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第7話 彼女の声音は静かで水のようだった

こんにちは魂夢です。前書きのネタ無いです!一人でしりとりでもしましょうかねぇ……。

 六時にもなると、町は夕日に照らされてオレンジに輝く。

 そんな中、俺たちぼっち部員は駅まで一緒に向かっていた。


 学校から駅までの道は長くはない。俺は扶桑花と恋綺檄が駄弁っているのを聞きつつ、オレンジに染まった風景に見惚れていた。


「それじゃあ私はこっちだから、さよならだ」

「ばーいばーい! また明日!」


 言って扶桑花は胸のあたりで手をフリフリした。

 それに応えて、手を大きく振ってる恋綺檄。それを尻目に俺はポケットから手を出して軽く手をあげることで応える。


「じゃ、帰ろっか」


 声の温度が数度下がった恋綺檄が、そう言った。


 俺は彼女に連れられるようにして駅に入る。


 するとすぐに電車が到着して、俺たちはそれに乗り込んだ。

 六時頃の電車は満員ほどではないにしろ、座れないくらいには混んでいて、俺と彼女は手頃な吊革を掴む。


 俺はしばらくスマホを見ていたが、突然恋綺檄は俺の耳元で囁く。


「あたしね……、本当に神様なんだよ」


 近い! 怖い! 近い! かわいい! 近い! 良い匂い! 近い!

 そんなことを考えて気を逸らそうとしても、彼女の言葉は俺の耳にスルスルと入り込んでくる。


「そ、そういう冗談は……、面白くねぇよ」

「冗談なんかじゃ、ないよ」


 恋綺檄の声音はいつもの弾むような声音なんかじゃなく、静かで水のような声音だった。


 真剣なのが肌でわかる。でも何故そこまで真剣なのか、頭で考えてもわかる気がしない。


「……あたしの家に来て」

「は? 今から?」


 俺はそう言うも、恋綺檄は吊革を掴む手に力を込めるだけで答えてはくれない。

 それに、行かないと言いたいところだがそんな雰囲気ではなくなってしまっていた。


 女の子の部屋なんて……、何年ぶりだろうか。



 とあるアパートの一室が、恋綺檄の家だった。

 最寄り駅は俺の最寄りと学校との間くらいの駅だったように思える。


「いいよ、入って」


 恋綺檄は俺をチョイチョイと手招きした。

 俺はお邪魔しますと呟きながら玄関で靴を脱いだ。


 なんかすげぇ緊張する……。大丈夫かな靴下に穴空いてたりしないかな。


「あれ、お前趣味とかないのか?」


 恋綺檄の家は驚くほどに殺風景だった。冷蔵庫や畳まれた布団はあれども、テレビや本棚なんかの娯楽の類が一切無かった。


「ねぇちょっと……」


 恋綺檄は不意に俺の頭をその柔らかくて細く美しい指で触れる。


「ちょっ、何を────」


 目の前に電撃が走ったかと思えば、真っ白になった。かと思えば、俺は真っ暗な空間に立っていた。


 脳の処理がまったくもって追いつかない。さっきまでは夕日の差し込む恋綺檄の部屋にいたはずで、俺は──。


《恋綺檄 美嘉はこの神界で最底辺の神である》


 頭の中に文字が浮かび上がるように声が聞こえてくる。自分でも何を言っているかわからない。右を見ても、左を見ても、付近に人は見られない。


「……」


 俺は唖然としてしまって、声が出なかった。ただ俺の胸の中に湧き上がるのは話しているのは誰だという、疑問。


《私は恋綺檄 美嘉の師匠という認識で良い》


 頭に響く声は無駄に野太い男の声。


「幻覚……とか、か……?」

《まだそんなことを抜かすか。なら良い》


 言い終えると、その師匠とやらは黙る。本当に何を言ってるかわからな────っ!?


 後頭部を強く打ったような、まるで金槌で殴られたような激痛が走る。そして見たことのないはずの光景がフラッシュバックし、そしてそれに関する知識が俺の脳内を駆け巡った。


「かはぁっ!」


 目が覚めると、目の前には恋綺檄が何食わぬ顔で立っていた。

 俺はさっきから、一歩も動いているわけでは無いのに、肩で呼吸していた。


「私が神だって、わかってくれた?」


 ……誠に残念ではあるのだが、彼女が神であると認めざるを得ない。


 なぜ、と問われても俺は明確に、そして的確には答えられないだろう。なんと表現すれば良いのかもわからないのだが……、“彼女が神であるという事実を刻み込まれた”と言えばいいのだろうか。


 後頭部の痛みもまるでそんなのは元から無かったみたいに消えて無くなっている。


「……自分の目を疑うが……、とりあえずはそういうことにしておく」


 俺がそう言うと、恋綺檄はぱぁっと笑顔になった。


「よかった! じゃあ出て行って、あたしのプライベートゾーンを侵害しないでぇ!」


 彼女は俺の背中を押すようにして強引に家から追い出した。

 ……別にそんな強引にしなくても俺はちゃんと帰るけどな。

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