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努力嫌いな俺のラブコメ~美少女のいる部に入ったのにシリアスな展開ばっかり!?~  作者: 魂夢
第五章 その場に置いてきた違和感がぼっち部を刺す
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第34話 疑問と悲しみとそして絶望

こんにちは魂夢です。ストックが三個くらい削れてます……。厳しぃ!

 ボーッと授業を右から左に聞き流しながら昨日のうんこのラクガキについて特に理由無く考える。

 あのうんこを書いた人間は、一体なぜうんこを書いたのだろうか。なぜウンコやウンチではなく平仮名でうんこであったのか、そこにどんな思いを込めたのか。


 グルグルと暇つぶしとして、無駄な考えを頭の中で組み上げる。俺は暇なとき、たまにこうして変な考えを作のだが、これ実は結構楽しいので、みんなもぜひ一度やってみて欲しい。


 そうこうしていると、六限目の終わりを知らせるチャイムが流れた。起立というかけ声で一斉に立ち上がるクラスメイトたち、そして先生に一礼してグーッと伸びをした。腰が痛い。


 鞄にプリントやらなんやらを適当に詰め込んで、帰りのホームルームを済ませる。


 用を足しにトイレに行った後、鞄を持って教室を出た。向かう先はぼっち部室、俺の居場所だ。


 そうしてえっちらおっちら歩いていると、背後から慌ただしい足音が聞こえてくる。なんかもう、足音だけで誰が来たのか大体予想できるわ……。


「松葉ー! 今日部活無いって」

「へ?」


 俺が恋綺檄の方へ振り返ったと同時に、彼女は俺から二メートルほど離れた位置からそう言ってくる。思わず素っ頓狂な声が出てしまったじゃないか。


「なんか今日は演奏会の方に行くから部活無いんだって」


 少し離れた所から彼女がそう言う。うん、ソーシャルディスタンスを守ってるね偉い偉い。

 恋綺檄がそう言うと恋綺檄よりさらに後ろから「美嘉(みか)ちゃんまだー?」と声がすると、恋綺檄は後ろを向いて「今行くー」と返した。


「それじゃ」

「ああ」


 片手をすっとあげて彼女が別れの言葉を口にするのに合わせるように、俺も手をすっとあげた。


 友達の方に小走りで向かう恋綺檄の背を見届けて、俺は再び歩みを進めた。部活動は無いらしいが、俺は部室に本を置きっぱなしにしている。それを回収したい。

 今日の部活中に読み切ってしまおうと思っていたのだが、今日部活は無いらしいので家でゆっくり読むことにしよう。


 部活棟に近づくにつれて、練習中であろうトランペットの音が大きくなってきている。その音色はたまに音を外したり、強く吹きすぎたりして何度もやり直しているが、なぜか耳に心地良かった。


 部活棟に入って部室に通ずる階段までの道を歩いていると、部屋のドアが空いて、中の光が漏れ出している部室を見つける。おそらくあの中で練習をしているんだろう。


 そこを通るときに、俺はチラリと部屋の中を見る。


 そして────俺は動けなくなった。


 息が止まって、息ができない。さっきまでなんともなかったはずなのに、心臓がやけにうるさい。頭が痛い、口の中が乾く。視界がぼやけて、頭の中が真っ白になる。


 頭に浮かぶのは疑問と、悲しみと、そして──絶望。


 きっと……きっと大丈夫だと思っていた。あいつだけは俺と同じなんだって。そう信じていた。


 ……でも、それは違ったのか……?


 練習中の人物は俺と目が合うと、トランペットからそっと口を離した。


 そしてその人物は俺の名前を紡ぐ。俺は何も返せなかった。


 ただその場に突っ立ったまま、その人物を見ていた。綺麗な瞳を。吸い込まれるような、美しい瞳。俺と同じ考えを持つとそう言っていたときとまったく同じ目で。


 何か言葉を発していればよかったかもしれない。いつものように、なんともなかったように。笑って、自分を押し殺して、感情を抑え込んで。そうやって、下手くそな笑みを浮かべていればよかったし、それができていればどれだけ楽だったことか。


 胸の奥から何かが込み上げてくる。それは悲しみか? それとも怒りか? 正確なところはわからない。ただ胸が苦しいと、その感覚だけが残る。


 ようやく、震えていた足が少し動く。けれど、俺の意思で動かしたわけではない。意識外で、一歩後ずさりをしていたのだ。


 そして、気付くと俺はその場から駆け出していた。


 いや、逃げだしていた。

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