第8話 部活に入ってもクラスに変化は無い
こんにちは魂夢です。とりあえず一章は終わったので一旦休憩します。
清々しい朝……、とは言ってられない。ただでさえ朝は気分が下がるのに、俺はとあることで憂鬱だった。
理由はもちろん、あのぼっち部のことである。
そもそも、俺は家事をしなきゃならず、だから部活には入らぬようにしていたのだ。
それがあの教師失格の代名詞こと小原先生のせいで……。ぜってぇ許さねぇからなマジで。
「なぁ松葉。お前本当に部活入ったのか?」
わざわざ俺の机までやってきた鶴城が、そう訊いてくる。
「小原先生に無☆理☆矢☆理だぞ? てか誰から俺が部活入ったの聞いたんだ?」
あの部活に男俺だけってキツすぎる。なんなら鶴城にも入って欲しいが、こいつはサッカー部だから入れないだろう。
てかサッカー部のイケメン率が高いよぉ……。
「いや、フツーに小原先生から聞いた」
あんのクソ教師ぶち転がすぞ。ちなみにぶち殺すじゃないところが俺なりの優しさだ。
○
一限目の授業が終わった。俺は二限目の準備を速やかに終え、暇つぶし用の本を開く。
「そうそうー! それでね────」
声が聞こえる。恋綺檄の声だ。
彼女は、イケメン+頭良い+優しいと三拍子揃ったカーストの頂点こと柳 津々慈たちと共に会話に花を咲かせている。
もうあいつ完全にぼっちじゃないじゃん。まぁ俺もぼっちではないんだが。
ぼっち以外の人がぼっち部入るならぼっち部って名前じゃなくて良いと思うんだがそれは……。
「てかてか、ミカッチさ、こんど遊び行かなーい?」
遊びに行かないってそれほんとに行きたいと思ってんの? 絶対社交辞令的に言ってるよね? あーやだやだ、そうやって思ってもないことスラスラ言う人俺は嫌いだし、絶対そんな人種になりたくない。
でもまぁあの人はハーフのノリノリちゃんって感じのやつだから、その辺はあんまり深くは考えていないのだろう。あとミカッチってなんやねん……。
悪いがノリノリちゃんの名前は存じ上げていない。だが柳と一緒にいるのを何度か見かけたことがある。
他にも柳組は何人かいて、例えば短気君とかクールちゃんとかポワポワちゃんとか。しかしみんなそろいもそろって化粧してたり制服を原形留めてない程に魔改造を施してたり、髪の毛染めてたり……。
なんなの不良なの? 校則で髪を染めるのは禁止って書いてあるだろう。お前のことだぞ恋綺檄!
制服だって着崩すくらいならまだしも魔改造するのは普通に校則違反だと思う。
が、ここの中学高校は制服には無駄に力を入れているし、別に構わないのだろうか。
余談だが、うちは制服の種類が無駄に多い。ブレザーは一種類だが、ワイシャツ白青桃の三種、その他にセーター黒白の二種、パーカーも黒と赤の二種などなど。
無駄に力を入れてるのは、おそらくここが洋服会社と何らかの業務提携をしているからであろう。学校説明会でも結構推してたし。
ふと、俺は思い立って扶桑花に目を向けた。
彼女は、窓に目を向けつつ数人の友達と何かを話しているようだ。
俺の席と最も遠い位置にある席での会話は、騒がしい教室の中では俺の耳まで届かないから、何を話しているかまではわからない。
それでも、何かしらの質疑応答をしているように見える。俺は読唇術を持ってないから正確ではない。が、相手が何か言って、それに扶桑花が何かを短く答えているのがわかる。
なんだ、扶桑花もぼっちなんかじゃないんだな。
ならなおさら疑問だ。なぜ俺たちが所属している部活の名前はぼっち部なのか。
小原先生は何も考えていなさそうに見えて色々考えてる人だ。小原先生は過去にも一度俺の担任だったことがあるから、俺にはわかる。
何かを企んでるんだ、あの人は絶対。ぼっち部、恋綺檄と扶桑花、そして俺。集めてコミュニケーション能力を向上させて、何をしようって言うのか。
悲鳴を上げて教室の扉が開き、ほぼ同時にチャイムが鳴り響き、俺は頭の中からぼっち部のことを振り払った。
今考えてもたぶん無駄だ。なら無駄な考察するために努力するなら、他の絶対しなきゃならんことに努力したい。
本来なら努力なんて一ミリもしたくないんだけどなぁ……。