表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力嫌いな俺のラブコメ~美少女のいる部に入ったのにシリアスな展開ばっかり!?~  作者: 魂夢
第五章 その場に置いてきた違和感がぼっち部を刺す
31/77

第31話 うっすらと彼の耳はメロディを捉える

こんにちは魂夢です。昨日は小説漬けの日だった……。

 テクテクと俺は便所に向かう。もちろん一人だ。てか数人連れ添って無駄に大人数でトイレ来る奴なんなの? 女子だけじゃなくてバスケ部とか運動部も来るときあるじゃん。


 あれか、何するにしてもみんなと一緒じゃなきゃやだってこと? あらやだ連れションとかまじ現代社会の闇ぃ~。


 そんなことを考えながら小便器で用を足していると、ちょうど目の前になんらかのポスターが貼ってあるのが目に入った。吹奏楽部主催! 演奏会! だ、そうだ。


 ズボンのチャックを挟まないように気を遣いながら閉める。ナニを、とは言わない。


 演奏会ねぇ……、来る奴とかいんのかな。そう頭に浮かんだ問いを振り払って、俺は教室に戻る。



 放課後、部室にて。俺は頬杖をつきながらパラパラと本を読んでいた。もう超パラパラしてる、まじパラパラ踊っちゃおうかなってくらい。……は?


「あっちあっち! あっちに敵! いやそっちじゃなくてあっち」

「……し、静かにしてくれないか。それかせめて方角で教えるようにしてくれ」


 扶桑花はコントローラーをガチャガチャやりながら呆れるように言う。今、彼女はAPEXをやっているのだ。

 それを見て横からギャーギャーと恋綺檄が言っている。正直擬音とか指示語ばっかで何言ってるかはさっぱりわからん。


 ゲームからブンブンバンバンゴーオンジャーってな感じで銃声やら爆撃音やらが鳴っている。やだ世代ばれしちゃう!


 でもおかげで、昨日ほど窮屈には感じなかった。彼女がゲームに没頭しているからってのも関係しているかも知れない。


『YOU ARE CHAMPION!』


 野太い男の声でそう告げられると、扶桑花はふぅーと息を吐いてコントローラーを置いた。どうやら勝てたようだ。


 その時、ガラガラと勢い良く部室の扉が開かれる。おいやめろよ、音にびっくりしてビクンってしちゃったじゃねぇか。


 扉を開けたのはもちろんこの方、我が校を代表する問題教師! 小原 和博先生ー!


「よし! 諸君。部活動をするぞ」


 先生は腰に手を当て胸を張り、ドヤって擬音がジョジョ風に見えるくらいドヤ顔をする。

 そのポーズ表情に流石の我々も唖然とした。さっきまで賑やかだった部室に聞こえてくるのは、APEXの音楽と練習中の吹奏楽部のメロディだけだった。



 なんの反応もされずシラーッとした目を向けられたのが流石に恥ずかしかったのか、先生は顔を伏せ気味に手頃な椅子にちょこんと座る。


 扶桑花がため息をついてプレステの電源を落とすと、先生に訊く。


「なんのようです?」

「そのことなんだが……」


 言いながら、先生はポケットの中をゴソゴソとやってから、一枚の紙を取り出した。いつもいつも紙持ってくんなって、口頭でいいって。


 しかし、今まで先生が持ってきた紙を色々見てきたが、それはいつも見たことのないものがほとんどだった。だが今日は……違う。


「君たちに、部活動を持ってきた」


 先生の持ってきた紙は、今日俺が便所で見た吹奏楽部主催の演奏会についてのポスターだった。そして先生は俺たちに目を向ける。


 扶桑花が真面目な雰囲気を察して姿勢を正す。それを隣で見ていた恋綺檄はなぜか胸を張った。いやそれ姿勢正したことになんねぇからな? 胸が強調されてるだけだからな?


「君たちに、演奏会に出てもらう」


 真剣な瞳で、先生は俺たちにピシャリと言い放つ。それを聞いて扶桑花の目に力が入ったのが見えた。


 一瞬、俺の脳内に過去の風景がフラッシュバックする。けれど、過去の俺はもう既に今の俺とは似ても似つかない、そう考えて、俺はその考えを忘れてしまおうとした。


 まだ残暑の厳しい日の部室で、俺の耳は練習中の吹奏楽部のメロディを、うっすらと捉えていた。

ブクマ評価感想レビューお願いしますよぉ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ