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努力嫌いな俺のラブコメ~美少女のいる部に入ったのにシリアスな展開ばっかり!?~  作者: 魂夢
第五章 その場に置いてきた違和感がぼっち部を刺す
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第32話 努力を嫌う者同士だからわかること

こんにちは魂夢です。眠いです。それだけです。

 小原先生が言う部活動とは、演奏会のお手伝いさんだった。本来演奏会に出る予定だったトランペット担当の人物が怪我をして出られなくなったから、その代わりとして俺たちの誰か一人が演奏するということらしい。


 なにそれ超やだ。そもそも演奏会とかコンクールとかいうのは努力と見せかけて才能をひけらかすものだ。

 努力のおかげーなんて言うが結局は才能。才能無き者に努力なんぞ無駄。だから、才能無き俺が努力して演奏会に出るのは無駄だし何より普通に嫌だ。


 昔は俺だけがその考えだった、でも今は同じ考えの人間が一人いる。俺と同じ努力嫌いを自称する人間が。


 その人間は、顎に手を当てうーんと唸っていた。そしてヒョイと顔を上げ、尋ねる。


「誰かトランペット経験のある人いる?」


 扶桑花が言うも、誰もうんともすんとも言わない。彼女は顎にそっと手を当てまたもや考え始める。


 俺は昔の光景を不意に思いだす。けれど、それは思いだしたくも無い黒歴史。そう考えて俺は脳の奥底にそれをしまい込んだ。


 と同時に、扶桑花は顔を上げ、小原先生と目を合わせる。


「なら、私がやります」


 俺は少しだけ目を見開いてしまう。思いもしない回答を彼女が出したからだ。彼女がトランペットを触ったことがないとすれば、演奏会に出るなんて不可能だ。


 ……まさか、努力をする気……なのか?


 しかしその直後、俺と同じ努力嫌いな彼女がそんな考えに及ぶはずがないと思い至る。恐らく、何らかの理由や策があるのだ、だから声を出した。きっとそうだ。


 小原先生は扶桑花の発言を聞いて数段目を鋭くさせる。先生が声を出すのを察して、それより少し前に俺は彼女に質問した。


「……トランペット、やったのことあんのか?」


 目を合わせず、恐る恐る、どうかそうであってくれと心なしか思いつつそう尋ねた。冷や汗が止まらない。


「ああ、過去に何度か。私たちに頼むってことはそこまで難しくないだろうし、大丈夫だ」


 言われて俺はホッとして息を吐き出す。よかったと、素直に思った。やはり彼女は練習をしないのだ。

 努力を嫌う者同士、なぜかわかる。練習をせずに楽譜を見るだけ見て演奏会に出る、そんな彼女の姿が容易に想像できた。


「なら、扶桑花。頼んだぞ」


 いつもの陽気なおじさん的な声音では無く、固めの声音で先生は扶桑花に言った。それを聞いて、彼女はハイと頷く。


 自分の本に目を落とした。その本の中では、主人公が絶望し、復讐を誓うシーンだった。ペラリと、俺はページをめくる。



 演奏会があるのは今から二十日後の来月、その約一ヶ月間ぼっち部はとくに休部になったりするわけでもなく普通に毎日部活だ。

 そしてあれから数日経った今、扶桑花を含めた俺たち部員は部室にいる。


「あれ、あたしって何色だっけ?」

「……白だ。さっきから何度も言わせないでくれ」


 扶桑花と恋綺檄は今オセロをやっている。どうでもいいけどオセロとオセアニアって似てるよね。


「はい、私の勝ちだ。まだまだのようだな」

「う~~……。も一回!」


 恋綺檄がビシィッと人差し指を立ててそう言うと、はいはいと言いながら扶桑花はオセロ盤の上を片付け、最初のポジションにセットする。

 それを尻目に俺はスマホで映画のグッズをネット通販で調べていた。やべこれ安いぞポチろうかな。


 吹奏楽部の音楽が聞こえてくる静かな部屋で、パチンパチンという音だけが室内に響く。


「……そういえばさ。麗良ちゃん演奏会の方はどう?」


 しばしの沈黙、恋綺檄の声を聞いて俺も至る所から脂汗が止まらないが、それを悟られないようにスマホを見続ける。

 沈黙を破ったのはオセロのパチンという音だった。


「順調だ、特に難しいことも無いし。段取りも複雑というわけでもなかった」


 言って、彼女は微笑む。なぜ微笑むのか、それは俺にはわからなかった。

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