第5話 彼が出会った彼女はあまりにも美しい
こんにちは魂夢です。メインヒロインは今回登場しまっす!
入部届だと? なぜ俺が入部しなきゃならんのだ。あんなの青春大好きな人達に任せとけよ。俺みたいな奴に持ってくるやつじゃないだろ。
「松葉、お前はそろそろ部活に入ったほうがいい」
俺がじとーっと入部届を睨みながら断る雰囲気をプンプンだしていると、突如背後から小原先生がそう口にするものだから、俺は思わず飛び退いた。
なんだこの人、気配を一切感じなかったぞ……。なんなの先生の家系は忍者かなんかなの。怖いよ。いや怖い。
「いや、でもほら別に義務ってわけじゃないし……」
「確かにそうだな。なら、松葉は特例で義務だ」
んな横暴な……。こんなことが許されて良いんですかね。この人本当に教師なの?
「そ、そもそも、なんの部活なんです? 運動部とか俺絶対嫌ですよ」
「安心したまえ、運動はしないさ」
小原先生が顎で恋綺檄を指すと、彼女は何かを察したのか、鞄からまたもや一枚の紙を取り出す。
そこには「ぼっち部」とか言う得体の知れない部活の活動内容と銘打ってある。その紙を俺は彼女から受け取った。
えーと、なになに?
ぼっち部、とは生きる意味の無いような無価値な生き物、ぼっちを集めてコミュニケーション能力を育み、ぼっちと言う生命体かられっきとした人間にすることを目的とした部活である。
……いや流石に口悪すぎない? ねぇこれ崇高なぼっちの方々に怒られるよ。
「こ、この文章誰が……」
「これはオレが執筆したんだ」
小原先生は言いながら胸を張った。
いやなんであんたちょっとドヤ顔なの、どこにドヤれる要素あったの。
「おい恋綺檄、俺はそんな部活入らねぇからな。あと俺ぼっちじゃねぇし……」
なんかしれっとぼっち認定されているが、俺は別にぼっちではないのだ。
たしかに友達が多いとはお世辞にも言えないが、全く居ないわけじゃない。だから俺はぼっち部なんぞ入る必要ないと断言できる。
「……おい松葉、本当にいいのか? そんなこと言っちゃっても」
え、なにがなにが。俺別に成績とか授業態度悪くないよ? よくある感じのそういうとこで脅したりはできないからな?
「オレは担任だ、そうだろ? ならオレはお前の成績を下げることだって余裕なんだぜ? そしたら赤点補習に来なきゃ行けなくなるなぁ?」
成績悪いからそこを免除するかわりとか、そんな感じじゃねぇ! 完全に俺にを脅している!
あ、赤点補習なんて絶対にやりたくない……。あんなの努力を強制する場じゃないか……。
俺は基本的にテストなんぞで努力はしたくないからノー勉で挑んでいるが、それでも中学時代は一度も赤点を取ったことはない。
それなのにこんなことで赤点補習に行きたくない。
「そ、そんなの教師失格だ!」
なんとでも言え、小原先生はそう言いながら大きく笑う。
マジで最低なこのクソ担任のせいで、俺はこのぼっち部とかいう部活に入部せざるを得なかったのだった……。
○
というわけで、俺はぼっち部とかいう意味のよくわからない部活の部室に俺たちはやってきていた。
ここは部活棟の空き部屋の一つであるが、ぼっちが世のため人のためにできることを探し、実行するための部室。こう聞くと機材も特には必要じゃ無さそうな物だがどうなんだろうか。
ガラリとうちのクラスよりも段違いに立て付けの良いドアを開ける。
なんと、そこには肘をつき、一人窓から入ってくる風に当たっている女子がいた。
風に揺られる黒茶色の髪は夕焼けに照らされ、きらびやかに輝いている。
そして彼女の艶やかで美しい肌はまるで梨や林檎の皮を剥いたかのように潤い、そして白く美しい。
窓の外を眺める彼女は、かのゴッホやミケランジェロでも正確に絵にできなかっただろう。
現実離れした美しさが彼女そのものだった。
俺ははっとした。不覚にも数秒、いや数十秒ほど見惚れていたのだ。
彼女があまりにも美しかったから……。
何を言っているのか自分でもよくわからない。彼女は確かに美しい。けれど、俺が彼女を見つめた理由は他にあるような気がしてならない。
俺と彼女は面識も無いというのに。
彼女から慌てて目を逸らし、俺は小原先生を見た。