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第72話 一抹の不安はきっとある

こんにちは魂夢です。昨日また投稿忘れたので後でまた投稿します!

 キッチンを離れて自室に戻る。真莉が夕飯を用意してくれるまでの幾ばくかの間、とりあえずは計画を立てることにする。


 俺の得意教科は国語と英語と歴史と……家庭科。……いや家庭科ね、うん。大事な教科だよ? 家庭科結構蔑ろにされてるけどすごい大事……だと思う。根拠とか出典とかソースとかエビデンスなんてものは無い。


 俺の文系的な得意教科に対して柳の得意教科は……。と俺は前回のテストの教科別順位表を取り出す。そこから察するに奴の得意教科は国語と数学…………いやこいつ全教科でトップテン入りしてるぞどういうことだよ……。


 と、あまり笑えもしない冗談を考えているのもここまでだ。そろそろ頭をシリアスモードに切り替えないといけない。


 テストまではあと三週間と少しだけ、それまでに俺は柳に努力して学力で勝たなければならない。勝って……扶桑花に笑ってもらうのだ。


 でもその行為は、好きな人を嫌いな男に渡すことに他ならない。だが……俺は前も言ったはずだ。


 俺にラブコメなんて……似合わない。


 もしも世界に主人公が存在しているのならば、俺はきっとモブとか脇役とかその他大勢とかに属するのだ。カワイイ幼なじみとか、食パン咥えた美少女と出会い頭にぶつかってトゥインクルしたり、そんなことは起こりえない。


 いつだって、俺の歩く道はラブコメ要素の無い茨の道だ。そしてそこを歩いた先にあるのは確定した闇。でも、そうでなければ俺の……いや、そうであるからこその──。


 ────努力嫌いな俺のラブコメだろ。



 飯を食い終わってもう一度考えてみる。俺に残された時間はたったの三週間だ。その時間で柳を超えるのは不可能と言わざるを得ない。実際、昔の俺ならきっと無理だと匙を投げていたはずだ。


 でも……今はそんなことを言っている暇も時間も、ましてや心の余裕すら無かった。余計なことは頭の外に追いやって、ただひたすらに、殴るようにペンを走らせ、頭を働かせる。


 小さな電気が机だけを照らす薄暗い部屋の中で、聞こえてくるのは俺のペンが奏でる擦るような鋭い音だけだった。


 ……三時間か、それともそれ以上か。いつからか時間を気にすることは無くなって、ペンを一心不乱に走らせていると、不意にスマホが震える。少し迷った結果誘惑に負けてスマホを手に取ると、通知の正体は恋綺檄からのLINEだった。


『急にごめんね、どう? 勉強捗ってる?』


 言葉としてはたったの一言なはずなのに、自然と俺の頬が緩み、気付くとポチポチと返信を打ち込んでいた。


『まぁな、ぼちぼちだ。今日から毎日勉強三昧だし……』


 勉強三昧すしざんまい! まぁ俺すしざんまい行ったことねぇし、なんならスシローの方が好きだし。パフェいわし! いやこれはカッパ寿司だったな……。あのおじいちゃん元気かな……。


 と、またもや通知音が鳴って、またもやメッセージが送られてくる。


『柳くんも勉強始めたんだって。対決があるとは言ってないらしいけど』


 俺はため息をついて、頭を抱え込む。もうすこし、勉強を増やした方が良いのかもしれない。柳に勝つには、それくらいしなければダメだろう。


『なるほどな。すまん、俺勉強に戻るわ』


 それだけ打ち込んで、俺はスマホの画面を伏せて置こうとするが、それよりも前に恋綺檄から返信が来てしまい、見る。


『程々にしてね』


 普通のLINEなのに、なんでか心が痛くなる。恋綺檄からすれば……不安なのかもしれない。前世の俺が過労死したとすれば、きっと……またそうなのではないかという一抹の不安がずっと頭の片隅にあるだろう。


 でも、もちろん俺はここで死ぬつもりなんて無い。

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