第45話 例えるなら白黒映画に一色だけ色を加えたような
こんにちは魂夢です。最近結構忙しくて参っちゃいますww
俺と元カノの伊藤 皐月との出会いは、うろ覚えではあるが、中学二年のとき、席が隣になったからだったと思う。
何か物を貸したのか、それとも自然と会話が生まれたのか。明確なきっかけは覚えていない。
でも、少しずつ俺と皐月は仲を深めていった。時にはテストの点数で勝負したり、夏祭りに行ったり…………デートしたり。
そうやって徐々に仲良くなって、俺から告白して、そこから交際が始まった。
皐月との毎日は楽しかった。彼女は他と比べずともどこからどう見ようと美人だったし、性格はクールでかっこよかった。
今思えば、俺はそこに惹かれたのかも知れない。あの恋を、俺が憧れと好意を勘違いしただけとは信じたくないが、でもきっと最初は憧れからだ。
話が逸れたが、俺と皐月が付き合ってからの変化としては特に無かった。それなのに、俺には目に見えるもの何もかもが違うように思えた。
例えるなら、白黒の映画に一色だけ色を加えたみたいな。そんな、変化。小さな変化ではあるが、その変化は映画をまったく別の物へ変える。
だが、どんなに長い映画でも、どんなに続編が作られようとも、映画は必ず終わりを告げるのだ。エンドゲームのように。
とある人はこう言った。永遠に変わらないものなどない。あるのは永遠は存在しないという心理だけ、と。
まぁ、当時の俺は随分と青臭かったから、たぶん永遠の愛だとか真実の愛だとか、そういうものを信じていて、しかも皐月との恋愛は永遠だと思っていた。
だが現実は優しくない。さらに言えば、現実での恋愛なんてもっと優しくない。
現実の恋愛では、これと言った原因が無くとも別れというものは突然訪れる。
とある日、皐月が転校すると当時の担任の口から告げられた。みんながそれぞれ皐月との別れを惜しむ中で、俺だけは特に何も思っていなかった。
彼女の連絡先は持っているし、地方の遠いところに行くとも聞いていない。
それに、なんてったって俺と皐月は付き合っているのだ。ならば、きっと離れても多少無理して会ったり、電話位はできる。
遠距離恋愛でも、必ず俺と皐月ならやっていけると、どこから湧き出たかもわからない自信があった。
そんなことを考えている間に、皐月はどこかの中学に転校。
だが俺は特に気にせず、次の日にいつものように皐月にLINEを送信。
送ってから一日が経過し、二日が経過し、一週間が過ぎる。そこでようやく俺は何かがおかしいことに気付いた。
今までも、彼女はLINEを見てなくて何日か未読が続くことはあったが、流石に一週間も未読は不思議だ。
グーグルで調べて、さらにそれを実践してみて、俺は知ってしまった。
彼女は、俺のことをブロックしている。正直に言えば知りたくなかった、そう思ってしまうほどに俺は落ち込んだ。
あんなに愛していた彼女が、あんなに何度も好きと呼び合った彼女が、俺をブロックしているという事実が俺を苦しめた。
その後一ヶ月くらいずっと落ち込んで、俺は何とか立ち直り始める。
きっと俺は彼女は不釣り合いだとか、体目的だったとか、そんなことを考えて、相手を悪者にして、ようやく。ようやく俺は立ち直ることができた。
○
自然消滅で別れた元カノが目の前で、高岡高校のぼっち部という場所で、環境で、再び出会った。
俺のちょうど目の前の椅子に座った皐月が、スッと顔を上げて、俺と目が合う。そして少しだけ目を見開いた。
驚いたり、怖い物を見たりしたとき。感情が揺さぶられたときに彼女が良く見せる仕草だ。
「どうしたの?」
恋綺檄がトントンと俺の肩を叩く。ハッとして、彼女を見れば、そこには碧眼がある。
「……なんでもない」
そんな噓を、俺は恋綺檄に吐いた。