第46話 たった数年で関係性があまりにも変わってしまった
こんにちは魂夢です。明日アベンジャーズを映画館に見に行こうかと思ってます。関係ないですねww
視線を皐月に戻せば、彼女は他のぼっち部員たちと談笑している。俺がこの場に居ることを知らぬように。
「あ、麗良ちゃん久しぶり~」
聞こえてきたのは特徴的な間延びした声。聞き覚えがある。たしか結城 ひなって名前だった気がする。
正直下の名前はうろ覚えだ。や、だってほら! 下の名前とか覚えてるとキモがられるからさ!
「ひな先輩。久しぶりです」
扶桑花が立ち上がって結城先輩と力強く握手を交わす。え、そんな仲良かったの?
「ひな先輩が部長になったんですね」
「ほんと大変だよぉ~。麗良ちゃんも大変そうだね~」
いえいえ、頬をかきながらそう言う扶桑花。なんだろう……この仲間はずれ感……。
○
意見交換会という名の交流会はすぐに過ぎ去っていった。
具体的に何をしたかと言えば、去年の学校間での問題点や、ここ最近うんちのラクガキが増えている件についてだ。
違いますぅ~! うんちじゃなくてうんこのラクガキですぅ~! ウンチでもウンコでも無くうんこのラクガキですぅ~! そこ間違えちゃダメだからな(真顔)
「これにて、高岡高校と北浜高校の意見交換会を終わりにします」
はいっと部員たちが声を出して、意見交換会が終わりを告げた。まじこれぼっち部じゃなくて生徒会のやる仕事だろ……。
とか思っていると皐月が部屋を出て行くのが見えて俺は彼女を追った。
「皐月っ」
紺色の髪はフワッと揺れて、振り向く。わかってはいたが、やっぱり。そう思った。
「久しぶり」
「久しぶりじゃねぇよ。急に連絡途絶えて」
少しだけ目を見開いく皐月。そしてそれに気付かれるのを恐れるように俺に背を向けた。
俺は彼女の真横に並んだ。
「ワタシにまだ気があんの?」
「……ねーよ。流石にな」
少しの沈黙。昔はこんな沈黙を心地良く思えていたのかと考えるとゾッとする。たった数年で関係性があまりにも変わってしまった。
「……ちょっとさ、ワタシに付き合ってくれない?」
沈黙を破って飛び出た彼女の声はそんな言葉だった。
○
皐月に付き合ってやってきたのは、とあるファミレスだった。
互いにドリンクを注文して、それをチビチビと飲みながら話をする。ちなみに飲み物は、俺がメロンソーダ、皐月はブラックのコーヒーだ。
「じゃあなに? ワタシがいなくなってから一ヶ月くらい引きずってたの?」
クールな皐月が珍しく、笑い混じりに話をしていた。付き合っていたときもたまに笑い混じりに話すことはあったが、かなり珍しい。
やはり、彼女もこの数年で変わったのかと思えば、当然のことなのに一抹の寂しさを感じた。
「いや、まぁ……」
「そんなにワタシのこと好きだった?」
笑みが消えて、いつもの皐月に戻ったかと思えば、彼女はそんなことを俺に問いかける。
そりゃ俺は皐月が好きだった。というより愛していた。少なくともあの当時は。
でも今思えば、その気持ちも欺瞞のように思えてくる。単純に自分に優しく接してくれるから、だから好きになったのでは無いかと。
だから結局、皐月でなくとも良かったんだ。あの当時の俺は結構心が病んでて、誰かに優しくされたらすぐに惚れていたんじゃ無いかと思う。
「最初で最後の彼女だし……」
とりあえずは、そういうことにしておこう。
「ふーん」
「なんだよ」
目をじっと見て、彼女が言うから俺はあからさまに嫌な顔をして見せる。
「いや、変わったなって」
ドクンと、心臓が跳ねたような気がして、俺は手をグッと握りしめた。
「別に、そんな変わってねぇだろ」
「変わったよ。前はもっと……ほら、元気だったでしょ」
元気、という言葉は皐月なりの優しさだろうか。もしも、俺のことを嫌っているなら、もっと俺がダメージを受けるワードを選択できたはずだ。
妙なところで気を遣う癖は相変わらずであるが、今その癖がありがたかった。
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