第42話 ウワァン!ミカッチィ!
こんにちは魂夢です。たぶん初めて小説っぽいタイトルじゃない気がしますww
演奏会が終了し、俺もぼっち部に復帰して数週間。時期としては既に十一月に入っていた。
一応時系列を整理すると、夏休みが終わって、大倉のイジメが夏休み直後の九月上旬。演奏会云々が入ってきたのが九月下旬で演奏会があったのが十月上旬。そして今が十一月の頭。
もう完全に俺たちの関係性は元通りになっていた。あの日から何故か大倉の俺へのイジメも無くなって、しかも田中もイジメられてないらしい。
そして俺のぼっち部退部問題も解決。以前の関係性、いや以前より深まってすらいる。
俺はそれがきっと良いことだと、思うことにした。
「すごい! 麗良ちゃん音ゲーもできるんだね」
恋綺檄が扶桑花に言うと、彼女は得意げに鼻を鳴らす。あ、とか言ってたら今バッド出たぞ。
「そういえばさ、先生が部活動するって言ってたよ」
「またかよ……。もういいよずっとここでゲームしようよ……」
俺ががっくりとうなだれていると、恋綺檄が苦笑した。
「なんか高岡高校のぼっち部と一緒に意見交換会? みたいな」
え!? ぼっち部って別の学校にも普通に存在してんの!? てゆーかこんな部活そんな色んな学校に必要じゃねぇだろ。
てかなんだよ意見交換会って。それ本当に必要なの? てか今の日本は前回そうだったらからって言ってルール変えたりとか下手くそだから意見交換会とか意味ないと思うんだが。
と思っていると、一曲終えたらしい扶桑花が話に加わる。
「去年も行ったな。今年は今週末らしいが」
言い終えるなり扶桑花はカルピスを口にする。なんか美人の女の子が白い液体飲んでるって考えるとこう……。スイマセンデシタ。
バタン、扉が勢いよく開かれて、中から金髪でポニーテールの女子が現れる。
かと思えばその女子はバタバタと騒がしくこっちまで走ってきて恋綺檄に抱き付いた。
「ウワァァァァァァン! ミカッチィィィィィ!」
俺と扶桑花はあまりに突然の状況に唖然とした。……訂正、抱きつかれてる恋綺檄本人も死んだような目をしている。
○
とりあえず、俺たちは奇声を上げる金髪ちゃん、もとい金城 梓の話を聞いてみれば要約するとこうだ。
今日、金城は恋綺檄に相談を聴いてもらう予定だったのに恋綺檄はそれをすっぽかしたから奇声を上げている……らしい。
「それで、相談って?」
恋綺檄が訊くと、金城はニヤリと小悪魔的な笑みを覗かせる。いや小悪魔的というよりは死神的というべきだろうか。
「それは……、恋のお♡は♡な♡し」
なんだこいつうぜぇ……。というのが俺と扶桑花の金城への第一印象になった瞬間だった。
正直言ってウザキャラなんて二次元の世界だけで十分なのだ。現実においてウザキャラというのは遠くから見てるぶんには良いかもしれないが近くにいれば普通にウザい。
「なるほど、恋のお話って?」
「実はアタシさ……」
笑みは崩していないが、幾らかぎごちなくなって、そっと目をスライドさせ逸らす。
「津々慈のこと、好きなんよね」
へへへっと江戸っ子のような笑いをして誤魔化そうとするものの、全然誤魔化せてはいない。
それにしても……津々慈ねぇ。イケメン優しい頭良いときたらそりゃモテるでしょうよ……。う、羨ましくなんてないんだからね!!
「いや、最初は優しーなくらいにしか思ってなかったんだけどさ。意識したらこう、アクセル踏み込んだっていうか、一気に好きになっちゃって」
頬を朱に染めながらそんなことをいう金城はまさしく乙女と呼ぶべき生命体だ。まさか乙女が実在していたなんて……!!
と、俺はなんでも無いことを考えていた。