第41話 あともう少しだけ
こんにちは魂夢です。投稿の間隔は火、木、土、日にしようと思います。
俺はあの後、先生からは退部扱いにされていないことを話して、時間も時間だからと言って帰路についた。
「急に退部って言い出すからびっくりしてたんだぞ。なにか悪いことしたかってずっと考えていたんだ」
言って、扶桑花はプクッと頬を膨らませた。それを見て俺は苦笑いを浮かべる。
「いやまじすまん……。俺も俺で自分が気持ち悪かったんだよ……」
扶桑花は膨らました頬から空気をフッと吐き出して、笑みを浮かべた。
「まぁいいさ、戻ってきてくれるならな」
そう口にして、彼女はどこか遠い目をした。まるで過去を悲しむような、そんな目でもあったような気がする。
何か声をかけなければと思って、中途半端に口を開くも何を言えば良いかわからずにいると、彼女の方から声を発した。
「私はこっちだから」
扶桑花はアゴで自らの帰路を指して俺に伝える。そして俺はそれに頷きで返した。
「わかった、じゃあな」
「ああ、さようなら」
俺たちはその言葉を最後にして、それぞれの道を進んだ。俺は駅へ、扶桑花は寮へと。
改札を抜けてホームに出れば、既に乗る電車は来ていて俺は駆け込み乗車ギリギリの駆け込み乗車をした。いや駆け込み乗車なのかよ。
俺は口から息が漏れて、軽く笑った。よかった、軽口を叩けるくらいには色々と回復しているようだ。
だが、あともう少しだけやることがある。まだシリアスモードを解除するには早すぎだろう。
電車が目的の駅に到着するまでの駅を俺は一駅一駅数えつつ、スマホや本を見ることもせずにソワソワとしていた。
そして数分後、俺の最寄りと学校の最寄りとの間ぐらいに位置するその駅に着いてしまった。やばい、緊張する。
電車を降りて、改札を抜けて、左右を確認してみる。あれ、どっちに行ったら良いんだっけ。前に来たときからもう既に三、四ヶ月は経っているからあんまり道を覚えていない。
しかし、なんだかんだで適当に歩みを進めていたら来た覚えがある道に出てなんとか目的地に着いた。
たぶん経験あると思うけど、行った覚えがある方ある方へ進んでいくと目的地に到着するやつだ。
とあるアパート。そこが俺の行かなければいけない、いや、行くべき場所だった。
一室まで来て、俺はインターホンを押す。すると中からかわいらしい声で返事が聞こえて、ドアが開く。
中から出てきた女性は俺と目を合わせるなり水晶玉のような碧眼を点にした。
「松葉……君」
俺は不思議とうろたえることなく頷く。
「謝ろうと思ってきたんだ」
「……うん」
俺が言うと、彼女は返事と共に柔らかな笑顔を作った。
「その、本当にすまん」
「いいよ、理由知ってるし。罪滅ぼしでしょ?」
恋綺檄はなんでも無いことのようにそう言うが、俺は呆気に取られてポカーンとしてしまう。
「だって私、神様だもん」
俺が理由を問えば、彼女はそう呟くように口にした。神様だから、そう言われてしまえばどんなことだって納得してしまいそうだ。
「お前本当に神様なのか? 神様パワーとか使ってるのみたことないぞ」
「そりゃそうだよ、だって私落とされる時に力失ったし」
恋綺檄が口を尖らせる。だがそれを尻目に、俺は一つの疑問と対峙していた。
彼女が力を失っているならば、何故俺の罪について知っていたのか。俺の心の中での罪を何故彼女が知っているのか。
「ならなんで罪について知ってるんだ」
「それは……」
言葉が途切れる。詰まっているのは表現を探しているのか、言うべきか悩んでいるのか、それとも……、噓を考えているか。
「それなりに一緒にいるから、なんとなくわかっちゃうんだよ」
少し目を細める恋綺檄。なんとなくにしては俺の思考読めすぎな気もするが。
でも、本来許してもらう側の俺がそこを問い詰めるのは違うのだろうと、俺は疑問を飲み込んだ。
「そうか。とりあえず、本当に悪かった」
「今度お詫びとして何かしてもらおうかな?」
ニヤニヤとゲスっぽい笑顔でそう言う恋綺檄に俺は苦笑で返す。
お詫びでも償いでもなんでもやるよ。おれはそう付け加えた。
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