを縫い、懸命に走るのだった。
北大路の殺人 終
本作は「小説家になろう」のために書き下ろされたものです。




