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努力嫌いな俺のラブコメ~美少女のいる部に入ったのにシリアスな展開ばっかり!?~  作者: 魂夢
第五章 その場に置いてきた違和感がぼっち部を刺す
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第33話 彼だって昔はそうだった

こんにちは魂夢です。ブクマ評価感想レビューお願いしまっす!!!

 演奏会への出席が決まってからも、毎日の部活で扶桑花がいないことなんてなかった。

 いつだって彼女はそこにいて、いつもの優しい笑みを浮かべながら、相槌を打ち、話を聞き、そして話を変えてまた会話を始める。


 そこにいる扶桑花は普通極まりない。普通すぎて本当に演奏会に出るのか心配になるほどだ。でもきっと彼女は演奏会に出るし、さらに言えば努力をせずに演奏会に出るだろう。


 俺も彼女も、今までの十六年間そうやって過ごしてきたのだ。最低限の努力で物事を切り抜けてきた。

 例をあげるとするなら定期試験、俺も彼女も努力せずにノー勉でやり過ごしている。


 そしてこれからもずっとこのやり方で生きていくのだ。



 うんこ。これについての説明は不要だろう。小さな子供から大きなお友達まで老若男女問わず愛されし排泄物だ。

 きっと小学生低学年の爆笑ワードはうんこかちんこかおしっこのどれかだし、なんなら大人になって行きたくもない飲み会において笑いを取る時でも場合によっては大活躍してくれる事だろう。


 さて、ここまでうんこについて熱弁したわけだが、それはなぜか。これについては今からおよそ十分前までに遡る必要がある。


 学校の塀にでっかくうんことひらがなでラクガキされているのを発見し、それを見ていると突然ハゲの先生に「お前がやったんだろ!」と激怒され、掃除させられることになってしまった。


 あの手のオールドタイプの人間は何を言おうと絶対に意見を曲げないし、掃除を頑なに拒めば担任の先生に話がいって大げさになるだろうから、黙って従うことにしたのだ。


 まったくあのクソハゲ教師め。なんでボーっと見ている俺を犯人だと断定するのだろうか。あんな人間がいるからこの世に冤罪は無くならないのだろう。

 そもそもなんの証拠もないのに俺を犯人だと決めつけ、自らを正義と言わんばかりの態度で偽物の正義の剣を振るう。そして、自分は良いことをしたみたいな顔をしやがる。トンボに当たって死ねよ。


 うんこのうの字の部分をゴシゴシ洗っていると、すこし遠くの部活棟から吹奏楽部の音楽が聞こえてくる。しかも何度も同じ音が流れてる、ということは練習でもしているんだろう。愚かな。


 けれど今のうちはまだ努力していても良いかも知れない。努力して努力して踏みにじられ努力の無意味さを理解したなら、まだその努力には意味があったと言えよう。


 みんなそうやって努力の正体を知って大人になっていくのだ。


 妥協に妥協を重ねて、自分の身の丈にあった行動を繰り返すようにみんななるのだ。大人になっても「高みを目指したい」とか言って現実を見ることを恐れるバカどもに言ってやりたい、高みなど元から存在しないと。


 人間が山のどこかしらに立っていたと仮定した時、奴らは努力して頂上を目指そうとする。一見すると理に適っているように思える、だがこれは違う。

 本当は人間は全員平らな板に立っていて、その中で先天的に身長が高いやつは、他の人間より目線が高いだけだ。

 いくら努力しようと自分本来の身長は変えようがないし、何らか方法で背伸びをしても、それは嘘で欺瞞で偽物である。彼らはそんな嘘を努力という免罪符で許されるべきと主張するのだからたちが悪い。


 そんな奴らを俺は絶対に好きにはなれない。でも、そういう奴らは世間からチヤホヤされるだろう。なぜなら努力している人間は、努力していない人間にとって理想像そのものなのだから。

 努力を無意味だと知ってしまった自分に、努力する人間を重ねてしまうのだ。本当は努力をしたいから、努力を否定してしまった自分に背を向け、努力する人間を応援する。

 だから物語の中でも努力をする作品は売れるし、逆に努力しない作品は基本的に売れない。ちなみになろう小説は例外。


 ……俺だって、昔はそうだった。


 何事にも努力を惜しまず、必ず報われるという妄想に浸って努力を繰り返していた。何かしていないと怖かったから、何かで結果を残さなければと、とにかく努力して、動いて、そうやって恐怖から目を逸らそうとした。


 しかし結果は見ての通り。本当の意味で努力を知ってしまって、妹に俺の努力のせいで被害が出た。そしてその日から、俺は努力をやめた。


 ────それでも、俺が読んでる小説の主人公は、いつだって努力している。

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