第57話 彼と彼女はお似合いであった
こんにちは魂夢です。今日初めてツイキャスやってみたんですが、めちゃくちゃ楽しかったですww
十二月二十四日、人はこの日をクリスマスイブと呼んだ。別の言い方をするならばエロサイトのアクセス数が増幅する日、ラブホテルが満員になる日である。
てか性についてキリストは後ろ向きな考えじゃなかった? なにやってんだよ日本のバカップル……。
「ねぇ、ほら来たよ」
俺の袖を恋綺檄がチョイチョイと引っ張る。彼女の視線の先には密着してイチャつく金城と柳がいた。
くっそぉ……イチャイチャしやがって……。俺にもさせろよ!
とか思ってると、手に絡み付いている金城と柳は、どぎついランドの入園口でチケットをバリってやってもらって、中へ。
後を追って、俺と恋綺檄、そしてなぜか元気が無い扶桑花も入る。入りたくはないが、尾行するらしいし、入るしかない。ちなみに金城からは承諾を得ている。いやなんでオッケーしちゃったの……。
数週間前に来たときより少しばかり園内の人数は多い。基本的に小学生高学年とかと、子連れの家族と、カップルがほとんどだった。
チラと横を見れば、扶桑花がいる。だかここに来てから彼女は一度も声を発していない。電車に乗っているときは多少話してくれたのだが、遊園地に近づくにつれて口数が著しく減った。
「扶桑花?」
声をかけてみても、扶桑花は虚空を見つめている。肩を少し叩くと、彼女は体全体をビクンと跳ねさせた。
「大丈夫か?」
「ふぅ、ふぅ。あぁ……大丈夫だ」
何度か呼吸を置いて、そう返してくれるが、彼女は目を合わせてはくれない。地面をキョロキョロも見て、一瞬金城に目を向け、また地面を見る。
なんだか、その動きが不吉な出来事の前兆に思えてならなかった。
○
黒のマフラーに革ジャン、細い手袋にジーパンというデートにしては軽めの服装の金城と、紺のチェスターコートに紅のニットというどっからどう見てもイケイケコーデの柳。
金城と柳の様は誰が見ようとお似合いのカップルだった。軽口を言って場を和ませる金城と、それを優しい瞳で見守りながら頬笑む柳。その構図が付き合って何年? と聞きたくなるほどに和やかだ。
きっと端から見れば彼らはカップルに見えるだろう。そもそも違和感が無いし、逆に付き合ってないことに違和感があるくらいだ。
時刻は五時を過ぎ、空は真っ暗になっている。けれど、園内のイルミネーションなんかの光が多いおかげでそれほど暗くなったという印象はない。
それより赤とか青とかの色をした光が増えたせいでチカチカしていて、目の負担として日があるときより大きい。
柳御一行様はレストランへ入った、夕食を取るようだ。俺たちも尾行組も後を追って同じレストランに入る。
中は木造で、無数のランタンのようなものが天井から吊されている。ランタンのオレンジの光は俺たちの心を穏やかにさせるようだ。
てか、この雰囲気どっかで感じたことがある気がするが、どこだっけか……。あ、びっくりドンキーだ、あそこの雰囲気そっくり。
「げぇ……。ここのメニュー高いな」
「……そりゃそうだろう。ここは遊園地だぞ」
俺はハッとして、メニューから右斜め前にいる扶桑花に視線を向けた。
「……どうした?」
あ、いや。そんな曖昧な言葉を発して、俺はメニューへと視線を戻す。けれど俺はメニューなんて見てはいない。
ようやく扶桑花が口を開いてくれた。ここに到着してから何か訊いたり、会話を投げかければ返事くらいはしてくれたが、自ら会話を切り出すことは無かったのだ。
理由はわからない。体調が悪いからとか、そんなのかもしれない。でも、なんだか気がかりだった。
「松葉くん、何食べるの?」
恋綺檄の声が聞こえて、俺は現実に戻される。しまった何も決めてない。
「えっと、醤油ラーメンで」
たまたま目に入った文字は『醤油ラーメン千五百円』だった。